自分で気づける唯一のがん『乳がん』

近年、著名人の闘病告白などが取り上げられ、関心が集まっている乳がん。不安を感じた若い女性も多いのではないでしょうか。実は乳がんは「早期検査」「早期発見」「早期治療」によって、治ることが多い病気です。そこで、乳がんの正しい知識を身につけて、乳房のセルフチェックをはじめ、自分の体の変化にまずは気づけるようになりましょう。

ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 島田 菜穂子 先生 筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院放射線科、東京逓信病院放射線科、アメリカ、フランス留学等を経て、2000年に認定NPO法人乳房健康研究会を発足しピンクリボン運動を日本で始動。2008年に「ピンクリボンブレストケアクリニック表参道」を開院。放射線科専門医、マンモグラフィ認定医(A判定)、日本乳癌学会乳腺専門医、日本がん検診診断学会認定医、産業医、認定スポーツドクターほか。

女性がかかるがん1位

出産すると、赤ちゃんのために乳汁を分泌するという大切な役割をもつ乳房。乳がんは、この乳房の中にある「乳腺」の組織にできる悪性腫瘍です。乳がんの症状は、しこり、痛み、血液が混じったような分泌物、乳首のただれ、皮膚のくぼみ、赤く腫れる、オレンジの皮のように毛穴が目立ってくる…など、実にさまざま。早期は自覚症状はほとんどありません。進行とともに、乳房のしこりを筆頭に、痛み、乳頭からの分泌物などが現れてきます。

◎どの年代がかかりやすいの?

乳がんは今や日本人女性の11人に1人がかかると言われています。罹患数は年々増加しており、この30年間で約4倍に。30代後半から増え始め、ピークは40代と60代。80代を超えると少しずつ減少しますが、長い年代にわたり多くの女性が罹患するのが特徴です。日本の女性がかかるがんで一番多く、死亡者の割合も増えています。

◎かかる人が増えているのはなぜ?

乳がんの発生の原因はまだ解明されていませんが、増加の原因は、食生活の欧米化や、女性の社会進出など女性のライフスタイルの変化が乳がん罹患リスクを上げていると言われています。初潮が早く閉経は遅くなり、妊娠・出産経験がない・少ない人が増えることで、女性ホルモンの分泌が多い生理がある年数が増えます。その結果、乳房が女性ホルモンの影響を受ける総量が、生涯にわたって増加します。このことが乳がんの発生と進行に影響を及ぼしている可能性があります。

発見の第一歩はセルフチェック!

また、乳がん患者の5〜10%は遺伝の影響があるとみられており、親族に乳がんの発生が多い場合はさらにリスクが上がります。

ただし、20代の若い女性や、出産経験が多い女性、また男性でもかかるケースもあり、「乳がんに絶対ならない人はいない」ということは知っておきましょう。

◎まずは「見て」「触れる」ことを習慣に

 乳がんは60%以上がセルフチェックによって発見されています。早期発見のために、セルフチェックはとても重要です。

セルフチェックといっても、難しいことをする必要はありません。バスタイムや、入浴後に保湿クリームを塗る時など、自分の胸を「見て」「軽く触れて」「軽く圧迫」してみましょう。異常を見つけるためには、まずは普段の自分の胸の状態を知っておかなければなりません。大事なのは習慣にすること。自分が一番簡単に続けられるやり方を見つけましょう。

セルフチェックの最中、しこりや皮膚のひきつれ、皮膚のへこみ、出血や異常な分泌物など、異変を感じた時は、必ず専門の病院(外科・乳腺外科)へ行き、検診ではなく、診察を受けましょう。

◎他人ごとと思わず検診を

自治体の乳がん検診は40歳から推奨されていますが、どの年代だから大丈夫ということはありません。特に乳がんの家族歴がある場合は通常より若い年代で乳がんにかかる可能性が高く、早めに、症状がない時から意識して検査を受けておくことをおすすめします。

自治体で行われている乳がん検診の検査は、通常、マンモグラフィで行います。ただ、マンモグラフィだけでは、特に閉経前の女性は乳腺の密度が濃いため(高濃度乳房)、しこりを見つけにくい場合もあります。もうひとつの超音波検査であれば、マンモグラフィ検査で見つけにくい病変を写し出すことができます。自分の乳房の状態(乳腺濃度)や家族歴などによって、必要な検査や検診を始めるべき時期が異なることも理解しておくことが大切です。

乳がんの治療に関する考え方や手術は年々、進化しており、患者さんの負担も少なくなってきています。早期に発見して治療を始めれば、多くの場合、治癒も可能です。他人ごとと思わずきちんと向きあい、自分の乳房に関心をもって慈しんであげましょう。

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