「生理が来ない」は恐い? 月経不順を感じたらすべきこと

「月経不順」はどう診断する? その定義と線引き

近年、「月経不順」を訴える女性がとても増えてきたと感じています。まず知っておいていただきたいのは、女性の月経周期はだいたい25~38日周期でやってくるということです。日本人の平均月経周期は28日くらいと言われています。もし「月経不順かな」と感じたら、婦人科を受診する前に“基礎体温”を測って記録してみてください。

基礎体温を測るメリットは

①自分で月経周期をある程度把握できる
②排卵がいつごろ起こるのか分かる
③いつ妊娠しやすいか、妊娠しにくいか分かる

ということです。①で月経周期が28日くらいなら2、3日遅れていると「月経不順」の可能性が、また月経周期が35-40日なら1週間くらい遅れたらこれも「月経不順」の可能性があるので、婦人科を受診することをおすすめします。

「月経不順」を起こす具体的な理由って?

「月経不順」を引き起こす主な理由は4つ挙げられます。

①妊娠
②体重の急激な増加や低下
③ホルモンのアンバランス
④精神的疾患

①の妊娠は意外にも年齢を問わず気付かない方が多く、妊娠12~14週になってようやく気付く方もいるので要注意です。「体重の急激な増加や低下」は大きく2つに分かれ、ひとつは“単純性体重減少性無月経”といって元の体重から10%、あるいは5kgの体重減少があると、生理が止まってしまう状況。食事を抜く急激なダイエットで目標体重に達した場合には、食事を戻しても起こることがあります。
思春期に多い無月経です。もうひとつはいわゆる“拒食症”。体はすでに痩せていて、食べていないのに本人には「食べていない」という認識がないために、体の生体防御が働きすべての生理を止めてしまう状況をいいます。これも思春期から20代に多く、治療が難しいのが特徴です。「ホルモンバランスの異常」には高プロラクチン血症、甲状腺機能低下症、糖尿病などがあり、代謝の亢進による痩せが起こり、体のホルモンのアンバランスが生じることによるもの。「精神的疾患」はうつ病、不眠障害などによるものです。

それぞれの症状に適した治療が大切

「月経不順」が疑われたら、まずは基礎体温を記録します。そして上記の「妊娠」は除外診断し、ほかの3つの原因を確認していきます。問診、超音波、血液検査、ホルモンチェック、場合によっては細胞診も行い最終的な診断をします。上記の“単純性体重減少性無月経”であればBMI(ボディ・マス・インデックス)を元に体重を戻していきます。

“拒食症”の方は本人に病識がないので、病気を認識させていきます。場合によってはメンタルからのアプローチも必要なため、心療内科にも通いながらの治療になります。ホルモンに原因がある場合は、視床下部下垂体、あるいは卵巣異常かによってピル、あるいは漢方薬を処方します。精神的疾患であれば、こちらも心療内科を受診し精神安定剤も服用しながらの治療になります。

“不妊症”を防ぐためにもぜひ受診を

お話しした通り、「月経不順」かなと思ったら、どんな原因で月経不順になったのか、病識があるのか、ないのかを確認することが大事です。16~18歳くらいの方なら、「子宮発育不全」といって将来不妊症に移行しやすい子宮の発育不全の可能性も考えられます。また、個人的な印象としては5月~夏場、台風の時期に「月経不順」を訴える方が多いように感じています。
これは、春から新しい環境になったり、親元を離れ、生活リズムが崩れたことにより起こるものだと思われます。将来の妊娠を考えても、生理の変化を感じたら早めに婦人科を受診してみてください。
千代倉由子先生(池ノ上産婦人科)東邦大学医学部大学院卒業。東邦医大医学部産婦人科勤務、東邦医大周産期センター研修、青梅市立病院産婦人科勤務、日赤医療センター麻酔科研修を経て、現在は池ノ上産婦人科で診療中。話しづらい不妊、避妊、性病、緊急避妊、子宮がん、乳がん、妊娠人工中絶についても気兼ねなく相談できる。最近ではファッション雑誌やマタニティ雑誌などで専門医師として紹介されている。