子宮筋腫や卵巣嚢腫は原則的に妊娠可能
近年、女性にとても増えている子宮筋腫や卵巣嚢腫。筋腫のサイズやそれに伴う症状によって妊娠中に手術をすることはありますが、原則的に妊娠、出産は可能です。筋腫によっては妊娠の進行とともに大きくなることがあります。そして妊娠中の下腹部痛として表れる切迫早産があったり、人によっては通常の分娩が不可能で帝王切開になることもあります。しかし、妊娠前に子宮筋腫が見つかったとしても、すべてのケースで摘出しなければならないわけではありません。卵巣嚢腫も同様です。
妊娠できても症状の改善はない子宮内膜症
よく出産すると子宮内膜症が改善した…という話があります。確かに一時的に改善することはありますが、月経再開時にまた症状が現れてしまうことがあります。
これは、昔は女性が多産で妊娠、出産を繰り返していたため、産後生理が一時的にくるとラクになったと感じられ、たとえ内膜症があっても苦しみを伴わずにまた次の妊娠をしていたからだと考えられます。
少子化の現在では、症状が再度現れることが多く、原則完治しないと考えられています。
妊娠前に確認しておきたい感染症
妊娠中に罹ると胎児に影響を及ぼしかねない感染症。妊娠前に幼児期からの予防接種歴などをきちんと確認することが大切です。
- ●風疹・麻疹
- 妊娠初期、風疹に罹患すると胎児の心臓、脳に影響を与え、難聴、知能低下などによる「先天性風疹症候群」になる可能性が高いと言われています。妊娠前に風疹抗体検査(血液検査)を受けて、抗体の有無を確認しましょう。麻疹も特に大人は重症化しやすく、妊娠中の罹患によって早産、流産をしやすくなると言われています。いずれも、抗体がない場合はワクチン接種(MRワクチン…麻疹・風疹両方のワクチン)を受けましょう。
- ●水痘(水ぼうそう)
- 妊娠初期に罹患すると1~2%の胎児に影響があると言われています。ただ、日本人成人の95%は抗体を持っていると言われているため、全員が検査をする必要はなく、水痘にかかっていない人には予防接種をおすすめします。
- ●トキソプラズマ
- ネコの便、生肉に存在するトキソプラズマによる感染症で、妊娠中に感染すると胎児にも感染し、先天性トキソプラズマ(水頭症、眼の脈絡網膜炎など)を発症することがあります。妊娠中は感染予防が大切です。
- トキソプラズマの感染予防対策
ヒトからは感染せず、動物の生肉や糞が口に入ることで感染します。
★生肉はしっかり加熱しましょう
生肉・生ハム・サラミ・レアな状態のステーキは妊娠中控えましょう。野菜・果物もきれいに洗って食べましょう。
★ネコを飼っている人は室内で飼育し、トイレ掃除は家族に任せるか、ゴム手袋を使用しましょう
★ガーデニングなど土いじりをする時には手袋をし、後でうがい・手洗いをしっかりとしましょう。
- ●B型肝炎
- ウィルスの感染を受けても肝炎症状を現さない(B型肝炎キャリア)方が妊娠した場合、胎児への感染の原因となるので必ず検査を受けておいてください。母子感染を起こすと赤ちゃんがキャリアになり、感染源になるので管理が必要になります。B型肝炎ウィルスは血液だけでなく、性交渉でも感染します。パートナーがB型肝炎の方は特に注意しましょう。
近年急増している性感染症
特に若い女性に増えているのが性感染症です。症状があっても我慢していたり、気づかないふりをしていたりして、来院した時にはすでに重症化している人も少なくありません。SNSなどの普及によって名前も知らない人と性交渉をするケースも増えてきています。妊娠を望むなら、しっかりと治療をしておきましょう。
- ●クラミジア
- 女性の性感染症で最も報告が多いもののひとつです。クラミジアに罹患すると卵管炎になり、将来不妊症や子宮外妊娠の原因となることがあります。また、放置しておくと広汎な腹腔内の炎症に及ぶこともあります。妊娠中の感染では、流産や早産の原因となり、分娩時に胎児に罹患すると肺炎や髄膜炎を起こすこともあります。
- ●梅毒
- 主に性交渉で感染します。妊娠中の梅毒感染により、流産・早産、胎児の脳への障害を起こす可能性があり、できるだけ妊娠前に治療を終えることが大切です。治療には長期にわたる抗生物質の使用、また自治体への届け出も必要になります。