かゆい、におう、量が多い。気になるデリケートゾーンの悩み

デリケートゾーンに対応するケア用品や市販薬が充実する一方、使い方を間違ってトラブルを招くケースも増えています。デリケートゾーンのトラブルとライフスタイルの関連について、広尾レディースの宗田聡先生に教えていただきました。

 

宗田 聡 先生(広尾レディース 院長)

筑波大学卒業後、同大産婦人科にて研修。平成9年より筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員として留学後、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)、パークサイド広尾レディスクリニック院長を経て、平成24年 広尾レディース院長に就任。現在、茨城県立医療大学客員教授。不妊、うつに関する著書も多数。著書に『31歳からの子宮の教科書』など多数。

考えられる原因はなに?

デリケートゾーンの不快さで最も多いのは「かゆい、おりものがにおう、量が多い」の3つです。そして考えられるおもな原因は「セックスで菌が外部から侵入しておこる性感染症」と「自分の体にある菌が増えて炎症をおこすもの」とあり、圧倒的に多いのはどちらだと思いますか。それは後者です。ネット検索で性感染症と思い込む人も多いのですが、デリケートゾーンのトラブルは自分の菌による膣炎やカンジダ膣炎、あるいはその一歩手前の不快な現象(グレーゾーン)が多いことを知ってください。

代表的なカンジダ膣炎の原因は自分の膣や腸、口の中に常在しているカンジダという真菌でふだんはおとなしいのですが、ある状況をきっかけに増えてデリケートゾーンに不快さをもたらします。

自分でトラブルを招いて治りにくくしている

カンジダ菌を増やしてしまう“ある状況”とは、体の免疫力が落ちたり、デリケートゾーンが「高温多湿」の状況になった時です。以前は風邪で抗生物質を飲んだ時や仕事が忙しくて寝不足が続き、体の免疫力が落ちた時にトラブルをおこすことがほとんどでした。ところがここ数年は「おりものシート」を年中使い、締めつけの強いジーンズやパンツを履くライフスタイルが原因となってトラブルをおこすケースが増えています。

 

想像してみてください。生理の日以外も化学繊維のおりものシートをあて、ジーンズで股を強く締めつけ、1日中椅子に座ってパソコン作業をする姿を…。デリケートゾーンはもの凄く蒸れて熱くなってしまい、しかも化学繊維の細かい繊維が皮膚を刺激するので非常にかゆみが増します。さらに悪いことに、薬だけで治そうとするとライフスタイルが変わらないので、いつまでもトラブルは繰り変えされ、おりものシートと薬が手放せない悪循環に陥っているのです。つまりカンジダ膣炎やグレーゾーンのトラブルは、患者さん自身が招いて治りにくくしていることが多いのです。

根本的な治療は、このようなトラブルを招くライフスタイルを改善して、体のコンディションを良くすること。そこに早く気づいて頂きたいですね。そして症状がはげしいときは薬も使いますが、まずは普段からデリケートゾーンの通気を良くして、蒸れない環境を作っておきましょう。日頃からおりものシートやジーンズなどズボン系は控え、高温多湿の状況やシートの刺激を減らすだけで、繰り返される症状や不快さは軽減されます。またデリケートゾーンを洗う時も流水だけで十分です。皮膚刺激のある石鹸の使い過ぎ等のトラブル習慣がないかも、次のコラムでチェックしてください。

コラム~トラブルを繰り返すライフスタイル

☑ジーンズやパンツのことが多い

☑おりものシートを使っている

☑下着は化学繊維で通気性が悪い

☑冷え性で下着を重ねて着ていることが多い

☑家の中ではスエットパンツ

☑お風呂でデリケートゾーンを石鹸で洗う

☑セックスの前後はシャワーを浴びない

☑睡眠時間が少ない

☑生活が不規則で疲れやすい、疲れが溜まっている

☑食事が偏っていてビタミンやミネラルが不足している

宗田先生の「改善」アドバイス

1.トラブルがある時はスカートが望ましいですが、パンツにこだわるなら締めつけないデザインや、通気性の良い素材(麻など)に変える工夫をしましょう。

2.おりものをカバーする役目は、本来はおりものシートでなく下着です。下着の素材も吸収や通気が悪い化学繊維から、吸収・通気性の良い綿などに変えてください。そしておりものシートは状況に合わせて一時的に使いましょう。

3.デリケートゾーンは石鹸を使わなくても流水(シャワー)で雑菌を洗い流せます。洗いすぎると膣内の環境バランスが崩れ、トラブルをおこしやすくなるので気をつけてください。

4.疲れた体のコンディションを回復するのは十分な睡眠や栄養ある食事です。1日のライフスタイルを改善して、再発を防ぎましょう。

市販薬の使い方、注意することは?

デリケートゾーンに対応する市販薬がドラッグストアで買えて便利になったといえます。でも、医師のもとで使うには安心ですが、自己判断で膣剤や軟膏を使わないように気をつけてください。手持ちの以前もらった薬を自己判断で使用すると、原因菌が違えば症状を余計に悪化させるからです。実際にあるケースで、症状がひどくなって翌日受診されても、前日に自己挿入した薬剤が膣内に残っているため検査が正確に出せないことがあります。

体の異常をネット検索する前に

デリケートゾーンを含めて異常があると、受診前にネット検索するのが当たり前になりました。でも医師から見ると、不安を煽る情報に振り回されているように感じます。ネット上の健康情報は玉石混淆。良いものがある一方、素人が書いたものや、商品を売るために断片的な情報を誇張するものも多いのです。正しい情報を選ぶためには、体の基本知識を備えることが大事です。例えばデリケートゾーンは唇と似た構造(粘膜)で傷つきやすいので手で優しく洗う、菌は体に常在しているものだから薬で殺すことはできない等、体の基本知識があると間違った情報に振り回されなくてすみます。学業や仕事と同じように、自分の体のことを学んで頂きたい。医師の書いた本や、信頼ある発信元のネット情報を参考書としておすすめします。

自分とパートナーのために行動!デリケートゾーンのケア

セックスで感染する病原「ヒトパピローマウイルス」は、将来的にがんの原因になることを知ってください。これらは感染しても数年間は症状がなく、何年間後に悪い状態で見つかります。でも無症状でも細胞検査をすればわかりますので、20歳になったら1年に1回は子宮けいがん検査でヒトパピローマウイルスの感染を調べましょう。それと合わせて、パートナーと別れて新しいパートナーができるまでの間に、婦人科でクラミジアなどの性感染症も調べるのが望ましいと思います。定期的に自分が性感染症をもっていないかどうか調べておくことは、自分のためや新しいパートナーへのマナーだと考えて行動しませんか。