最新の子宮体がん検診事情って?

子宮体がん診断は、子宮内膜の細胞を採る内膜細胞診が一般的で、「痛みが強い」「怖い」というイメージがありますが、経膣エコーでの“痛くない”子宮体がん診断を導入している、みずほ女性クリニックの津田浩史先生に最新の検診事情を伺いました。

子宮体がんってどんな病気?

 

 

子宮体がんは、子宮の奥の子宮内膜に発症するがんのことです。同じ子宮のがんでも、子宮の入り口(頸部)にできるがんは子宮頸がんといいます。

子宮体がんは、エストロゲンによって発生するタイプと、エストロゲンに関係なく発生するタイプに分けられます。出産経験がない、遅い閉経、肥満、糖尿病、高血圧などが発症の危険因子といわれています。最近では、乳がんの増加に伴い、乳がん術後治療に処方されるタモキシヘンにより増加しています。

年代としては、40代後半から徐々に増えはじめ、50才~60才代の閉経前後に多くなります。また、その一部には遺伝性素因が関与し、大腸や子宮体部、卵巣、胃、小腸、肝胆道系、腎盂・尿管のがんとも関連があることが判明しています。母、姉、叔母などに上記の発症歴がある女性は若い年齢でも子宮体がんになることはあります。

初期症状としては、不正出血があったり、おりものに異常があったりします。子宮体がんと診断されたら、基本治療は子宮や卵巣の全摘出で、進行度によってはリンパ節も摘出し、抗がん剤などの術後治療も必要となります。ただし、早期発見ができれば、内視鏡手術が可能で、術後治療も省略できる場合もあります。

子宮体がん検診はどんな人に必要?

まず、知っておいていただきたいのは、検診には自治体の公費で行われる対策型検診と、自費で行う任意型検診があるということです。

乳がん・大腸がん・胃がん・肺がん・子宮頸がんなどの検診は対策型検診で、自治体により公費で行なっていますが、子宮体がん検診を公費で行っている自治体は減少してきています。

なぜなら、乳がん・大腸がん・胃がん・肺がん・子宮頸がんは定期的に検診を行うことで死亡率低減効果があることが証明されていますが、子宮体がんは検診での死亡率低減効果が証明されておらず、公費での検診が推奨されていないのです。

また、子宮体がんは検診で発見しなくても、症状が出てから検査をしても大半は初期で発見できます。ですから、症状もないのにすべての人に子宮体がん検診を推奨するのは適切とはいえません。危険因子のある方を対象に、保険診療として実施するのが基本です。

子宮体がん検診の方法は?

一般的に広く行われているのは子宮内膜の細胞を採る内膜細胞診ですが、強い痛みを感じたり、感染を引き起こして入院治療が必要になる人もいます。また、子宮頸部の細胞診ほどは診断精度が高くなく、成績に施設間格差が出るともいわれています。メリットとしては、早期発見ができることです。

私のクリニックでは、経膣エコーによる子宮体がん検診を取り入れています。

子宮体がんがある場合は内膜の厚さに異常が見られますので、エコーで内膜の厚さをはかって診断します。エコーのメリットは、痛みが少ないこと、検査を行う人の間の実力差が少ないことが挙げられます。不正出血などの症状があっても、エストロゲンの欠乏で膣や子宮が萎縮して起こる萎縮性の出血のことも多くありますので、エコーでその診断ができれば痛い思いをして内膜細胞診をしなくて済むケースも多いのです。ただし、エコーだけで最終診断をするのは無理で、内膜に異常が見られる場合は内膜細胞採取をする必要があります。

津田先生より まとめ

子宮頸がんと違って、無症状の人全員に子宮体がんの定期検診は必要ありません。また症状があってもエコーで子宮体がんを除外できる場合も多く存在します。不正出血が続く、月経過多、月経間隔に異常があるなどの症状がある場合、家族歴があって心配な場合には、一度、婦人科で相談することをおすすめします。

津田 浩史 先生(みずほ女性クリニック院長)大阪市立大学医学部、同大学大学院医学研究課外科系専攻産婦人科学卒業。大阪市立総合医療センター産婦人科、慶應義塾大学医学部産婦人科勤務、米国国立がん研究所、米国ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィメンズホスピタル留学等を経て、2013年、東京・国分寺駅前にみずほ女性クリニックを開設。同院のモットーは「頑張っている女性を応援するクリニック」と「専門医による地域医療」。思春期から老年期まで女性の一生をトータルでサポートします。