妊娠をきっかけに、お尻の病気に悩む女性は多いものの、1人で悩み、我慢してしまうことがほとんどのようです。
しかし、適切な治療をせずに放置してしまうと、妊娠後期や出産後に急激に症状が悪化してしまうことも。
そこで今回は、妊娠や出産で起こりやすいお尻の病気とその対策について、福田肛門科医院の福田ゆり先生に伺いました。
妊娠中になりやすいお尻の病気とは?
女性の場合、妊娠の有無に関係なく、もともとお尻の病気に悩む方は多いです。特に発症しやすいのが、いぼ痔(痔核)と、切れ痔(裂肛)です。
妊娠中には、妊娠前からのいぼ痔、切れ痔が悪化する、または急に発症する、というケースがよくみられます。というのも、妊娠中はお尻の病気の原因となる、便秘を引き起こしやすいからです。
妊娠中に便秘になってしまう主な原因には、
・妊娠時期はホルモンの影響で腸の動きが低下すること
・子宮が大きくなり腸を圧迫すること
・運動不足になること
の3つがあげられます。
これに加えて妊娠中は子宮の圧迫で肛門の血行不良がおこり、さらに痔の症状が起きやすくなります。
また、痔の症状が妊娠後期に急激に悪化する、というケースもよくあります。症状に気づいたら、まずはかかりつけの産婦人科で相談されてもいいでしょう。妊娠中でも使用できるお薬もありますので、自己判断せずに早めに病院を受診することをおすすめします。
お尻の病気を予防するためには“便秘対策”が大切
このようなお尻の病気を予防するためには、まず便秘対策をしっかりと行なってください。
1.水分をたくさん摂り、バランスの良い食事を心がける
2.トイレでは長時間いきみすぎないようにする
3.お風呂に入って温まる
4.症状が出たり、悪化してきたら早めに医師に相談する
上記の生活改善でも便秘が解消しない場合は、医師に相談しましょう。妊婦さんでも使用できる便秘薬を処方してもらえることもあります。
また、お尻を清潔に保つことも予防のひとつですが、拭きすぎや洗いすぎでかぶれてしまうこともありますので、やりすぎないように注意してください。
出産時のいきみと痔の関係とは
出産後に急に腫れて痛みが出るケースには代表的なものが2つあります。1つは、血栓性外痔核です。これは出産時のいきみにより生じる血豆のようなものです。一時的なもので、お薬を使用し、時間とともに徐々に治ります。
もう1つは嵌頓(かんとん)痔核です。こちらも腫れて痛みを伴いますが、このケースも急性期はお薬での治療を行うことがほとんどです。
妊娠中から産後の授乳期にかけては、お薬の赤ちゃんへの影響や育児中の痔の悪化など不安に考えることも多いと思いますが、ある程度の症状はお薬で治療が可能ですので安心してください。
痔以外の病気の場合はどうするの?
まれに「痔とは別の病気」というケースもあります。腸の炎症の病気や悪性の腫瘍の可能性もゼロではありません。特に、近年増加している腸の炎症の病気は妊娠や出産をきっかけに発症したり悪化することがわかっています。
出血やお腹の張り、便秘や下痢が続く場合は、一度病院に相談してみましょう。
恥ずかしがらずに、気軽に受診しましょう
妊娠中のお尻のトラブルは、多くの方が抱える悩みのひとつです。けれども最近は肛門科の女性の先生も増えてきていますし、受診しやすい環境が整えられている病院は多くなっています。
妊娠や妊活をきっかけに、お尻の健康についてぜひ考えてみてくださいね。