乳がん検診の重要性を理解していますか?

「乳がん検診は中年になってから」と思っている若い女性も多いでしょう。でも、乳がんは年齢に関係なくかかる病気です。妊娠を希望していたり、不妊治療を検討しているならば、ぜひ乳がん検診を受けましょう。産婦人科医であり、乳がん認定医でもいらっしゃる井上レディースクリニックの井上裕子院長先生に、検診の重要性についてお聞きしました。

乳がん検診はなぜ必要なの?

乳がんは早期で発見すれば、90%以上治ります。しかし、早期の乳がんは自覚症状がなく、触っても分かりません。画像診断でしか発見できないのです。しかも、1㎝のしこりは約1年で2㎝の大きさになる場合もあります。だからこそ、定期的に乳がん検診を受ける必要があるというわけです。

早期発見、早期治療ができれば、命も守られますし、化学療法やホルモン治療も受けなくて済む可能性が高くなります。妊娠・出産を望むならそれらの治療は避けたいもの。ですから、20代から30代、40代の方も受けておいたほうが良いのです。

もし、不妊治療中に乳がんが発見されたら、受精卵や卵の保存を行うか抗がん剤かの選択に悩むことになります。また、妊娠中に乳がんが発見されると、自分の生命か胎児の生命かの選択を迫られたりと、つらい局面と向きあうことにもなってしまう可能性もあります。

とはいえ、乳がんを含めた婦人科系のがんは、他の臓器に比べて、早期に発見して手術を含めた適切な治療を行えば、良くなる可能性が高いのです。恐がらず、積極的に検診を受けたいものです。

●乳がんとは
乳腺を構成する細胞が無秩序に異常に増殖した状態を言う。
乳がんの治療は、進行度や悪性度、がん細胞の性質など様々な検査を行った上、ガイドラインをもとに一人ひとりに適した治療を決めていく。

乳がん検診の詳しい内容は?

「乳がん検診」には、対策型がん検診と任意型がん検診があることを知っておきましょう。

●対策型がん検診
死亡率を下げることを目的に公共政策として行う検診。自治体や企業検診になる。無料あるいは少額の自己負担ですむ。国の政策として、40~60歳の女性を対象として、5年ごとに無料クーポン券を配布。40歳から2年ごとに検診を実施する自治体もある。検査はマンモグラフィ(乳房X線撮影検査)と触診。

●任意型がん検診
対策型がん検診以外のもので、個人の意志で行う個別検診。検診機関や医療機関で行う人間ドックなどになる。全額自己負担。マンモグラフィ、エコー(超音波検査)、コストはかかるが、МRI検査やCT検査の画像検査、PET検査などがある。

マンモグラフィだけで安心?

20歳から2年に1度、25歳からは1年に1度、また自治体の検診対象外である30代の女性も、「任意型がん検診」で乳房のエコー検査を毎年必ず受けることをおすすめします。

乳がんの早期発見には、一般的にマンモグラフィ検診が有効と言われています。しかし、マンモグラフィの場合、乳房の脂肪もがんも黒く写るので、がんとの判別がしづらいのが現状です。これは個人的な見解ですが、正確な結果を知りたいと思うのであれば、自己負担になってしまいますが、40歳以下であればエコー検査だけにするか、もしくはマンモグラフィとエコー検査を合わせて受けることをおすすめします。

井上先生より まとめ

日本は無料で乳がん検診を受けられるのに、検診率は40%前後と先進国で最低レベル。40歳以上の女性がこの程度なので、20~30代の女性の意識はもっと低いです。ちなみにエコー検査は1回4000~7000円。自分の体を守るだけでなく、自分の望むライフスタイルを叶えるために、オシャレのネイル1回分を検査に使うなど、いま何をすべきかをしっかりと考え、実行できる女性になりましょう。

井上裕子(井上レディースクリニック)1977年、共立女子大学文芸学部卒業後、医師を志し1984年、帝京大学医学部を卒業。1919年に祖父が開業した医院3代目院長に就く。分娩、婦人科検診、不妊治療を柱にしながら「女性総合診療科」を目指し、女性の生涯寄り添った医療を施したいという姿勢を貫く。個人産婦人科で乳がんや子宮がんなど婦人科系の検診を受けられるのは全国でも希少。ほかの臓器のがんに比べて婦人科系がんは早期発見・早期治療で良くなる確率が高いので、検診を積極的にすすめる。