「月経困難症」とはどういうもの?

 

「月経困難症」で起こるさまざまな症状

「月経困難症」とは、月経直前から開始の時期に、月経にともなって起こる病的な症状のことです。下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労などが代表的なものですが、ほかにも食欲不振、脱力感、イライラ、下痢、憂鬱…など実にさまざまな症状があります。だいたい初経から2~3年経ち、排卵周期が確立する10代半ばから閉経まであると言われています。  「月経困難症」は昔からあったと考えられますが、昔の女性は初経が遅く、若くしてお嫁に行き、そしてすぐ妊娠していました。子どもを産む数が仮に10人だったとしたら、生涯の生理の回数は50回ぐらいだったと考えらます。それに対して、現代では初経年齢が早く、子どもを産む人数も減ったため、生涯の生理の回数は昔の約10倍の400~500回。それだけ月経に悩まされる人が増えたと考えられますね。

「月経困難症」の原因、隠れている病気

 「月経困難症」は大きく2つに分けられ、器質的な異常を伴う「器質性月経困難症」と器質的には異常のない「機能性月経困難症」があります。「機能性月経困難症」の場合、不調の原因は子宮内膜でつくられるプロスタグランジンが過剰に産生され、子宮収縮を起こすことが主な原因だと考えらえています。「器質性月経困難症」の場合には、子宮系の病気が潜んでいる場合があるので要注意です。例えば、子宮内膜症(子宮腺筋症)、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮奇形などです。これらの病気を放っておくと、いざ妊娠したい時に妊娠しにくい可能性があるので、早めの治療をおすすめします。

市販薬でも症状が引かない場合は受診を

 女性の多くはなんらかの「月経困難症」を抱えていると言われているので、決して特殊な病気ではありません。もし、症状が起こった場合には、まず、市販の鎮痛薬を飲んでも構いません。鎮痛薬で痛みがコントロールでき、1~2日程度で治まるようなら、特に問題ありませんが、それでも不調を感じる場合は、たとえ生理中であっても婦人科を受診してみてください。初めての方でも、かかりつけの婦人科を見つけられたら、その先に「がん検診」などの検診を受けるきっかけにもなるでしょう。
西田玲子(にしだファミリークリニック)日本産婦人科学会専門医 日本更年期学会会員  徳島大学医学部卒業後、東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務。同じ医師でご主人の研究留学に伴い渡米。帰国後、平成7年に「にしだファミリークリニック」を開院。専門は内分泌(思春期 成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期)。医師だけでなく、ソプラノ歌手としての顔を持ち、藤原歌劇団に所属する。筋ジストロフィーと診断され、40歳で亡くなった詩人・鈴木信夫さんの詩に若手作曲家が曲をつけ先生が歌ったCD「光あるうちに~鈴木信夫の詩による歌曲集~」を好評発売中。三女の母でもある。