月経前になるとイライラしたり、下腹部痛などの症状が出ることをPMS(月経前症候群)と言います。カウンセリングによって改善する方法をPMS外来も設けているポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータの清水なほみ院長先生に詳しくお聞きしました。
PMSの原因はメンタルにあった!?
同じように月経があるのに、PMSになる人とならない人がいます。この違いは何だと思いますか? 実は精神的なもの、考え方のクセが大きく影響しています。
PMSの症状の中でも、とくにイライラや落ち込みなど精神症状が大きく出る人というのは、ふだんから人や環境に振り回されやすい、物事を自分で決められない、人の顔色をうかがってしまうタイプの方に多いのです。
「でも、そもそもメンタルはホルモンの影響を受けやすく、自分ではコントロールできないのでは」と思う人もいるかもしれません。実はその信じ込みこそがPMSの根本原因です。確かに女性ホルモンの波を受けて、メンタルの調子が一定でなくなることはありますが、それを「振り回される」というスタンスでとらえてしまっているのはその人本人です。
考え方のクセや思い込みを変えることがPMSの根本改善に!
実際、カウンセリングで両親との関係性を意味づけし直して、自分の人生にきちんと責任がとれる考え方にシフトすることでPMS症状が改善するケースがありました。また、イライラがひどいPMSで困っていた患者さんがいたのですが、カウンセリングで「どんな時にイライラするか」を探っていったところ、他人が思い通りに動かない、自分がこうなるべきと考えていた結果にならなかった時にイライラすることが判明したのです。そのうえで、イライラする状況をむしろ楽しむように心がけると、イライラは消えました。このことから、その方は実はPMSではなかったことにも気づけました。
もちろん、PMSは精神症状だけでなく、ホルモンの影響で血流が悪くなったり、子宮内膜症などがあったりして腹痛や腰痛に悩まされる人もいます。したがってPMSの原因がすべてメンタルに由来するわけではありません。また、先ほどのエピソードでご紹介した「実はPMSではなかった」方のように、不定愁訴的な訴えを慢性的に抱えている人もいます。
ですから、私はまず記録をつけることをおすすめしています。「イライラする」「腹痛がする」など、その日に感じた体の調子を記録していきます。そうすると、月経1週間前から胸のはりを感じるけれど、イライラはランダムだったなどの症状の波がわかってきます。PMSはあくまで主観でしか測れないので、イライラ度も3段階くらいに分けて記録するといいでしょう。そうすることで自分自身の悩みが本当にPMSかどうかもつかめます。
ピルと漢方に加えてカウンセリングも有効な治療法と認識しよう
PMSの治療は基本的に低用量ピルか漢方薬です。特に身体症状がメインのPMSには低用量ピルがよく効きます。妊娠を希望されていたり、低用量ピルに抵抗感がある人には漢方薬を処方します。漢方薬も身体・精神の両方に効果があるので、本人の希望に合わせています。
それに加えて、精神的な症状に有効な治療法が先にご紹介したカウンセリングです。不調を起こす原因を見つめ直して、症状を根本的に改善するよう導きます。
「言いたいことを言えない」「やりたくないことをやっている」「自分の生活を自分でコントロールしていない」などの、ストレスがたまる行動パターンを修正したり、糖質中心の食事や間食の取り方から、血糖値が安定する食事スタイルに変えることで症状が軽減するケースもあります。
自分で「ストレスフルな生活をしている」と感じているなら、それこそ生活改善が必要です。そもそも「生活や食事に気をつかわない」という過ごし方そのものが病気の原因となります。PMSは「自分を見直せ」というサインです。きちんと受けとめて過剰に薬を頼らず、まずは自分で改善していこうと考えることが大事です。
カウンセリングも、きちんと学んだカウンセラーに依頼することが大事です。ただし、医師やカウンセラーに頼りきり、依存しても改善はしません。あくまで改善させるのは「自分である」という認識がとても重要です。
清水先生より まとめ
あなたは、自分の人生という車のハンドルを自分で握っていますか? 「ハンドルをちゃんと握っていないし、行きたい方向へ行けていないですよ」というサインが体調不良です。PMSはそうしたサインとして出やすい病気のひとつなのです。まずは自分で、これからの人生の行き先を明確にし、カーナビに頼らず進んでみましょう。実は、カーナビの行き先登録に「ここじゃないどこか」と入れる人が多いのですが、それは自分の人生を誰かに何とかしてくれと訴えているのと同じです。自分がどうしたいのかを主体的に考えられる、自立した人間になることを心がけてください。精神的なPMSの根本治療はそこがスタートだと思います。