大学生の皆さんへ

私たちと同じ後悔を避けられるように、知っておいてほしいことがあります。一般社団法人婦人科検診促進協会理事長・鈴木美奈子から、大学生の皆さんに送るメッセージ。

一般社団法人 婦人科検診促進協会 理事長 鈴木 美奈子 2017年株式会社ジネコ入社。ユーザーから寄せられた多様な悩みを全国の婦人科ドクターに取材する中で、女性がより豊かに過ごすためには、女性自身が自分の体にもっと向きあい、また女性の健康について社会の理解をより深めるべきと痛感し、その思いで、2021年1月に一般社団法人 婦人科検診促進協会の理事長に就任。女性の「後悔」が少しでもなくなるように、若い世代への啓発活動を開始。

自分の20代を振り返って今、伝えたいこと

皆さんは今、どんなことに興味がありますか? 恋に、仕事に、旅行に…。かつての私も頭の中は目の前のことでいっぱいで、遠い将来のことを考えた記憶はありませんでした。そのうち誰かと結婚して当たり前に妊娠するんだろうな、くらいに思っていました。

当時は20代前半での結婚が普通とされた時代でした。

20代は、自由を得て、結婚して、仕事も頑張る、30代になると普通に幸せな家庭をもっている。でもそれは心身ともに健康であることが前提で描いた未来。

現実には、子どもをつくろうと思ったら、妊娠できない、しない。あるいはそこで初めて「もう子どもがもてないかもしれない」と気づき、後悔する…私たちの世代は、そういうケースも目の当たりにしてきました。

妊活って、大変?

私たちがとった妊活についてのアンケート結果を見てください。

皆さんが思う以上に、妊活というものは、時間やお金がかかることにお気づきになりましたか?

これは、全員にあてはまることではありません。ですが、現在では約5・5組に1組のカップルが妊活をしており、約16人に1人が体外受精で生まれていると言われています。

私たち世代の体験を経て、こうしたアンケートを見て、今、皆さんに知っておいてほしいことは、「生理があるからといって必ずしも妊娠できるわけではない」ということ。不妊治療についての取材先で、「もうちょっと早く来てくれたら」という医師の言葉を、何度も耳にしてきました。では若い頃の私たちはなぜ早くクリニックに行かなかったのかなと自問すると、「知らなかった」ということが、すべてなんです。

妊娠・出産しないとダメだよと言っているわけではありません。自分の人生をどう生きるのかを選択するための知識をもっていてほしいの
です。

自分自身の体について知り、向きあうことが大切

現在、女性の体や妊娠・出産に関する技術は、大幅に進歩しています。なかでも2010年代頃から日本でも一般的になってきた「AMH検査」(※ )は、女性が自分の体の状態を知る手立てとして非常に有用で、皆さんにぜひ知っておいてほしいもののひとつです。

「卵子のもととなる卵胞は、生まれた時にはすでに一生分の生産が終わっていて、そのあとは減る一方」。この事実をご存じでしたか? 卵胞の減るスピードは人それぞれで、若い人でも卵巣年齢が低い方もいるのです。その場合、たとえ生理があったとしても妊娠しにくくなります。

私は、こういうことを知っておくことは、これからのライフプランを立てるうえで、非常に重要なことだと考えています。なぜなら、たとえば早発卵巣不全をおこす方もいます。AMHの検査で、その兆候がわかった場合、今の医学をもってすれば、卵子凍結という選択肢もあります。

つまり、知っているということは、未来の選択肢を増やすことにつながるのです。かつて、私たちの世代が、知らないがゆえにのちに感じた後悔は、知識によって減らすことができたのです。

私たちは、そうした現状の改善を目指しています。女性の体に関する正しい情報や具体的なサポートと、それらを必要とする女性とをつなぐ存在になれたらと願っています。

AMH検査って何?

AMH(アンチ・ミューラリアン・ホルモン※)検査は、年齢や外見の若さからはわからない、自分の「卵巣予備能」(=卵巣内に残っている卵胞量)の目安を知るための血液検査です。女性の卵子のもととなる「卵胞(原始卵胞)」は、生まれた時にはすでに一生分の生産が終わっていて、そのあとは減る一方。男性の精子と違い、ストックがなくなってしまえば、二度と補充はききません。ですが、AMH値を調べることで、今現在の卵巣予備能を把握することができるほか、自分の妊娠のタイムリミットについてもある程度予測がつくようになるため、ライフプランを組み立てる際の参考になります。

※AMH…卵胞が育つ時に分泌されるホルモン

電子書籍のダウンロードはコチラ↓