「遺伝カウンセリング」誰が受ける? 何がわかる?

遺伝カウンセリングとは何かの基本から、来院のタイミングや検査の手順まで、「遺伝カウンセリング」を専門に行うFMC東京クリニック・中村靖院長に詳しくうかがいました。

「遺伝カウンセリング」とはどういうもの?

最近「遺伝カウンセリング」という言葉を耳にされる方も多いと思います。

しかし、今のところ「遺伝カウンセリング」=NIPT(新型出生前診断)と結びつけて考えている方が多いように感じていますが、実際そうではありません。

たとえば、家族が遺伝病と診断されている、家系内に遺伝するのかしないのかわからない病気や、いまだ診断のつかない難病を抱えた人がいるなど、遺伝に関する心配を抱えた方が来談される場合です。米国遺伝カウンセラー学会の定義では、「疾患に対する遺伝学的な関与について、当事者がその医学的、心理的、および家族への影響を理解し、それに適応していくことを支援するプロセスである」とされています。

日本で「遺伝カウンセリング」はまだ発展途上

20世紀に入り、医療技術は大きく進歩し、昔ではわからなかった遺伝に関する情報がわかるようになってきました。

これまで診断のつきにくかった難病、原因不明の先天性疾患、発達障害、多発奇形など、今までバラバラに考えられていた病気が共通のスペクトラムの範疇でまとめることができるようになったり、また、がんの遺伝などについてもわかることが増えてきました。
日本では大きい病院で「遺伝子診療部」というような部があり、そこで情報を得ることができますが、医師からの紹介がない限り、一般の方には存在自体があまり知られていないようです。当クリニックは、この遺伝子診療部門と産科の画像診断部門とが、一体化して独立したような形態のクリニックです。

妊婦の場合、誰が受けられる?

妊娠している方の場合、妊婦健診は通常「遺伝カウンセリング」の対象にはなりません。しかし、胎児の染色体の異常を発見することを目的とした検査に関しては「遺伝カウンセリング」が必要になってきます。

たとえばダウン症候群の多くのものや、18トリソミーなどといった染色体異常は基本的に遺伝とは関係ありません。

しかし、これらを調べるための検査は“遺伝学的検査”に分類され、検査の結果、遺伝と関連したものが見つかる可能性があるために、検査前の「遺伝カウンセリング」が必要になります。

遺伝子疾患の遺伝や再発(同胞再生)を心配される時など、遺伝子レベルの検査が必要になる場合もあります。

どのような検査をするのか

当クリニックには、高齢出産による染色体異常や流産の可能性を心配される方、第一子に疾患があり、第二子が心配……という方が多く来院されます。

家族歴や既往歴の情報をもとに、必要に応じて家系図を可能な限り詳細に、数世代にわたって作成します。その情報に基づいて、また検査の希望に応じて、必要な検査について選択し、超音波検査、血液検査、染色体検査などの検査に進んでいきます。

時々「お説教されるのでは?」「出生前診断なんて良くないことをしているのでは?」と心配しながら来院される方もいますが、まったくそんなことはありません。私たちは情報提供をおこない、十分な理解を得たうえで、検査や治療の選択肢が複数存在する場合、インフォームドチョイス(※)をおこなう過程についてサポートしています。

※医師から説明を受けたうえで、患者自身がどんな治療を受けるか選択すること

FMC東京クリニック中村 靖院長  臨床遺伝専門医 超音波専門医・指導医 産婦人科専門医 禁煙専門医 医学博士日本人類遺伝学会評議員 元順天堂大学助教授(先任准教授)。順天堂大学医学部附属順天堂医院および練馬病院にて診療・研究に従事。産婦人科・小児科・小児外科の三科が一堂に会する “周産期カンファレンス”の中心メンバーとしてこれを発展に導いた。 2009年、国内の胎児診療を発展させるべく米国に留学し、2010年にはベルギーのルーベンカトリック大学産婦人科で臨床・研究に携わる。帰国後、湘南藤沢徳洲会病院に胎児科を開設。 2013年、よりきめ細かい胎児診療を行うべく胎児クリニック東京を開設。2015年に場所を移してFMC東京クリニックとして再スタートを切る。