ハードルは高くない? 意外に知らない婦人科検診の中身

婦人科検診は女性にとって大切な健康チェックですが、内診が「はずかしい」「痛いかも」などの理由でためらってしまう人がいるようです。婦人科検診について森田レディスクリニックの森田良子先生に詳しくお話を伺いました。

婦人科検診の内容は?どうして検査が必要なの?

 

  一般的に「婦人科検診」と呼ばれるものは、子宮頸がん検診と乳がん検診のことを指します。子宮の入り口に発生する子宮頸がんは20歳代から30歳代に増えてきており、乳がんは40歳代から50歳代に増加します。厚生労働省は、子宮頸がんは20歳以上、乳がんは40歳以上の人に対し、2年に1回の受診を推奨しています。

 

そのため、これらの検診は現在ではほとんどの市区町村が実施する公費検診に含まれていますし、勤め先の会社の職場健診や家族健診などで受けることもできます。少ない費用負担で受診できますが、なかには、公費検診の対象年齢ではない、または住んでいる地域では受けにくいなどの理由で、かかりつけの婦人科クリニックで、個人負担で受ける人も少なくありません

 

●婦人科検診の内容

 

【子宮頸がん検診】主に内診と細胞診で、超音波検査がオプションで選べる場合もあります。内診では、腟の中に指を入れてお腹を上から押さえ、子宮の大きさや可動性、痛みがないかどうか、また卵巣の腫れなどがないかを調べます。細胞診は、子宮頸部の細胞をブラシなどで軽くこすり取って顕微鏡で調べ、がん細胞の有無を調べます。

 

※子宮がんには、子宮頸がんのほかに、子宮内膜がん(子宮体部がん)もありますが、子宮体部がんは、がんになる細胞の体質が子宮頸部がんとは異なるため、通常は定期検診の対象にはなりません。

 

超音波検査では、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮奇形・子宮内膜ポリープ・子宮内膜症・卵巣嚢腫など、あわせてチェックできる病気は多いので、できれば検診時に超音波検査を一緒に受けておくことをおすすめします。

 

【乳がん検診】視触診、超音波、マンモグラフィがあります。乳腺が発達している30代までや、高濃度乳腺などでマンモグラフィでは診断が難しい人は超音波が適しています。一方、高齢の方や、超音波で気になる検査結果が出た場合にはマンモグラフィの検査をおすすめしています。公費検診では、40歳以上の方に、2年に1回のマンモグラフィを推奨しています。

 

検診はトータルヘルスケアの1つととらえよう

 

 最近は有名人が乳がんや子宮がんになったことを公表するケースが増え、早期発見のためには婦人科検診が重要であると以前より知られるようになってきました。しかし、婦人科の検診の際、内診には多少の痛みがあったりプライベードゾーンを診てもらうことになるため、特に若い女性のなかにはハードルが高いと感じる人も少なくありません。

当クリニックでは「女性のトータルヘルスケア」と位置づけ、婦人科系の病気に限らず、気になることは何でも相談していただくよう、予約制でさまざまな相談の受診を受け付けています。こうした婦人科クリニックは、各地域で増えてきていると思います。

内診に抵抗がある思春期を中心とした若い世代や、性交渉の経験がない人、痛みなどが恐いという人には、最初は話を伺ったり、おなかの上から超音波検査などをしています。さまざまな健康問題について話をするうちに医師と信頼関係が生まれ、そのうえで必要となれば安心して内診に臨めるでしょう。

 

女性なら、かかりつけ医を婦人科クリニックに

 

 思春期に始まって、妊娠、出産、更年期、老年期まで、それぞれの世代で起こるホルモンの変化により、女性の健康は大きな影響を受けます。それにより、体だけでなく心の問題もさまざまに起きてきます。人間ドックや市区町村、職場の婦人科検診は時間が限られるため、最小限の必要な検査は受けられますが、ひとりひとりの体調や精神的な心配事まではなかなか対応できません。そうしたことから、女性はじっくり話を聞いてくれる婦人科にかかりつけ医を見つけておくと心強いでしょう。

健康管理に気遣う女性のなかには、年に1回は企業検診などを受診して、そのほかに心配があればクリニックで検診をしたり、検診結果に疑問や問題があって受診する人もいます。早いうちからかかりつけ医と信頼関係を築いておくと、何かあった時にも適切な医療機関を紹介してもらえるでしょう。また、閉経した後も婦人科の病気にならないわけではありませんので、検診をおこたらないでいただきたいと思います。

森田先生より まとめ

婦人科検診をもっと気軽に受けるためには、若いうちから婦人科クリニックを受診して、何でも相談できる所だと知ってもらうことが大切です。自分だけでは心細いという方たちは、お母さんや友人と一緒に来院されることもあります。相談内容としては、生理に関することはもちろん、特にパートナーがいる人は性感染症や妊娠、避妊など、気になることが多いようです。
車には車検がありますが、人間の体は部品を取り替えるわけにはいきません。ですから年に1回や2年に1回の婦人科検診だけでなく、気になる症状があったら、迷わず受診するようにしていただきたいと思っています。
森田 良子 先生(森田レディスクリニック院長)東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、総合母子保健センター 愛育病院、国立国際医療センター、NTT東日本関東病院などを経て、森田レディスクリニックを開業。(最寄り駅 代官山、恵比寿)女性のためのトータルヘルスケアを目指しています。