バセドウ病ってどんな病気? 妊娠できないのはホント?

バセドウ病の代表的な症状は、動悸や息ぎれがしてつらい、たくさん食べているのにぜんぜん太らない、といったものが知られていますが、なかには不妊治療や月経がなくて婦人科で検査をしたらバセドウ病だったというケースも…。 そこで、婦人科医の池下育子先生にバセドウ病の基本知識と、気になる妊娠への影響についてお聞きしました。

そもそもバセドウ病とはどんな病気ですか?

バセドウ病は喉ぼとけの下にある甲状腺が正常に働かなくなり、必要以上の甲状腺ホルモンがつくられてしまう病気です。反対に、必要な量の甲状腺ホルモンがつくられない状態を橋本病と呼びます。
甲状腺ホルモンは生命維持に必要なホルモンで、バセドウ病になると安静にしていても運動している時と同じぐらいに基礎代謝が上がり、動悸や息ぎれ、汗をかく、たくさん食べても体重が増えない、甲状腺が腫れる、眼球が出るなどの症状に悩まされます。

原因は不明ですが自己免疫疾患の一つで、20~30代の女性が患者数の半分を占めます。歌手の絢香さんがバセドウ病のため活動休止したニュースもありました。

●バセドウ病の検査
血液検査を行い、甲状腺刺激ホルモン(TSH)と、甲状腺ホルモン(FT4、FT3)の3種類のホルモンの値から正常か異常かを判断。 産婦人科の不妊症検査や、無月経や月経過少の検査でバセドウ病が発覚するケースも多い。

バセドウ病だと妊娠できない?

バセドウ病になると妊娠できないと勘違いする人もいますが、それは間違いです。治療すれば妊娠できる状態になります。

バセドウ病の治療は薬物療法がメインで、メルカゾール、もしくはプロパジールという2つの抗甲状腺薬を飲んで治します。服用から2~3ヵ月以内に甲状腺ホルモンの値が正常になりますが、2年近く服用することになります。

そのため、「妊娠中の服薬は赤ちゃんに影響がありそう」と勝手に不安に思い、妊娠を控える人もいますが、それも大きな誤解。治療をしながら妊娠・出産をしている女性はたくさんいますので、安心してください。

●バセドウ病の治療
薬、アイソトープ(放射性ヨード)、手術の3つの治療法がある。薬が効かなければアイソトープ、それでも治らない場合は甲状腺の一部を切除。いずれも過剰な甲状腺ホルモンの量を正常にするため行う。

●薬の副作用について
かゆみや蕁麻疹などが代表的な副作用だが、別の薬に変えると治まる。まれに、急激に血中の白血球が減る「無顆粒球症」の副作用もあるが、薬を中止して対処すれば心配はない。

妊娠中にバセドウ病を治療しないとどうなりますか?

妊婦がバセドウ病の場合、甲状腺を刺激する物質が胎盤を通過するため、赤ちゃんもバセドウ病になる可能性があります。そこで、妊婦も赤ちゃんも薬で甲状腺ホルモンを正常に保つことが必要になってきます。妊婦の血液を調べれば赤ちゃんの甲状腺機能も予測できるので、血液検査のデータをもとに医師が適切な薬の量を決めていきます。

また、妊娠中にバセドウ病の治療をしないでいると、流産や早産のリスクが高くなります。治療がなかった時代には、バセドウ病だと流産が多かったようです。
治療の副作用を恐れる人は多いようですが、バセドウ病を治療しない方がずっと問題です。現在は、専門医のもとで適切な薬を飲みながら治療していけば、赤ちゃんへの影響は心配いりません。

池下先生より まとめ

実はバセドウ病は完治しないことも多く、出産経験のある60代の女性が再発した例もあります。長くつき合っていく病気ともいえるバセドウ病。誤解や不安を持たずに、妊娠・出産の大切な機会を逃さないようにしましょう。

池下育子先生(いけした女性クリニック銀座)青森県出身。帝京大学医学部卒。帝京大学麻酔学教室助手、国立小児病院麻酔科、都立築地産院産婦人科勤務。同病院医長を経て1992年池下レディースクリニック銀座開業。会社や人間関係などのストレスで悩む女性たちに本音でアドバイス。また、女性、心身のトラブル全般に積極的に取り組む。12年医院名をいけした女性クリニック銀座へ改称。『はじめての子宮がん検診』『妊活 いますぐはじめたい6つの習慣』など、女性の病気、妊娠にまつわる著書多数。