「避妊リング」とは? 出産後の避妊はどんな方法がベスト?

出産後すぐに次の妊娠を希望していない時などの、有効な避妊方法の一つとして避妊リングがあります。他の避妊方法との違いやメリット、種類や効果について、的野ウィメンズクリニック院長の的野博先生にご紹介いただきました。

避妊リングと他の避妊方法(ピル等)の違いは?

出産後、次の妊娠まではしばらく間をあけたい、または、今後妊娠出産の計画はない、という人もいるでしょう。そうした場合、手軽な避妊方法には基礎体温法やコンドーム法などがありますが、そういった方法の避妊効果は確実とはいえないのが現状です。

特に排卵の再開時期を自分で把握するのがむずかしい産後には、無理なく確実で、自分に合った有効性の高い避妊方法を選ぶことが大切です。

現在選ぶことができるほぼ確実な避妊方法としては、一般的にはピル、あるいは低用量ピルと呼ばれるOC(低用量経口避妊薬)と、避妊リングと呼ばれるIUS(子宮内避妊システム)・銅付加IUD(子宮内避妊具)があります。ピルは毎日1錠を服用することで避妊できますが、女性ホルモン剤であるため授乳中や出産後6カ月くらいまでは使うことができません。一方、避妊リングは、子宮内にプラスチック製のT字になった小さな避妊器具(高さ約3cmほど)を入れる方法で、産後2カ月から使用できます。

産後間もない時期から避妊したい人にとっては、避妊リングは適した方法と言えるでしょう。

 

■避妊リングの種類と効果

【IUS】(ミレーナ-R)
黄体ホルモンを放出するプラスチック製の小さな器具を子宮内に挿入することで、ホルモンの効果により子宮内膜が厚くなるのを防ぎ、受精卵を着床しづらくさせる方法です。

【銅付加IUD】(ノバT-R)
銅イオンを放出するプラスチック製の小さな器具を子宮内に入れ、精子の運動性を抑制することで受精を防ぐとともに、受精卵の着床も防ぐ方法です。

避妊リングのメリット・デメリットは?どんな人に向いている?

避妊リングは、婦人科の外来で医師が子宮内に装着しますが、体の中に長期間入れるということに抵抗がある人もいるようです。しかし、装着には麻酔も必要なく、5~6分で完了する簡単なものです。デメリットやリスクと言えば、装着時、まれに痛みや不正出血が生じる可能性がありますが、日常生活で違和感が出ることはほとんどなく、普段通りの生活を送ることができます。

費用は自由診療のため医療機関によりまちまちですが、当院では4万円くらいです。一見高く感じる方もいるかもしれませんが、ピルは月々2~3,000円くらいで、プラス年2回の血液検査等が必要とされており、年間4~5万円かかります。避妊リングは最大5年間有効です。ピルに比べると5分の1程度の費用ですから、実は安く済みます。

また、避妊リングのうち、もともと月経量が多い過多月経や、激しい生理痛が起きる月経困難症や子宮内膜症の治療薬だったIUSのほうは、2年ほど前に治療目的であれば保険適用になり、費用も1回1万円程度になりました。ただし、避妊目的の場合には引き続き自由診療となりますのでご注意ください。

それ以外にも、ピルを飲んで吐き気や体調不良があったり、忙しくてピルを飲み忘れてしまいがちな人、さらにピル服用により血栓症になりやすい35歳以上のヘビースモーカーといったリスクが高めの人などはピルを服用できないため、避妊リングを選択する人が多くなります。

逆に、肝機能障害や乳がんといった病気がある人、クラミジアなど性感染症の患者さんや子宮外妊娠に気づいていない人など、避妊リングが適さない人もいます。

子供が欲しくなった時はどうすればいい?

避妊リングを装着すると定期健診が必要となり、通常は装着の1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、1年後、それ以降は必要に応じて最大5年間の有効期間中に、年に1回以上の検診を受けます。

子作りを再開しようと思えば、いつでも避妊リングを取り外すことができます。当院では保険適用外でも1万円程度の費用で、取り外すとすぐに妊娠が可能です。

的野先生より まとめ

避妊リングは、装着1年以内に妊娠する確率は、IUDでは0.6%、IUSでは0.1%と言われ、高い避妊効果が期待できます。ピルでも同様の効果が実証されていますが、毎日欠かさず飲み続けるのは案外大変なものです。とくに出産経験があり、お子さんが複数いるなど、子育てに追われて毎日あわただしい女性にとって、毎日のケアは必要なく長期にわたってバースコントロールができる避妊リングは、産後の避妊に大変適していると思います。
ただし、感染症予防などのためには、避妊リングを装着していてもコンドームの併用が望ましいため、パートナーとは話し合って協力を求めましょう。

的野 博 先生(的野ウィメンズクリニック 院長)産婦人科専門医 母体保護法指定医 麻酔科標榜医 マンモグラフィー読影認定医 日本医師会認定産業医 北里大学医学部卒業後、同大学病院 麻酔科入局。国立立川大学麻酔科、横浜赤十字病院産婦人科、順天堂大学産婦人科、国際親善病院産婦人科医長、小川クリニックを経て、2011年 的野ウィメンズクリニックを開院。開院後、乳がん検査の必要性を感じ、クリニックで検査が受けられるよう自ら勉強し、マンモグラフィー読影認定医となるほど熱心な先生。