私が伝えたいこと(現場での性教育)

2023年3月1日に秋山レディースクリニックの助産師であり、日々、性教育の活動をされている澤部由紀子さんが埼玉県内の中学校でお話をされた内容をご紹介します。

秋山レディースクリニック 澤部由紀子さん(助産師)
秋山レディースクリニック看護師長・体外受精コーディネーター、FourLove「生と性 Human Learning」主宰。助産師としても20 年以上の経験をもち、豊富な知識と医療現場で得た実例をもとに個々の相談になったり、性教育の活動を実施。

性教育の話をするようになったきっかけ

私が性教育をした方がいいと考えたのは、16歳の女子高生のお産をサポートしたのがきっかけです。

彼女は生まれる直前まで家族にも友達にも妊娠のことを相談できずにいました。そして無事に出産。でも、出産直後、彼女の母親は病室に入るなり「相手は誰なの?」「いったい何を考えているの?」と、女の子をなじったのです。

それを見て私は「残念だな」と感じました。せめてお母さんには、「辛かったね」「ひとりでよくがんばったね」と、女の子に声をかけてあげてほしかったんです。

親だったらパニックになるのも仕方がないとは思いますが、でも家族間でもっと普通に「性」の話ができる環境だったら違ったかも思い、そこから「性教育」に取り組むようになりました。

命のもととなる部分はとても大切な部位

赤ちゃんを産むために、女の子の卵子と男の子の精子が必要になります。
命の元となるところはとても大事なので、人にはみせないことが大切です。

男の子はおちんちんの玉の中に命の元がはいっているので、おちんちんは人にはみせません。女の子は赤ちゃんが生まれたら。おっぱいを飲ませてそだてていきますよね。おっぱいも赤ちゃん=命を育むもとになるので、人には見せないことが大切です。そして子宮や卵巣のあるおなかの付近も大切にしましょう。

性交渉は命を育む可能性のある大切な、そして責任ある行為

精子と卵子は性交渉、セックスすることで出会い、合体します。それを受精といいます。受精した卵は、その後子宮へ移動して落ち着きます。これで「妊娠」となります。

普段、セックスという言葉をふざけてこの言葉を使っている人もいるかもしれません。この言葉はふざけて使う言葉ではなく、命を産み出すことができるとても素敵な言葉なんです。ただ、その言葉には大きな責任を伴うことを忘れないでください。

性交渉をする前に考えてほしいこと

口に出すかは個人差がありますが、多くの親は我が子に対して「あなたがいるだけでいい」という気持ちを持っています。これは見返りを求めない無償の愛です。

将来パートナーができて性交渉をしたいなと思ったら、子どもができた場合、無償の愛が注げるかを考えてみてほしいのです。あなたが妊娠した場合、みんなが喜んでくれるか、悲しむ人がいないかを考えてそのうえでその人と性交渉するかしないかをじっくり考えてください。

赤ちゃんの元となる卵子は時間とともに老化し、妊娠しづらくなる

女性は、命を産み出す、赤ちゃんを育てることができます。だからこそ妊娠、出産に備えて自分の体を大切にしてください。もし生理で悩んでいることがあったら大人に相談を。人生の中で「子ども産みたいな」と考えているなら、体、そして赤ちゃんのもととなる卵子が老化する前に妊娠しましょう。

なぜなら卵子は、その都度新しく生まれる精子と異なり、女性が母親の胎内にいるときに一度作られるだけ。その後、新たに作られることはないので、年齢を経るにしたがって老化していきます。

生理がある間は妊娠できると思っている人が結構いますが、40歳以上の場合、排卵日に毎日性交渉しても妊娠できる確率は5%未満です。そのことはぜひ覚えておいてくださいね。

多様化していく性。誰でも生きやすい社会に

今は「性」も多様化しています。

LGBTという言葉を聞いたことがあると思います。L…レズビアン(女性同性愛者)、G…ゲイ(男性同性愛者)、B…バイセクシャル(両性愛者)、T…トランスジェンダー(心と見た目の性別が一致しないこと)を指します。これに今はQ…クエスチョニング(自分の性が、LGBTの枠に属さないこと)が加わり、LGBTQと言われています。

こういった方々は10人に1人ぐらい。自覚した年齢を聞いてみると、小学校入学前の方が60%、90%の方が中学入学前には自覚。そして自殺を考えた方は約60%、不登校は約30%、精神的合併症を抱えた人は17%という深刻なデータもあります。

男らしさや女らしさではなく、自分らしさが大切なのです。これからはLGBTQの方たちを含めみんなが普通に暮らせる社会を作ることが課題だと考えています。

Pride parade. A group of people participating in a Pride parade. LGBT community. LGBTQ. Doodle vector illustration

いつやってくるかわからない「死」

次は死に関してお話します。

当時10歳の女の子のお話です。中学1年だったお姉さんと2人で留守番中、アーモンドが気管に詰まってしまい、脳死状態に。その2カ月半後、女の子は天国へ旅立って行ったそうです。
お姉さんは当初、妹の死を受け入れることができませんでした。

でも少し経った後、妹への手紙のような形で詩を書きました。そこには突然いなくなった悲しみや戸惑い、そして後悔など。でもそれらを経て今、妹に伝えたい気持ちが綴られています。

この姉妹の話のように、「死」はいつ起こるかわかりません。毎日生活をしていると友だちや家族にムカッときてひどい態度をとることがあるでしょう。でもその直後に相手が死んでしまったら、ずっと後悔します。だから悪いなと感じたらすぐに謝るようにしてくださいね。

そして「死ね」「殺す」「キモイ」「うざい」「消えろ」という言葉は絶対使わないでください。言われた方はずっと心に残ります。もし心当たりがあるなら「あのときはごめんね」と伝えてください。

なかなか「死」について考えることがないと思いますが、日々意識して過ごすことで、すてきな最期を迎えることができるかなと思います。

恋人やパートナーとの関係に悩んだら周りに相談を!

もしお付き合いしている人がいたとします。

◆他の異性と話をしていたら怒り出しLINEの友だちの電話番号を全部削除されてしまった。

◆彼が急に抱きしめてきて「好きだからいいだろう」と、キスしようとしてきた。

◆気に入らないことがあると彼が物にあたる。「別れたい」と告げたら「別れるなら死ぬ」と言われた

こういうことは全部いけないことです。これらはすべてデートDVといいます。
10代の女性の44%、男性27%が経験者です。性行為の強要など深刻なケースも5%ほどあります。
素敵な恋愛をするためには、互いに尊重し合い、信頼することが大切です。「楽しい」「励ましてくれる存在」そんな相手なら実現できるでしょう。

もし恋愛中なのに「つらい」「怖い」と、悩んだら友達や周りの大人に相談しましょう。周りに相談できる人がいない、周りの人には相談しづらい場合は第三者が相談にのってくれる専門機関があります。「♯つながるBOOK」というサイトに相談窓口が載っているので、現時点では困っていなくても「こういうところがあるんだ」と覚えておくといいといいでしょう。

最近では、彼から「君のこと好きだから裸の画像を送って~」と言われ、自撮りして送信。しばらくして彼との仲がうまくいかなくなって別れ話を切り出すと「別れるなら裸の画像を拡散するぞ」など、写真に関するトラブルが増えています。そういったトラブルに巻き込まれないよう、裸をはじめとした写真、動画の取り扱いには充分に注意をしてください。

◆◆ #つながるBOOK:https://www.jfpa.or.jp/tsunagarubook/  ◆◆