PMS(月経前症候群)って病気なの?

PMS(月経前症候群)そのものは一般的に知られていますが、どの程度の症状なら治療が必要なのか、またどのような治療がなされるのか、自分でどんなケアが必要なのかはそれほど知られていないのではないでしょうか。白山レディースクリニックの院長・中村久基先生に詳しくお聞きしました。

そもそもPMSとは何か?

生理前になるとなんとなくイライラしたり、気分が落ち込んだりしてしまう、甘いものが無性に食べたくなる、下腹部に痛みを感じるなど、いろいろな不調を感じることがあります。これがPMS(月経前症候群)で表れる症状です。女性特有の病気であり、生理がある女性の約80%が、PMSによる何かしらの症状に悩まされていると言われています。
治療が必要なのは、日常生活や仕事に支障が出てしまうほど症状が重いという人。学校や職場に行くのもつらい場合は、ぜひ婦人科で診察してもらいましょう。

PMSの中でも心の症状が重い場合はPMDD(月経前不快気分障害)

PMSの症状の中でもイライラする、落ち込むといった心の症状が重く、日常生活を送れないほど深刻な場合は、PMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれる疾患になります。

PMSもPMDDもうつ病などの症状と似ているため、抗うつ薬で対応している人もいますが、うつ病とあきらかに違うのは、生理が始まると霧が晴れたかのように不調が一切なくなること。したがって、イライラ、落ち込みなどがうつかどうかの判断は、生理の周期と照らし合わせて行うことが大切です。

PMS(月経前症候群)の診断基準を自己チェック!

<身体的症状>
・乳房痛
・腹部膨満感
・頭痛
・手足のむくみ
<精神的症状>
・抑うつ
・怒りの爆発
・いらだち
・不安
・混乱
・社会からの引きこもり

●過去3カ月間以上連続して、月経前5日間に上記の症状が少なくとも1つ以上存在する
●月経開始後、4日以内に症状が解消し、13日目まで再発しない
●症状が薬物療法やアルコール使用によるものではない
●診療開始後3カ月間にわたり、症状が起きたことが確認できる
●社会的または経済的能力に、明確な障害が認められる
(「米国産婦人科学会」の基準)
婦人科にかかっていない人で、これらの症状がある人は婦人科で診てもらいましょう。

精神的症状が重い人には漢方、身体的症状の重い人には低用量ピルを処方

当院ではPMSの中でも精神的な症状が重い方には漢方を処方しています。加味逍遥散(かみしょうようさん)や抑肝散(よくかんさん)です。これらでイライラや不安症状などはかなり解消されます。

身体的症状が重い方には低用量ピルを処方しています。ピルに対して抵抗感が強い方が多く、他院で処方してもらっていても途中で辞めてしまう方が多いのですが、それはすごくもったいないこと。3カ月続ければかなり解消されるので、できれば続けてほしいところです。

どうしてもピルは嫌だという方にはホルモン治療、もしくは鎮痛剤、利尿剤などによる対症療法で対応しています。

中村先生より まとめ

PMSを解消するには、まず自分の症状を把握することが大切。また、規則正しい生活、睡眠時間の確保、適度な運動などによってかなり改善されます。職場の人間関係など、仕事でのストレスが症状を重くしている場合も多いので、自身の仕事の仕方について振り返ることも大事です。

中村久基 (白山レディースクリニック)信州大学医学部卒業。東京大学産婦人科医局入局。NTT東日本関東病院、長野県立こども病院総合周産期母子医療センター、関東中央病院、帝京大学溝口病院、東京警察病院、鷺沼産婦人科、横浜医療センター、虎の門病院分院を経て2012年、白山レディースクリニック開院。日本産婦人科学会認定専門医、母体保護法指定医、マンモグラフィ読影認定医。趣味はスキー。