近年、乳がんや子宮がんなど、女性の病気にまつわる公表を行う芸能人が増え、検診を受ける女性が増えています。
そして2016年、フリーアナウンサーの小林麻央さんが進行性の「乳がん」を患っていることを公表したのを機に、乳がんへの関心が高まっています。
乳がんの原因や種類、対策について、乳腺専門クリニックピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田菜穂子院長にうかがいました。
年々高まる「乳がん」への関心
2015年、タレントの北斗晶さんが乳がんを公表したことをきっかけに、定期検診を受けていた方からの問い合わせが一気に増えました。
そして、昨年2016年の小林麻央さんの乳がんの公表で30代でも乳がんにかかる可能性がある、ということが広く知られました。
その前には、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが乳がんになっていない健康な乳房を予防的に切除したことが話題になり、乳がん遺伝子の存在が乳がん発生のリスクを上げることがニュースで取り上げられました。それ以降、家族の病歴を見て心配になった方の問い合わせが増えて、遺伝子検査のへの関心も高まっています。
乳がんの罹患が増えるのは30代半ばから。働き盛りがピークに
このように若い年代で罹患年齢がピークを迎えるのは日本や中国、韓国などのアジア諸国で似た傾向があり、閉経後に乳がんが増える欧米とは異なりました。 しかし最近では、閉経後の60代にもう一度ピークを迎えるという年齢分布に変化しつつあり、欧米型の食生活や生活環境への変化が起因しているともいわれています。
日本で乳がんにかかる方は11人にひとり。年間約9万人が罹患し、1万2千人が乳がんで亡くなっており、これが年々増え続けています。
乳がん増加の原因に晩婚化や少子化など女性の社会進出によるライフスタイルや女性ホルモン環境の変化があると考えられています。女性のライフスタイルの変化は自身の女性ホルモン環境の変化のみならず、低用量ピルや不妊治療、更年期のホルモン補充療法など、現代社会の中で女性がより快適に生きるための治療が広く行われることになったことも、皮肉にも乳がん増加の一因になっているようです。
女性ホルモン剤とうまく付き合うことは悪いことでは決してありませんが、乳がんに繋がることを知らずに使うと乳がんを成長させる危険もあります。女性ホルモンを用いる治療を行う前に必ず乳がん検診を行うこと、もちろん使用中も検診を継続すること。女性ホルモンの働きをよく知り、お薬とも賢く付き合うことが大事です。
乳がんは種類も薬もさまざま
ほかの臓器のがんと違い、同じ乳がんといってもさまざまな性質があります。がんの性質、閉経前か後か、そして進行度によっても手術方法も効果のある薬も違います。
そのため、ネットなどの知識や体験談などが自分にも当てはまるとは限らないのです。
その分「個別化治療」といって、それぞれ異なる乳がんの性質に対して効果のある治療はこれというように、治療法や薬の個別化(テーラーメイド化)が確立しているのも乳がんの特徴です。ただ、どのタイプであっても発見が早く治療の開始が早ければ助かる病気です。そのためには自覚症状などで気づく前から定期的に検診に足を運び、異常を感じたときは、迷わず乳腺科など医療機関へ受診することが大切です。
まず自分の乳房に関心をもって検診をスタートする、積極的な行動が大切なのです。
年に一度の「乳がん検診」をあたりまえに
家族歴や女性ホルモン剤の服用、閉経後の肥満など乳がんリスクを上げる原因はいくつかわかっていますが、乳がん発生そのものの原因はまだ解明されていません。したがって、確実に予防する方法はまだありません。
禁煙やバランスの良い食事を心がけたり運動習慣をつけることは、リスクを減らすことには役立ちますが、確実に予防をすることにはなりません。
現在は乳がんにならないための確実な予防法(一次予防)はありませんが、なっても早く見つけて治すこと(二次予防)が最善の予防方法です。そのためには自覚症状がないうちから、検診を受け、そして続けること。とはいっても、一年に一回の検診をコンスタントに受けている人は現在、日本では全体の40%。欧米の90%という状況と比べてずいぶん低い数値です。
毎日歯を磨くことと同じくらい、一年に一回の乳がん検診は「受けないと恥ずかしい」というくらい、女性にとって当たり前の習慣になってほしいです。