これってPМS? 他の病気との見分け方

月経前症候群(PMS)についてはずいぶん知られてきていますが、似たような症状が表れる別の病気との見分け方についてはまだご存じない方も多いはず。他の病気との見分け方を把握しておき、適切な対処をしたいものです。そこで、PМS外来を設けているポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータの清水ほなみ院長先生に詳しくお聞きしました。

PMSってどんな病気?

PMSはPre Menstrual Syndromeの略語で月経前症候群と言います。月経が始まる10日~2週間前の排卵後から、月経直前までの期間に症状の出る病気で、原因は、排卵によって黄体ホルモンが増えることではないかと言われています。

症状は実にさまざま。頭痛やめまい、むくみ、眠くなる、下腹部痛、乳房痛といった身体的症状から、イライラや気分が落ち込む、過食といった精神的症状まで幅広く、300種類以上あると言われています。

さらに精神的な症状がひどい場合は、身体的治療と同じことをしても有効でない場合が多いため、PMSと区別して治療を行います。それをPMDDと呼びます。

●PMDD(月経前不快気分障害)
Pre Menstrual Dysphoric Disorderの略語で、日常生活に支障をきたすほど強い精神症状を指す。

PMSはどう診断するの?

PMSは、検査で診断するのではなく、「いつ」症状が出て、「いつ」治まるかが大きなポイント。症状日記(PMSメモリーとも呼ぶ)をつけると、不調の期間が明確になり、PMSなのかどうか判断しやすいので、当院ではつけていただくようお願いしています。
また、腹痛やめまい、頭痛など一番つらい症状の原因を調べても、検査に異常がない場合は、PMSと診断されることが多いです。

当院の患者さんのうち、純粋なPMSと診断したのは3割くらい。約7割は、別の病気とPMSが混合しているか、もしくはPMSでない場合が多いです。月経中や月経後も症状が続く場合は、別の病気を疑いましょう。以前、「月経前に頭痛と異臭がする」とPMS外来に来られた患者さんを診察し、PMSではないと診断、その後、脳外科で検査をしたところ脳腫瘍が見つかったということもありました。

●PMSメモリーを記録しよう
①月経の始まりと終わり、②どういう時に誰(何)に対してどんな症状がでるのかを、最低1か月は記録しましょう。基礎体温をつけると排卵日がわかるのでベターですが、ハードルが高ければこの2つだけでもOK。PMSメモリーの用紙は下記からダウンロードできます。

■テルモ 基礎体温でカラダと話そう
http://www.terumo-womens-health.jp/data/PMSmemoP_2007.pdf
※リンクURLは変更になることがあります。ご了承ください。

PMSに似ている病気には何があるの?

排卵期や月経前に腹痛や腰痛が起きる「子宮内膜症」やホルモンの変動によって心身の不調が出る「更年期障害」はPMSの症状に似ています。また、甲状腺機能障害や貧血症でも、イライラやだるさなどPMSのような精神的症状が出ることがあります。

また、精神疾患がある人や片頭痛の人は、月経前になるとその症状がひどくなる場合があります。そのため、PMSかどうかの見極めは難しいのですが、心療内科や精神科と一緒に連携して治療します。

PMSにはどんな治療があるの?

治療の基本は、低用量ピルか漢方薬です。精神的な症状がひどい場合は抗不安薬、抗うつ薬を処方することもあります。純粋なPMSには低用量ピルがよく効きます。しかし、妊娠の希望や年齢などで低用量ピルを希望しなければ、漢方薬を処方します。漢方薬も身体・精神の両方に効果があるので、本人の希望に合わせます。

実は、カウンセリングも有効な治療法です。不調を起こす原因を見つめ直して、症状を根本的に改善するよう導きます。
例えば、月経前になるとイライラしてヒステリーをおこす人の場合、カウンセリングを行うことで、子どもや夫、仕事の上司などの言動や行動にイライラして感情を爆発していることに気づけます。そこで、「感情を爆発させたくない」と自ら求めれば、自分の受け止め方を変えることで、症状の程度も軽くでき、やがて薬に頼らなくてすむようになっていきます。

清水先生より まとめ

同じように月経があっても、PMSにならない人もいます。この違いは、精神的な要因から来ることも多いのです。PMSの人は身体症状も感情もなにかに振り回されてしまう傾向があります。また「月経のせい、ストレスのせい、○○のせい…」というように言い訳が多いことも。
そこで、下記の項目で当てはまるものがないかチェックしてみると、症状を楽にするような気づきがあるかもしれません。●PMSセルフチェック
□自分は「混乱しやすい」と感じていた
□自分の体や人生を「自分でコントロールできない」と感じていた
□自分のことなのに人に決めてもらうことがよくあった
□女性としての体に違和感を感じていた
□常に安定した自分でいられないことでやらなくて済んだことがあった
□常に安定した自分でいられないことで会わなくていい人がいた
□自分のことを「自立していない」と感じていた
□自分は人から影響を受けやすいと感じていた
□自分の人生は「振り回されている」と感じることがよくあった

清水なほみ(ポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータ〜)2001年、広島大学医学部卒業。広島大学附属病院産婦人科、ウィミンズウェルネス銀座クリニックなどを経て2010年、横浜ポートサイドで「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業。ビバリータはサンスクリット語で「輝くような魅力的な女性」を意味する。薬に頼らないで病気にならないための「脳の動かし方」を指南する。 日本産科婦人科学会専門医、日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー。