出生前検査(診断)とは何かの基本から、来院のタイミングや検査の内容まで、FMC東京クリニック・中村靖院長に詳しくうかがいました。
胎児の時期に検査する「出生前検査(診断)」
年齢が高くなるほど確率が高くなると言われている、染色体異常(トリソミー)。当院で「出生前検査」にいらっしゃる方のほとんどは、高齢出産でこの染色体異常を心配されている方です。そのためか「出生前検査」=染色体異常の検査と結びつけて考える方が多いのですが、ほかにも内臓の疾患や胎児の形の異常などを知ることもできます。一方で「胎児ドック」という言葉も広まりつつありますが、病院によって検査の内容やその精密さにかなりの違いがあるのが実情です。当院ではあえて「胎児ドック」という言葉は使わず、時期や目的によって「精密超音波検査」などさまざまな検査をしています。
欧米では妊娠中に「胎児」を観察する検査がある
日本では、一度産婦人科医にかかると、同じ先生に出産まで健診をしてもらうのが普通です。日本には全国津々浦々、超音波診断装置が普及し、毎回超音波検査をするので、それで赤ちゃんの状態も見てもらっているように感じると思いますが、胎児の観察という点では特に指針に基づいているわけではありません。
一方、欧米では、妊娠11~13週、18~22週の間に、胎児を超音波でくわしく観察する手順が決められていて、ここで胎児の病気を早期に発見できることもあります。
日本では、胎児の観察を行うということ自体が標準化されておらず、きちんとした検査が受けられる施設が少ないことが、今後改善されるべき問題点だと思います。
検査は妊娠11週から可能
日本では、妊娠11〜13週の胎児超音波検査は、ほとんど行われていませんが、この時期の検査には大きな意味があります。当院では、18〜20週にも精密超音波検査を行っていますが、検査時期によってその目的には違いがあります。
多くの方が心配される染色体異常については、NIPT(新型出生前検査)という最新の検査方法がありますが、日本では、年齢が35歳以上、費用も20万前後かかる上に、厳しい基準に基づいた施設認定をうけた医療機関でしか扱えないなど、限られた妊婦さんしか受けられないのが現状です。
「出生前検査」は、染色体異常の発見だけを目的としているわけではありません。胎児の体の異常や病気を発見し、その後の検査や治療の選択、遺伝カウンセリングにつなげます。
ゴールを決定するのはあくまでもご自身
確定検査によって、中絶を選択する方もいるかもしれません。私たちは、どのような選択も尊重しています。妊娠を継続しても、中絶を選んでも、その先サポートできる病院をご紹介していますので、あまり身構えずご相談ください。