〜これから社会人になるあなたへ〜私たちの身体と ジェンダー

お茶の水女子大学 小林 誠 先生 お茶の水女子大学教授。専門は平和研究、政治学、国際関係学。同学グローバルリーダーシップ研究所の所長として、ブリヂストンと連携した「未来起点ゼミ」やリーダーシップについて考える「ソフトスキル研修」など、女性活躍支援の研究や事業推進に取り組んでいる。

「デートの食事のお金は男性が負担すべきだ」。これに「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」と答えた日本人は、男性では37%だったのに、女性では22%でした。「共働きでも男性は家庭より仕事を優先するべきだ」では男性30%、女性24%でした(内閣府の2021年度の性別による無意識の思い込みに関する調査)。これを見る限り、男たちは肩に力が入っているようです。男性か女性かで社会的な役割への期待が異なっていることを、生物学的なセックスと区別してジェンダーと呼ぶことがあります。セックスとジェンダーを区別しないで考えると、「女性は『産み、育てる性』なので家事・育児に向いているが、男性は『戦う性』なので労働に向いている」といった決めつけ型の言い方に陥ってしまいます。性器や筋肉が分業をすべて決めるわけでもないのに。

おもしろいのは、ジェンダー観が男性と女性で違うということです。女性は、社会進出を阻む壁にぶつかる時に、男性のもつ古いジェンダー観に挑戦することがあります。「女の出る幕じゃない!」と言われた時に、「だからだめなのよ!」と言い返す場面です。しかし女性が弱者であるために、既存の男性優位のジェンダー観にこびへつらう「共犯的」な立場を取ってしまうことがあります。女性リーダーがこれからは必要だと言いながら、「コミュニケーションにたけた気配り上手な女性型のしなやかなリーダーを育てましょう」と唱えたりします。古い男性型リーダーの補佐をするつもりなのでしょうか。

既存のジェンダー観をすべて無視して新しくジェンダーを構想することはできません。でも古いジェンダー観から大胆に抜け出ることが美しいことが多いのも確かです。私は共犯しない。そうつぶやいてみてください。