10 代・ 20 代から 知っておきたい子宮頸がんの予防

近年、20代の女性に増えている「子宮頸がん」。初期は無症状のことが多く、自分で気づくのが難しいため、定期的な検診が欠かせません。いまから子宮頸がんに関する知識を高め、命を守る予防につなげていきましょう。

プリュームレディース クリニック松本 由紀子 先生 2001年浜松医科大学医学部卒業後、岡山大学医学部産科婦人科学教室入局。2007年英ウィメンズクリニック勤務を経て、2021年開業。日本屈指の不妊専門施設で延べ10万人以上の不妊治療に携わってきた経験と、自らの不妊治療の体験を生かした診療で、女性が生涯にわたり輝き続けられるサポートを目指している。

若い女性に増えている子宮頸がんとは?

 子宮頸がんは、子宮の入り口(子宮頸部)に発生しやすいがんです。一生のうちでおよそ73人に1人が子宮頸がんと診断され、毎年約3000人が亡くなっています。これまで40歳以上の女性に発症リスクが高まるとされていましたが、最近は20代の若い女性が発症し、死亡するケースも増えています。
 女性がかかるほかの種類のがんに比べ、死亡率はそれほど高くありませんが、年齢別では20〜40代でかかる人が多くなっています。この病気の怖いところは、就職、結婚、出産、子育てなど、女性の人生が展開する重要な時期に、リスクがあるということです。

初期の段階は無症状。だから気づきにくい

子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが原因とされ、おもに性交渉で感染します。近年はセクシャルデビュー(性交開始)の年齢が低下して、若い女性の発症が増えていると考えられます。

HPVには100以上の種類があり、ほとんどの女性が一生に一度は感染するというありふれたウイルスです。多くは感染しても免疫力で排除できますが、ごく一部のウイルスは、長くとどまってがん化することがあります。感染してから子宮頸がんに進行するまで5〜10年かかり、初期は無症状であることがほとんどのため、自分では気づきにくいのです。

定期的に検診を受け早期発見で命を守ろう!

子宮頸がんの予防は「HPVワクチンの接種」と「定期検診」を組み合わせて考えることが大切です。定期検診によって早い段階で発見できれば、体への負担が少ない方法で治療し、将来、妊娠や出産を希望することもできます。

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因とされるウイルスに対して感染の予防効果が期待できますが、予防効果は100%ではありません。接種してもしなくても、1年に1〜2回は検診を受けることが、命を守ることにつながります。

セクシャルデビューしたら婦人科デビューしよう!

検診の対象は20歳以上で性交経験のある女性です。経験がない人は子宮頸がんにかかる可能性は低く、そもそも内診できません。セクシャルデビューをしたら、かかりつけの婦人科をつくり、年1〜2回は定期検診を受けるようにしましょう。

HPVはウイルスなので、コンドームをつけても感染予防にはなりません。また、性交回数の多い少ないは関係なく、相手に問題があるということでもありません。たまたまがん化するウイルスに感染してしまうことが問題ですので、1回でも性交経験がある人は必ず検診を受けるようにしてください。

検診はどんなことをするの?

検査は1~2分程度。緊張せずリラックスして受けましょう。

問診 

直近の月経開始日、性交経験、妊娠経験、月経以外の出血などについてお話を聞きます。

視診

クスコ(腟鏡)とよばれる器具で子宮頸部を確認。

内診 

腟の中に指を入れて子宮や卵巣の大きさを確認します。

細胞診 

腟の中に小さなブラシを入れて細胞をこすり採ります。多少出血することがありますが、検査当日中にはおさまります。痛みを感じない人がほとんどですが、個人差があります

結果 

結果がわかるのはおよそ2週間後。「要精密検査」の場合は、必ず次の検査を受けましょう。問題がなくても1年に1~2回は定期検査を受けましょう。

検診は生理周期に関係なく受けることができます。出血が気になる人は生理中を避けるといいでしょう。

かかったらどうなるの?

【初期症状は?】

初期はほとんど自覚症状なし。異常なおりものや
不正出血、下腹部に痛みを感じたら早めに受診を。

【治療で治る? 将来への影響は?】

初期であれば子宮の一部を切り取る手術で治療できます。手術する場所により、子宮頸部が短くなったり、狭くなったりして、妊娠しにくくなることもあります。

先生からのメッセージ

子宮頸がんにかかった人のなかには、小さな子どもを残して、若くして亡くなる方もいます。先送りにせず、「もし数年後、自分が子宮頸がんになったら…」とイメージしてください。健康のありがたさや予防の大切さに気づいていただけるかもしれません。