「陰部(デリケートゾーン)になんだか違和感がある…」。でも人に相談しにくい部位のため、そのまま放置していたら、いよいよ我慢できない痛みに! 陰部には尿道口や肛門が近くにあって、菌が多いところ。その菌が原因でバルトリン腺が炎症を起こすこともあります。あまり聞かない「バルトリン腺」とその治療について、バルトリン腺治療を積極的に行っているアイレディースクリニック新横浜の入江琢也院長先生にお聞きしました。
バルトリン腺の構造と役割
バルトリン腺は、膣の入口から1~2㎝ななめ奧にあるグリンピース大の分泌腺で、左右に1個ずつ、計2個あります。ここからバルトリン液という粘液が分泌されます。バルトリン液はバルトリン腺開口部という小さな穴から膣の入り口に出て来て、セックスの時、ペニスの挿入をスムーズにさせる潤滑油の役割をします。 バルトリン腺イラスト図 引用:みんなの家庭の医学https://www.asahi.co.jp/hospital/archive/kaisyo/jyosei/gaiinbu/index.html
どんな症状になるの?
バルトリン腺開口部から菌が侵入し、感染して炎症が起きた状態をバルトリン腺炎と言います。原因となるのはブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌などの一般的な菌で、これらの混合感染が多くみられます。炎症を起こしているので、バルトリン腺開口部を中心に赤く腫れ、痛みます。大きく分類すると次のような病状があります。
- ●バルトリン腺嚢胞
- 性交時に出る透明なバルトリン液だけがたまった状態。痛みはほとんどなく違和感のみ。患部がしこりのように硬くなる。ピンポン玉くらいに腫れる人もいる。
- ●バルトリン腺炎
- 患部が赤く腫れて炎症を起こした状態。痛みが出てくる。
- ●バルトリン腺膿瘍
- バルトリン腺炎がさらに進行して、患部に膿(うみ)がたまった状態。痛みが強く、座ることが困難になることもある。
膀胱炎と同じ薬で治療します
「バルトリン腺炎」は膿がたまっていることが少ないため、抗生剤で治ります。膀胱炎の治療にも使われる抗生物質を用います。昔はバルトリン腺炎の原因菌は「淋菌」が多いと言われていましたが、現在の原因菌はブトウ球菌や連鎖球菌や大腸菌などです。つまり治療薬は膀胱炎と同じと考えてください。
抗生剤で治らなかったり、粘液や膿が溜まって違和感があったり、腫れて痛みが強い場合は、それを排出するために穿刺(せんし)術か、レーザーで患部を切開する処置を行います。
- ●バルトリン腺穿刺術
- 粘液や膿が溜まっている患部に注射器を刺して排出させる。膿を出すだけでも痛みが治まります。多くのレディースクリニックで行われている処置です。ただし、針穴はすぐに閉じるため、再発するケースもあり。
- ●バルトリン腺開窓(かいそう)術
- バルトリン腺が大きく腫れた場合、バルトリン腺開口部とは別の穴を作って膿を出す。書いて字の如く、窓(穴)を開ける方法。 しかし、バルトリン腺の腫れが小さく、開窓(穴を開ける)スペースが無い場合はできない。開窓術は、穿刺術や切開術を行っても再発する場合に行う。再発の可能性は低い。
- ●バルトリン腺切開術
- 開窓術ができないが、痛みが酷い場合に行う。穿刺術より膿を確実に取り出せる。バルトリン腺の腫れている部分に、縦に切開(切れ目)を入れるだけ。
- ●バルトリン腺嚢胞摘出手術
- バルトリン腺ごと摘出してしまう。局所麻酔ではなく、全身麻酔が必要になる手術なので入院が必要(病院で行う)。
入江先生より まとめ
バルトリン腺嚢胞やバルトリン腺膿瘍にかかると、一度治ってもまた腫れる場合があります。つまり、再発することを念頭におき、開窓術を行える施設をあらかじめ探しておいた方がいいでしょう。バルトリン腺炎の予防は清潔第一。排泄やセックスの後は、デリケートゾーンをきれいにし、細菌の侵入を防ぎましょう。ただし、洗いすぎは禁物。石けんで洗ったり、こすりすぎると逆にバルトリン腺炎や膣炎を引き起こすことがあります。通気性の良い下着を身につけ、菌の繁殖を防ぐことも大切です。