女性の性器ヘルペスの原因と治療法、再発予防策とは?

婦人科で性器ヘルペスと診断されたけれど感染原因がわからず、パートナーとの関係に不安になるという女性は少なくないようです。性器ヘルペスとはどんな病気なのか、治療法や再発予防策について、アイレディースクリニック新横浜の入江琢也先生に伺います。

性器ヘルペスとはどんな病気?

 

性器ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス(HSV)」の感染者から性交渉などを介して感染する性感染症です。

感染部位は性器や肛門などで、水ぶくれやブツブツしたような潰瘍ができて、ピリピリした刺激やかゆみなどの症状があります。診断方法は問診と視診が中心です。血液や、ヘルペスと思われる箇所を採取して調べる検査もありますが結果判明までに5日くらいかかり、治療しているうちにヘルペスが治ることが多いのであまり行いません。

性器ヘルペスは、クラミジアなどといったほかの性感染症と違って、少々やっかいな面がある病気です。その理由は2つあります。

ひとつは、一度ヘルペスに感染すると、体内からヘルペスウイルスを完全に追い出すことができず、その後も長年にわたって再発をくり返すことがあるためです。薬で症状が治っても、ウイルスは腰のあたりの神経節(神経が集まっているところ)にすみつき、疲れた時や生理など、体の免疫が落ちた時を見計らって症状を再発させます。

もうひとつは、感染時期や相手を特定しにくいことです。初めてヘルペスに感染した時、「すぐに症状が出る人」と「感染した時には症状がまったくなく、数年後に初めて症状の出る人」の2パターンがあり、原因が必ずしも今のパートナーとは限らないため、感染経路がわかりにくいのです。

なお症状は3ケースあり、1)初めて感染した時、2)感染した時は無症状で、期間が経ってから初めて症状が出た時、3)再発した時とでそれぞれ違います。

1)初めて感染した時(初感染初発型)

性行為をした2~10日後に突然38℃以上の熱が出て、陰部や股のあたりのリンパ節が腫れて、激しい痛みで排尿困難になることもあります。まれに点滴や入院が必要になることもあり、最もひどくなるタイプです。

2)感染した時は無症状で、数年後に初めて発症した時(非初感染初発型)

ピリピリ、かゆいなどの刺激で「陰部になにか違和感がある」と感じる程度で、水疱も数個できるくらいの症状です。そのような症状は初めてなので、カンジダと勘違いする患者さんもいます。

3)再発した時(再発型)

何度もくり返して起こる、比較的軽い症状です。

性器ヘルペスと診断されたのにパートナーは無症状な場合

クリニックで性器ヘルペスと診断されても、症状が出ていないパートナー以外にヘルペス感染の心当たりがなく、ショックを受けたり、不安になられる患者さんもいらっしゃいます。なぜパートナーは無症状なのでしょうか。この場合考えられるのは、先述したようにあなたが非初感染初発型か、再発型なのかもしれないということです。また、ヘルペスに感染したことがあるパートナーであれば、パートナーには症状がない時期でもあなたに感染することはあります。

初感染初発型以外は感染した時期や感染源の相手を特定するのは難しいため、今の状態を治すことに専念してほしいと思います。

性感染症というとピンポン感染のイメージがあると思いますが、何度もくり返す場合には再発予防法もちゃんとあるので安心してください。パートナーに伝えるべきかの判断は、ふたりの関係性を考えて、落ち着いてからでも遅くないと思います。

性器ヘルペスの治療法と予防法

治療薬には抗ヘルペスウイルス薬「バラシクロビル」があります。初めて感染した時は10日間、再発した時は5日間までが保険適用になります。1日2回飲み、多くの場合7~10日で症状は治ります。治療期間はセックスをひかえてもらいます。

塗り薬もありますが、飲み薬と併用しても早く治ることはありません。ただ、水疱や潰瘍で患部が酷く痛む時には、傷口を保護する目的で処方します。

そして早く治すポイントは、性器に違和感があったら早く婦人科を受診して治療をすることです。水疱や潰瘍を抑える効果があるので、ウイルスの活動が活発になり病変が広がる前に抑えられます。ひどくなる前に治すのが早期回復には大切です。これは口唇にできるヘルペスも同じです。
(※口唇用も性器用も、市販の内服薬はありません)

一度体内に入ったヘルペスウイルスは、完全に追い出すことはできません。根治が難しいので、なるべく再発させないことが重要になります。コンドームを装着したセックスは性器ヘルペスの再発率を下げるといわれています。パートナーに言いにくい人もいらっしゃるかもしれませんが、お互いの体を守る意味で、協力が大切なこともあります。

また、1年間に6回以上再発を繰り返す人は、「バラシクロビル」を毎日1錠飲みます。こうした場合には、再発抑制療法として保険適応になります。

入江先生より まとめ

妊娠中の胎児への影響としては、体内感染の心配はほとんどありません。ただ産道感染することがあるため、新生児への感染を避けるため、出産は帝王切開になります。こうした場合には事前に産婦人科医の指示があるので安心してください。
入江 琢也 先生(アイレディースクリニック新横浜 院長)1992年、香川医科大学卒業。慶應義塾大学病院、足利赤十字病院、けいゆう病院、シーズレディースクリニック恵比寿、渋谷文化村通りレディスクリニックを経て、2016年、アイレディースクリニック新横浜院長に。医学博士。中核病院での勤務経験をいかし、良質な医療をクリニックで提供してくれる。バルトリン腺膿瘍の辛い症状を早く確実に処置してくれる。またCO2レーザーによる子宮頸部レーザー治療も行う。女性誌などで信頼できる医師として紹介される