急にオシッコがしたくなり、我慢できなくなる「過活動膀胱」。頻尿の症状だけではない過活動膀胱について、泌尿器科専門医であるLUNA骨盤底トータルサポートクリニックの中村綾子先生にお聞きしました。
過活動膀胱ってどんな病気?
過活動膀胱とは、急に激しい尿意を感じ、我慢が難しくなる尿意切迫感の状態をいいます。尿意切迫感があるためにトイレが近くなる(頻尿)、排尿をコントロールできずに尿モレする(切迫性尿失禁)、睡眠中にトイレで起きてしまう(夜間頻尿)といった症状もともないます。
「頻尿だから過活動膀胱かも?」と早合点しそうですが、尿意切迫感がなければ、違う尿トラブルかもしれません。頻尿に加えて尿意切迫感もあれば過活動膀胱を疑ってよいでしょう。
≪過活動膀胱の条件≫
■急に尿がしたくなり我慢できない…尿意切迫感 ←(診断の必須条件)
■尿が我慢できず、トイレに間に合わなくて尿モレする…切迫性尿失禁
■1日8回以上、トイレに行く…頻尿
■睡眠中に1回以上トイレで起きる…夜間頻尿
過活動膀胱はOver Active Bladder(OAB)といって、患者数が多くなるのは中年以降です。10~20代の若い人にもいますが、40歳以上では9人に1人、70歳以上では3人に1人が過活動膀胱というデータもあり、意外に患者数の多い尿トラブルの一つです。男女ともにかかります。
これらの原因の一つもしくは、複数の原因が重なって排尿をつかさどる膀胱が自分の意に反して収縮し、尿がしたくなる状態が過活動膀胱です。
また、体が冷えたり、疲れがたまったり、コーヒーなどのカフェイン、アルコール、柑橘系ジュースの摂り過ぎで症状が酷くなることもあります。
過活動膀胱の診断と治療は?
■診断は?
診断には、問診、過活動膀胱症状質問票(下記参照)、尿検査、超音波検査などを行います。
過活動膀胱症状質問票は、過活動膀胱が疑われる場合にはほぼ確実に使用される質問票で、4つの質問に答えることで過活動膀胱の基準を満たすかをみて、さらにその症状を「軽症、中等症、重症」に分類することが可能です。このシートは自分の排尿状態を知るのにも役立ちます。
尿検査と超音波検査を行う理由は、膀胱がんや尿路結石、尿道炎、細菌性膀胱炎などの病気でも過活動膀胱に似た症状が出るので、それらが潜んでいないか調べるためです。
検査でほかの病気が見つからなければ、過活動膀胱と診断されます。
■治療は?
薬物療法、行動療法、磁気刺激療法、骨盤底筋トレーニングなどがあります。
薬による治療は、中等度から重症の人が対象です。
代表的な薬は、抗コリン薬とβ3刺激薬の2種類があります。いずれも根本的に治す薬ではないのですが、尿意切迫感や頻尿などの症状を改善します。人によっては喉の渇きや便秘などの副作用が出ることがあります。
行動療法は、膀胱トレーニングが代表的です。具体的には尿意を感じてもすぐにトイレにいかずに我慢することです。最初は数分間から開始し、徐々に我慢できる時間を増やしていきます。
磁気刺激療法は、磁気が出るイスに30分間座って、排尿をつかさどる自律神経に刺激を与え、正常な排尿システムへと導く治療法です。磁気イスをもっている医療機関が限られていますが、当クリニックでは軽症の人から重症の人まで幅広く行っています。
骨盤底筋トレーニングは骨盤底筋をきたえる体操で、代表的な方法としては、あおむけに寝て肛門、尿道、腟全体に力を入れてしめたりゆるめたりすることを交互に行うものがあります。骨盤底筋トレーニングは腹圧性尿失禁に対してよく行われていますが、過活動膀胱にも効果があることがわかっています。
予防は? 受診のタイミングは?
生理中の受診は、ご本人が嫌でなければ問題ありません。泌尿器科の受診に躊躇する人は、まず気軽に相談できる婦人科か内科の先生に悩みを話すとよいかもしれません。必要に応じて専門の泌尿器科を紹介してくれるでしょう。
中村先生より まとめ
過活動膀胱は、誰にも相談できず一人で悩みながら我慢しているうちに、生活の質(Quality of Life)が落ちるやっかいな疾患です。 常にトイレの心配があって映画館やバス旅行に行けなかった人、オムツやナプキンをしていた人も、治療で改善されています。
女医のいる泌尿器科も増えていて、検査も痛みがないので安心して受診してください。