20代の生理不順の原因とは? ストレスとの関係と病気の可能性について

自分では思いあたるような原因がないのに生理不順になってしまった場合、どう対処したらいいかを玉川レディースクリニックの大久保和俊先生に教えていただきました。

生理不順や不正出血には、ストレスをはじめさまざまな原因が

 

生理不順とは、生理が24日以内と短い周期でくる頻発月経や、逆に生理周期が39日以上3カ月未満と間隔が長過ぎたり、3カ月以上生理がこない症状のことを指します。 また、通常1週間前後で終わる出血の期間が、10日以上ダラダラと続く場合も生理不順といえます。

 

生理不順の原因としてよく挙げられるのが、ストレスや生活習慣の乱れです。 また、更年期になると卵巣機能が低下し、排卵や月経を起こして子宮を妊娠のため整える卵胞ホルモンが乱れるため、生理の間隔が短くなったり長くなったりと乱れる場合もあります。

「特にストレスもなく、まだ更年期でもないのになぜ生理不順なのだろう……」と、思っている方もいるかもしれません。 そもそも生理は、人間が妊娠して子どもを出産するための生殖機能の一環です。体や脳が「今、この人に妊娠、出産は難しいだろう」と判断すると、勝手に排卵を止めてしまうこともあります。

 

そのわかりやすい例が、アスリートがダイエットを始めると、体が本能的に排卵を止めてしまうケースです。 20代~30代は就職、転職、転勤による引っ越し、結婚など、ライフステージが変わりやすい時期でもあります。環境や生活スタイルが変わったことでやむなく生活リズムが乱れたり、睡眠不足になったりすることも少なくありません。 ご自分ではそれほどストレスを感じてなくても、体が本能的に「妊娠は無理」と考え、それが生理不順につながっていることもあります。

 

なかには「生理がどの程度ずれると『不順』にあたるのかわからない」という方もいるでしょう。 たとえば20代で、初潮からほぼずっと生理が28日周期で来ている方が「今月は予定日から1週間ずれた……」と、心配するケースもありますが、こういった場合は「正常の範囲内」と考えてよいでしょう。

 

継続的に生理の間隔が長かったり短かったりと定まらない、または生理が来ない場合には注意が必要です。

 

また、自分では生理不順だと思っていた不定期の出血や、ちょっとおりものの量が増えたと思っていたら、実は「不正出血」だったというケースもあります。

 

不正出血の原因はさまざまなものが考えられますが、子宮頸がんなどといった大きな病気のサインのケースもあるため、「変な時期に出血している」「今まであまりなかったのに、茶色のおりものが増えた」などの変調を感じたら一度婦人科を受診し、検査を受けてみてください。

薬を服用することで排卵の指示をスムーズに

 

生理不順の治療法は、その原因と年齢や妊娠希望の有無などによって異なりますが、代表的なものは、薬を使ってホルモンバランスを整える「ホルモン療法」です。

脳下垂体から出る排卵の指示がなんらかの原因でおかしくなってしまい、その指示を受け取って排卵を行う卵巣が混乱を起こし、生理周期が乱れるというのが、生理不順のメカニズムです。

ホルモン療法は、薬を服用させることでその指示を正常化させていく方法です。

もう少しわかりやすく言うと、「排卵しなさい」という脳からの刺激を会社の上司とします。上司から矢継ぎ早にいろいろな指示を出されると混乱しますよね。

 

でも、その指示が1つずつで明確であれば、スムーズにこなすことができ、いずれは自分で「次、何やればいいんだっけ」と考える余裕がでてきます。

卵巣も同じで、薬で一時的に脳下垂体から出る指示を調整することで、いずれは正しい排卵のリズムを取り戻せるようになります。

生理不順の背後には妊娠しづらくなる病気が隠れていることも

 

生理不順は何らかの病気のサインという可能性も考えられます。 20代で生理不順の方に多くみられる病気が、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)です。

通常、卵巣の中にはいくつかの卵胞(複数の卵子を包んでいる膜)があり、そのうちで大きく成熟した卵胞が破けて排卵されます。

排卵されたことを知ると、子宮は、受精卵がやってきたときに着床しやすい環境を整えるため、内膜を厚くしていきます。

でも、受精していないとわかると、厚くしていた子宮の内膜を新しいものに変えるために剥がして排出し、それに伴い出血が生じます。これが生理です。

PCOSは、卵巣の中で卵胞がうまく育たないため、排卵が起こらず、卵巣内に卵胞がたまってしまう病気です。排卵しないため、子宮も一連の動きをしなくなり、生理がこなくなってしまいます。

近い将来妊娠を考えている場合にはできるだけ早めに婦人科を受診して、PCOSをはじめ、生理不順の原因となっている病気がないかチェックしておくのがいいでしょう。

基礎体温を測る、規則正しい生活を送ることが生理不順の予防に

 

生理不順かなと思ったら、まずは基礎体温をつけてみてください。基礎体温をつけることで、ご自分の低温期と高温期がどのようになっているかを知ることができ、排卵の有無などを確認することができます。

生理予定日を過ぎても次の生理が来ない場合、基礎体温を測って高温期がずっと続いているようであれば、妊娠していることもあります。婦人科の受診前に妊娠検査薬で確認してみるのもいいでしょう。

ストレスをためないことも大切です。自覚症状がなくても生活環境が変わった、職場が変わったという時は、できるだけ睡眠を充分にとり、リラックスできる時間を作るように心がけてください。

定期的にスポーツをしたり、体を動かすことも生理不順を防ぐことにつながります。

また、骨盤まわりの血行が悪くなると生理不順の引き金になってしまうこともあります。入浴時には毎回シャワーですませず、ぬるめの湯船にゆっくりつかって骨盤周りの血流を良くしておきましょう。

そして、バランスのとれた食事も大切です。
塩分や水分の摂りすぎに注意し、1日3回の食事をきちんと食べるように心がけてください。
食べ過ぎは肥満につながり、生理不順の原因にもなるので、適量にとどめておくことも忘れないでください。

大久保先生より まとめ

「生理が来なくてラクチン」と放っておかず、受診を
生理周期はある意味「個性」でもありますが、生理不順を「生理がないとラク」と放っておくと、病気が隠れていたり、将来、妊娠するのが難しくなってしまうこともあります。 「生理不順かも」と思っているなら、一度医療機関を受診して、ご自身の体をチェックしてみてください。
なかには内診に抵抗があり、受診をためらう方もいらっしゃると思います。当院では、生理不順での受診の場合、内診が必要な場合はまず説明をさせていただきますが、内診を希望されない方にはホルモン検査や基礎体温計測の指導を行い、必要に応じてお腹の上から超音波検査を行います。 生理不順のトラブルを長い間放っておいたり、ひとりで悩んだりせず、ぜひ医師に相談してみてください。
大久保 和俊 先生(玉川レディースクリニック 院長)日本産科婦人科学会 認定専門医。日本臨床細胞学会 認定細胞診専門医。日本癌治療学会日本婦人科腫瘍学会 認定婦人科腫瘍専門医。1990年3月昭和大学医学部卒業、同年4月昭和大学大学院医学科入学、1994年3月同大学院卒業後、1996年医学博士号を取得。昭和大学産科婦方科学教室入局、秦野赤十字病院、昭和大学病院、昭和大学藤が丘病院勤務をへて2007年玉川レディースクリニックを開院。先生の穏やかな人柄と、的確でわかりやすい説明に魅力を感じ、遠方から通う患者さんも多数。