日本ではまだなじみがありませんが、海外には若者が気軽に相談できて経済的な負担も少ない「ユースクリニック」が多数あります。スウェーデン留学中にユースクリニックを見学したはなさんに、クリニックの雰囲気や実際に若者がどんなふうに利用しているのかなど、教えてもらいました!
無料で気軽に立ち寄れるまちの保健室
スウェーデンのユースクリニックは、若者限定でさまざまな相談をすることができる公的な場です。各自治体が運営していて、10代前半〜20代半ばを対象に若者の健康や心、性やアルコール、ドラッグなどについて、気軽に相談できます。必要があれば治療や薬の処方もしてもらえますし、そのほか若者への性教育の場としての役割も果たしています。
私がユースクリニックを訪れたのは、スウェーデンのソーシャルワークの現場を訪問して学ぶという授業がきっかけでした。そのほかに教会での慈善活動や、元受刑者の社会復帰支援の現場なども訪ねました。
スウェーデンでは18歳までは医療費が無料で、ユースクリニックも相談はもちろん、ピル、コンドームをもらうのまで、基本的には無料です。自治体によっては年齢制限があったり、年齢によって負担額が変わるところもあったりするようですが、まずこのような無料で利用できる場があることに驚きました。
希望すれば親にも知らせない。守秘義務も万全なよりどころ!
施設内はとてもカラフルで明るく、病院というよりは学校や地区のコミュニティセンターといった感じの雰囲気でした。私たちが訪れたユースクリニックは、駅からは少し離れたビルのワンフロアにあります。ほかのオフィスなども入っているビルの中にクリニックがあるので「ユースクリニックに行った」と他人の目を気にすることなく利用できるんだな、と立地の配慮を感じました。
クリニックは症状がなくても、性に関する質問や相談だけでも利用可能。「コンドームはどうやって使ったらいいの?」といった質問にくる人、ピルをもらいにくるだけの人など、いつでもウェルカムな雰囲気でした。守秘義務もしっかりしています。ユースクリニックにきたことは、本人の確認なしに他言されませんし、中絶に関しても、本人が希望すれば親に知られることなく中絶の薬をもらえます。ただ、スタッフが必要だと判断すれば、親への連絡を提案することもあるようです。そういったこともあって、なかなか人には言えない悩みでも、ここでなら相談しやすいのだと思いました。
性について正しい知識を教える教育機関としての役割も
ユースクリニックでは学校の社会科見学を受け入れていて、子どもたちに、性に関するさまざまなレクチャーを行うという役割も担っています。子どもの時から医師や助産師などの専門家から話を聞けるのは、とても意義があることだと思いました。
ユースクリニックを見学して強く感じたのは、「日本にもあったらいいな」ということです。日本では、性に関することは学校でも詳しくは教えてくれません。精神科や心療内科、産婦人科などの医療機関はありますが、もっと深く知りたい時に、どこへどう相談したらいいのかわかりません。学校の代わりに専門家に教えてもらえる場があればいいなと思います。
最近はそういった海外の動きを受けて、日本でもユースクリニックのような施設が病院に併設されたりと、少しずつ認知度も上がってきているようです。私もスウェーデンでの経験を生かして、この取り組みを応援していきたいと思っています。
ユースクリニックとは?
ユースクリニックとは、10代前半から20代半ばの男女が健康に関する情報を得ることができたり、体や心、性の相談、人間関係の相談などができる施設のことです。発祥の地であるスウェーデンでは260カ所以上あり、ヨーロッパ諸国では若者が気軽に利用しています。
国や施設により多少の違いはありますが、助産師やカウンセラーが常駐し、人間関係や妊娠などの相談に応じるほか、避妊具の提供や性感染症の検査、ピルの処方などを行い、若者特有の悩みをサポートしています。
日本ではまだ性をはじめとするさまざまな悩みを気軽に相談できる場所は少ないのですが、最近は「日本版ユースクリニック」として、体や性に関することの相談室を併設するクリニックも登場してきています。遠方の人のためにオンラインで相談を受けつけているところもあるので、インターネットなどでぜひ情報収集してみてください。