プレコンセプションケアのこと

「プレコンセプションケア」という言葉を知っていますか?近年、広まってきているこの考え方、なぜ若い女性にとって大切なのでしょうか。「うめだファティリティークリニック」の山下能毅先生に教えていただきました

うめだファティリティークリニック 山下 能毅 先生 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、当クリニック副院長に就任。2017年4月、院長に。

「赤ちゃんが欲しい」と思った時のために

 

現代女性は社会で活躍することが多くなった一方、結婚や妊娠・出産する時期は先延ばしになりがちです。そのためホルモンバランスが乱れやすく、女性特有の病気や生活習慣病に悩む人も増えています。

女性が妊娠できる能力は35歳から少しずつ低くなり、それ以降は妊娠・出産に関するリスクが高くなります。将来、「赤ちゃんが欲しい」と思ってから準備を始めても、間に合わないこともあるのです。今すぐ妊娠を考えていなくても、妊娠・出産の正しい知識をもち、将来に備えることが大切です。「プレコンセプションケア(Preconception care)」とは、将来の妊娠(コンセプション)を考えて女性とそのパートナーが自分たちの生活や健康に向き合うこと。また、妊娠を希望する女性だけでなく、妊娠が可能な年齢の女性すべてに必要なケアです。

実はやせすぎかも⁉適正な体重を知ろう

 

プレコンセプションケアは食事、運動、睡眠をはじめとするトータルケアを提案しています。なかでも皆さんにお伝えしたいのは、「適正な体重を維持する」「健康的な生活をする」ことです。

たとえば、20代女性の23・1%は朝食を抜いています。20代女性に必要な1日のエネルギー量は1950kcalですが、実際は1706kcalしか摂れていません。また、メディアの影響でモデル体型に憧れる「やせ型」の女性も増えています。特に日本の女性は適正な体重であるにもかかわらず、「自分は太っている」と誤った自己認識をもっていることが多く、急激なダイエットなどで将来の不妊リスクになる無月経を引き起こすこともあります。まずは「BMI値」を出して自分の体型を知り、適正なBMIの数値を目指すことから始めましょう。

座りっぱなしは危険!よく食べよく寝て運動も

 

健康的な生活は、将来の妊娠・出産のためにはもちろん、今の美しさや健康にとっても嬉しいことがいっぱいです。

◎食事

毎日3食きちんと食べて、できればビタミンD(魚、卵、きのこ類など)やミネラル(肉や魚、野菜、海藻など)を含む食材を多く摂るのがおすすめ。

◎睡眠

睡眠時間が不規則になると、脳からのメラトニン(美や健康にもかかわるホルモン)の分泌が悪くなるので、夜0時までには寝て、朝は決まった時間に起きるようにして「良質な睡眠」を心がけてください。

◎運動

「おうち時間」が増えていることもあり、運動不足の方も多いでしょう。座りっぱなしは下半身の血流を悪くし、月経のリズムや質にも影響します。意識して階段を使ったり、こまめに立ったり座ったりするだけでも、下半身の血流を良くする効果はあります。定期的にBMIをチェックし、数値が上がっても食事を抜かず、運動でコントロールするようにしましょう。

今こそ向き合いたい自分の健康と将来のこと

 

今は妊娠・出産についてピンとこなくても、今から自分の健康と将来に向き合うことは、未来の幸せにつながります。たとえば、将来、子どもは何人欲しいですか? 妊娠に最適な年齢は20代〜30代前半ですから、この期間の中で子どもの人数やキャリアのことを考えておくと、その時がきてもスムーズに希望を叶えやすくなります。すでにパートナーがいる方も、男性の約半数に不妊原因がありますから、今から二人で取り組まれるといいと思います。

また、P M S、月経痛、月経不順に一人で悩んでいる女性は少なくありません。月経トラブルは生活の質を低下させるだけでなく、将来の不妊にかかわる病気が隠れていることもあります。かかりつけの婦人科医をもち、不調を感じたら我慢せずに相談してください。自分の体のリズムを知り、うまくつきあうことも大事なプレコンセプションケアの一つです。

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