性感染症とは? 知っておきたい予防と対策

性感染症は自覚せずにうつしてしまう場合も。ポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータの清水なほみ先生にお聞きしました

 

近年は性交経験の低年齢化も進み、男女ともに性感染症の患者数が増加傾向にあります。特に梅毒は都心部での増加が目立っています。性感染症は自覚症状があるとは限らないため、気づかずに人にうつしてしまうこともあります。ポートサイド女性総合クリニック〜ビバリータの清水なほみ院長先生に性感染症について詳しくお聞きしました。

 

 

 

性感染症(STD)にはいくつか種類があり、症状も違う

 

性感染症とは、性行為によって感染する病気の総称です。ごくまれに公共の温泉やプールの中、または更衣室で感染することがありますが、おおむね性行為による感染症となります。

 

【主な感染症の病名とその症状】

 

●クラミジア:女性に最も多い性感染症です。ほとんど無症状なので気づかない人も珍しくありません。水っぽいおりものが増えたり、臭いがきつくなることも。不正出血や性交後出血で気づくケースもあります。

 

淋菌感染症:感染後2日から7日程度で症状が出ます。腹痛や発熱、膿のようなおりものが主な症状です。出血があったり、おりものがいつもと違うと感じたら受診しましょう。クラミジアほどではありませんが、淋菌も無症状のケースがありますので注意が必要です。

 

トリコモナス腟炎:トリコモナス原虫の感染によって発症します。まれに、ぬれたタオルやトイレの便座などから感染することもあります。女性は外陰部に強いかゆみを感じたり、泡立つようなおりものが出たりします。

 

梅毒:初期の段階で外陰部に無痛性のできものができたりしますが、いつの間にか一度ひっこんでしまうので放置すると、全身に小さな斑点が多数できます。男女とも自覚症状がないことも多いので、血液検査で判明することがほとんどです。

 

HIV(ヒト免疫不全ウイルス):感染時はほぼ無症状なので、血液検査で判明することが多い病気です。HIVに感染した段階でしっかり治療すれば、何の問題もなく過ごせます。放置しておくと発症してしまうのがエイズ。ただ、以前はエイズにかかると死に至ると言われていましたが、今は良い治療薬がたくさん開発されているので、うまくコントロールすれば命にかかわる病気ではなくなっています。

 

性器ヘルペス:外陰部に水ぶくれや潰瘍などのできものができて、ひどくなると発熱もともないます。人によっては足の付け根のリンパが腫れたり、尿がしみたりといった症状が出ます。外陰部にできものができ、2~3日で治らない痛みやかゆみがあったら受診することをおすすめします。

 

尖圭コンジローマ:外陰部に鶏のとさかのようなイボができます。痛みやかゆみはともなわないことが多いので気づきにくいこともあります。普段見かけないできものやイボができていたら受診してください。

 

B型肝炎・C型肝炎:血液で感染する病気なので感染原因は性行為だけではありませんが、注意が必要です。感染してから症状が出るまでの期間が長いので、気づかない人も多い感染症の一つです。B型肝炎は発症すると初期は体がだるく、吐き気、頭痛、尿の色が濃くなるといった症状が出ます。C型肝炎は自覚症状が軽いのですが、放置すると肝硬変や肝臓がんに移行する可能性があります。

 

悲観しなくて大丈夫! 性感染症は薬で完治できるものが多い

 

病名だけ聞くと恐くなってしまう性感染症ですが、今は薬が本当に良くなってきているので、昔に比べれば治る確率は格段に上がっています。

クラミジア、淋菌、梅毒は有効な抗生剤があるので適切に治療すれば大部分は完治しますし、トリコモナスも抗原虫薬を服用すれば完治します。淋菌感染症に関しては薬が効かない耐性菌が増えているので、通常は注射や点滴で治します。

性器ヘルペスは抗ウイルス薬の内服か、軟膏の塗布で治療できます。軽い症状なら軟膏だけで大丈夫です。ただし、ヘルペスのウイルスはいったん体内に入り込むと神経に潜んでしまいます。ですから、感染を知らずに過ごしていた人が高齢になって免疫が下がってふと発症することもあります。他の性感染症が性的に活発な若い人が発症するケースが多いのに対し、性器ヘルペスは意外に年配の人にも多いのはそのためです。

尖圭コンジローマは軟膏の塗布か、イボをレーザーで焼くという外科的治療で治します。これから出てくるかもしれないイボを根本的に消滅させるには、塗り薬のほうが効果があると言われています。

 

HIVには抗ウイルス薬があります。万が一、エイズに移行しても治せる薬もあります。B型肝炎はワクチンで予防できますし、C型肝炎は抗ウイルス療法などで治療することができます。

 

性感染症も不妊の原因になることがある

 

治療法が進化しているとはいえ、性感染症にならないに越したことはありません。不妊の原因の一つでもあるので、妊娠を考えている人は気をつけてください。実際、20代で不妊の人を調べると、そのうち約3割はクラミジア抗体が陽性だったりします。

これは、クラミジア、淋菌感染症、トリコモナスといった性感染症による炎症が体内に広がることで卵管がつまってしまい、不妊の原因になってしまうためです。

 

尖圭コンジローマや性器ヘルペスは不妊の原因になるかと言えば、理論上はなりにくいのですが、性行為がしにくくなるという点があるので間接的には不妊の原因につながります。

 

パートナーが変わるごとに定期検診を受けるのがベター

 

性感染症の根本的な予防法としては、性行為のパートナーを限定することです。あるいは性的アクティビティが高くパートナーがよく変わる方などは、変わるごとに定期検査を受けるのがベターです。症状が特に出ていなくても婦人科を受診した方がいいでしょう。

加えて、コンドームを正しく使うことです。ピルを飲んでいるから大丈夫と思っている人がいるかもしれませんが、ピルで防げるのは妊娠のみです。性感染症を予防するためには、それにプラスしてコンドームが必要です。

 

また、ずっと同じパートナーだとしても、パートナーが感染している場合、自分だけが治療してもまた発症する恐れがあります。したがって、性感染症を発症したら必ずパートナーとともに治療を行うようにしてください。

 

清水先生より まとめ

性感染症はコンドームを着用し、出血の恐れのある性行為をしないといった基本的な知識があれば、予防できる病気です。また、発症したとしても早期発見、早期治療をすれば、悪化させずに治すことができます。できればパートナーが変わるたびに定期検査を行い、万が一感染していたら、パートナーと一緒に治療を受けるようにしてください。
清水なほみ 先生 2001年、広島大学医学部卒業。広島大学附属病院産婦人科、ウィミンズウェルネス銀座クリニックなどを経て2010年、横浜ポートサイドで「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業。ビバリータはサンスクリット語で「輝くような魅力的な女性」を意味する。薬に頼らないで病気にならないための「脳の動かし方」を指南する。 日本産科婦人科学会専門医、日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー。そのつどテーマを設けたワークショップを定期的に開催。詳しくはクリニック公式サイトで。