自分で判断 するために正しく知りたい、ワクチンのこと

子宮頸がん予防ワクチンの積極的接種勧奨の再開が決定しました。若い女性の間でも大学生が無料接種を求める署名活動をするなど、関心をもつ人が増えています。打つ・打たないを自分自身で判断できるようになるためには、正しい知識をもつことが必要です。産科婦人科舘出張 佐藤病院の佐藤雄一先生に、子宮頸がん予防ワクチンについて教えていただきました。

産科婦人科舘出張 佐藤病院 佐藤 雄一 先生 医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクターといった多くの専門医資格をもつ。当院のほか、高崎ARTクリニック、フィーカ レディースクリニック、子宮頸がん撲滅を目指す「NPO法人ラサーナ」の理事も兼任。

日本中で騒がれたHPVワクチン

子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)が小学6年生〜高校1年生相当の女子を対象に定期予防接種(公費負担)になったのは2013年のこと。ところが、接種が始まって間もなく、テレビやネットなどで副反応のニュースが大きく報道され、国内全体で大騒ぎになりました。これを受けて、国は「ワクチンを打ちましょう」という方針から「積極的に打ちましょうという方針をやめました」と方向転換します。定期予防接種が始まってわずか2カ月あまりのできごとでした。
 しかしその後、WHO(世界保健機関)や世界各国でHPVワクチンの効果や安全性を示すデータが発表され、日本でも再び接種を推奨する流れになり、2021年11月、積極的な接種勧奨の再開が発表されました。接種の機会を逃した人へのキャッチアップ接種も検討されているので、今後の接種拡大による予防効果が期待されます。

HPVワクチンの種類

100%ではないけれど、高い確率で予防できる!

2価ワクチン

●もっともがんになりやすいHPV16型と18型などの感染を予防。

●予防効果は60~70%。

●小6~高1相当の女子は公費負担で接種できる。

●対象の年齢以外は自己負担で約4万8000円。

4価ワクチン

●2価に加えて尖圭コンジローマの原因となる6型や11型などの感染も予防。

●予防効果は60~70%。

●小6~高1相当の女子は公費負担で接種できる。

●対象の年齢以外は自己負担で約5万5000円。

9価ワクチン

●4価に加えて腟や外陰、肛門、中咽頭などのがんも予防。(31型、33型、45型、52型、58型)

●予防効果は約90%。

●公費負担はなし。自己負担で平均10万円ほど。

自己負担の場合の費用は目安です。金額は施設により異なります。

自分のために、本気のアクションを

子宮頸がんは、基本的には、初期に見つかれば命にかかわるものではありません。しかし症状がないまま進行することが多く、本当に怖いがんだと感じています。

がんのなかでも原因がはっきりしていて、予防法がわかっているのも子宮頸がんです。情報を正しく読み取り、ワクチンを打つ・打たないを自分で選ぶことが大切です。若い世代の女性にも、本気で自分の体を守るアクションを自分で起こしてほしいと願っています。

HPVワクチンは何回打ちますか?

基本は約6カ月かけて3回接種します。これは、最近よく耳にするブースター(追加免疫)接種という方法です。

副反応の症状や確率は?

当日〜数日後に回復する軽度な副反応は発熱や接種部位の痛み・腫れなど。副反応ではありませんが、注射の恐怖や興奮による失神などを起こす人もいます。

重篤な副反応は呼吸困難などを症状とするアナフィラキシーショック、手足の力が入りにくくなるギラン・バレー症候群、頭痛や嘔吐、意識低下を起こす急性散在性脳脊髄炎などがあり、確率的には接種1万人あたり約5人と厚労省から発表されています。

万一、接種によって重篤な健康被害が出た場合は、各自治体や医療施設で補償や治療を受けられることになっています。

2価または4価ワクチンをすでに接種済みの人でも、新しい9価ワクチンを打つべきですか?

予防する型が多いので良さそうに感じるかもしれませんが、9価ワクチンの効果も100%ではありません。追加のワクチン接種をするよりも、すでにワクチンを打っている人であっても定期的に子宮がん検診を受けることが大切です。

男性もワクチンを打ったほうがいいですか?

男性特有の陰茎がんや喉頭がんなどの予防ができ、女性への感染も防げます。承認されているのは2価と4価。残念ながら現在は、年代を問わず男性は自己負担になります。

新型コロナウイルスのワクチンと同時に打てますか?

原則として、新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは同時接種できません。2週間、間隔をあければ大丈夫です。

先生からのメッセージ

HPVワクチンの効果で、子宮頸がんはすでに「稀少がん」の仲間入り、という国もあります。日本でも、ワクチン接種と定期的な検診で、子宮頸がんで命を落とす人がいなくなることを願っています。