PMDD(月経前不快気分障害)の症状と改善法

日常生活で感じるちょっとした症状から、婦人科系の病気の可能性を探る<これって婦人病のサイン!?>のコーナー。生理前になぜかひどく気分が落ちこんだり、イライラすることはありませんか? 心当たりのある人は、PMDDの可能性があります。今回は池ノ上産婦人科の千代倉由子先生にPMDDの症状と改善法についてお聞きしました。

生理のある人の8割が大なり小なり抱えているPMDD

一般的に、月経前の二週間ほどからだが重い、下腹部痛や頭痛、胸のハリなど身体に不快な症状が現われる場合をPMS(月経前症候群)と言います。

それとは別に・情緒が不安定になる・イライラする・集中力が低下する

といった精神面での不快症状が重い場合をPMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder )、すなわち月経前不快気分障害と言います。

 PMDDを抱える人は30代から40代が多く、また、月経のある女性の約80%が大なり小なりこの症状を持っています。その中で重症化するのが全体の3~7%、治療を必要とするのが約10%くらいです。

PMDDがひどくなると、うつ傾向が強くなり、身近な人への暴言暴行、さらに場合によっては就業不能な状態に陥ることもあります。

ただ、ここで気をつけなければならないのがうつ病、統合失調症、アルコール依存といった精神疾患とのふるい分けです。

精神疾患との違いを見極めるには基礎体温の測定が重要

私どもの病院の場合、PMDDかどうかを判断するため、まず基礎体温を測っていただきます。基礎体温のいつの時期から状態が悪化したりするのか、どういう症状が出るのかを調べます。

ちなみにPMDDはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンのバランス異常で起こると言われています。排卵以降に分泌されるのがプロゲステロン。基礎体温をつけることで、このプロゲステロンの周期的変化を知ることができるわけです。

PMDDであれば、生理が始まると同時に精神的な不調がさーっとなくなります。それが精神疾患との見極めの重要なポイントです。

自分でできるPMDDセルフチェック

過去一年間の月経周期のほとんどで、
●下記症状の5つ以上が生理二週間前の時期に存在する
●1-4の少なくとも1つは存在する
かつ生理が始まれば、それらは2,3日以内に消失し始め、月経中の一週間ほどはこの症状は存在しなくなるのであれば、PMDDの可能性が高いと言えます。
ぜひチェックしてみてください。

1 著しい抑うつ気分、絶望感、自己卑下の観念
2 著しい不安、緊張、「緊張が高まっている」とか「いらだっている」という感情。
3 著しい情緒不安定(例:悲しくなるまたは涙もろくなる感じ。または拒絶に対する敏感さの増大)
4 持続的で著しい怒り、易怒性、または対人関係の摩擦の増加
5 日常の活動に対する興味の減退(例:仕事、学校、友人、趣味)
6 集中困難の自覚
7 倦怠感、易疲労性、または気力の著しい欠如
8 食欲の著名な変化、過食、または特定の食べ物の渇望
9 過眠または不眠
10 圧倒される、または制御不能という自覚
11 他の身体症状、例えば、乳房の圧痛または腫瘍、頭痛、関節痛または筋肉痛、「膨らんでいる」感覚、体重増加

※日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン-月経前不快気分障害(PMDD)研究用基準案」より

PMDDは漢方薬や低用量ピルの活用で改善できる

私どもの病院ではPMDDと診断した場合、漢方薬による治療から始めます。
私どもでは下記の漢方をよく処方しています。
加味逍遥散(カミショウヨウサン):主に若い方でやせ気味の方に処方
抑肝散(ヨクカクサン):40代以降で更年期障害の可能性もある方、激情型の方に処方

治療の第2段階としてはホルモン剤、すなわち低用量ピルを使用します。ピルを使うとエストロゲンとプロゲステロンといった女性ホルモンの状態が均一化され、精神的な抑揚の変化が起きづらいといった効果が期待でき、PMDDが起こりづらくなります。

 それでも効かなければ、精神安定剤を使います。あるいは漢方薬、ピル、精神安定剤を組み合わせての処方という方法にすることもあります。

ストレス発散&食事療法で日常的な改善努力もしましょう

PMDDの場合、より心理的な安定感を強く得るためにはなるべくストレスを回避したり、気分転換をすることが重要です。また、糖分、塩分を控えるなどして栄養のバランスを考えた食事をとりましょう。

また、体を冷やさないよう適度に運動を行うこと。また、極端に締め付けのきついガードルや、足元が冷えやすいミニスカートは避けましょう。

千代倉先生より まとめ

少しでも「PMDDかも」と感じる部分があったら迷わず婦人科へ。自分でできる改善方法としてお勧めしたいのは、ストレスを発散すること、食事を注意していただくことの2点です。

 

千代倉由子先生(池ノ上産婦人科)東邦大学医学部大学院卒業。東邦医大医学部産婦人科勤務、東邦医大周産期センター研修、青梅市立病院産婦人科勤務、日赤医療センター麻酔科研修を経て、現在は池ノ上産婦人科で診療中。話しづらい不妊、避妊、性病、緊急避妊、子宮がん、乳がん、妊娠人工中絶についても気兼ねなく相談できる。最近ではファッション雑誌やマタニティ雑誌などで専門医師として紹介されている。