性病の二大勢力、【クラミジア】と【淋病】について知っておきましょう。

性病の中でも最近、罹患者が増えている【クラミジア】と【淋病】。症状や治療法、予防法について、たてレディスクリニックの楯信太郎先生にお話を伺いました。

性病は決して他人事ではありません

「性病なんて、私には関係ないわ」と思っている人がほとんどではないでしょうか。でも実際診療にかかわっていると、意外とごく普通の女性や主婦でも感染している方が多く、当院でも週に2人ぐらいはいらっしゃいます。

一番多いのは【クラミジア】、次は【淋病】です。どちらもたった1回のセックスやフェラチオで移る確率が高く、感染率は【クラミジア】が50%、【淋病】が30%位といわれています。

お風呂や公衆トイレなどでは移りませんから、関係のあるパートナーから感染したということになり、3〜5%程度の男女が罹患しているという報告もあります。結婚されている患者さんの場合、奥さんの方に身に覚えがなければ旦那さんが性風俗店に行ったり浮気をしていることがわかって夫婦関係が悪くなったり、パートナー同士で感染の責任を巡って修羅場になることも多く、病気よりもそういう状態になってしまうことの方が恐いですよね。

こんな自覚症状があったら要注意!

【クラミジア】も【淋病】も罹患すると似たような症状が出ます。

女性の場合は、いやな匂いのおりものが増える、生理でもないのに時々出血する、下腹部が痛い、のどが痛いなどですが、感染当初は無症状の場合も少なくありません。しかし放っておくと、発熱、腹痛、腹膜炎などの症状が出て将来の不妊の原因にもなる可能性があります。要するに卵管閉塞が起こり、手術をしたり体外受精をしなければならなくなったりもします。また、妊娠中の感染は流産や早産の原因にもなります。母子感染してしまう可能性もあるため、安定期になってから、妊娠中でも飲める薬で治療します。

男性の場合は、排尿痛があったり、亀頭の先から異常な分泌物が出たりしますが、こちらも無症状のこともあります。

検査は簡単なもので、1週間ほどで結果が出ますから、あやしいと思ったら婦人科で調べてもらってください。性病にはほかに、【梅毒】【尖圭コンジローマ】【性器ヘルペス】【エイズ】があり、子宮頸がんの原因であるHPV(ヒトパピローマウィルス)も性交渉で移ります。なかには大変な性病もありますし、ひとつの病気にかかっているとほかの性病にかかっている場合(重複感染)も多いので、十分注意が必要です。

治療はパートナーと一緒に、が鉄則

【クラミジア】の治療は「アジスロマイシン」という内服薬、【淋病】は抗生剤の「ロセフィン点滴」を、どちらも1回投与すれば治ります。ただ、自分だけ治療しても、感染しているパートナーとまた性交渉を持てば、お互いに性病の移しあいをする「ピンポン感染」が起こりますから、勇気を持って相手と話し、検査治療をしてもらいましょう。

最近はインターネットでも簡単に薬が買えますが、正しい飲み方の説明がなかったり、ちゃんとした薬ではないこともあり、副作用が出る危険性もあります。中途半端な飲み方で耐性菌ができ、普通の薬では効かなくなってしまうケースもあるので、きちんと医療機関に行って治してください。

予防としてはコンドームを使用すること、むやみにフェラチオをしない、このくらいなら大丈夫という安易な考えを持たない、ということです。

楯 先生より まとめ

信じていた彼がほかの女性から病気をもらったり、性風俗でもらったりといった原因での性病感染は非常にショックですが、一方でご自身にとって都合の悪い過去に原因があるかもしれません。病気自体は薬で治りますが、心に負った傷はなかなか治らないことも多いものです。たとえば、5年先や10年先、夫婦関係が悪くなった時に性病のことを蒸し返したり、ずるずると引きずって離婚にいたるケースもあるようです。つまらないことでその後の人間関係を悪くしてしまう…それこそが性病の恐ろしさなのかもしれません。
軽い気持ちで性交渉をもったり、性風俗に行く男性もいますが、コンドームをつければ性病予防だけでなく、望まない妊娠を避けることもできます。パートナーがそれを嫌がる場合には、自己中心的な相手なので性交渉を断る勇気も必要です。
楯 信太郎 先生(たてレディスクリニック・医療法人聖信会 理事長)昭和大学医学部卒業後、刈谷総合病院、名城病院、名古屋大学従属病院助手、守山市民病院産婦人科副部長を経て、1999年に開業。女性特有の月経の悩みに特化した治療をはじめ、更年期前後の治療やメディカルエステなど、女性が内からも外からも元気になる医療を提供する。