ピルで子宮内膜症改善!知られざる効果や服用法

 女性特有の病気である子宮内膜症。不妊につながる恐れもあり、治療が難しく、治っても再発を繰り返すといった話も耳にします。

しかし、経口避妊薬であるピルが子宮内膜症に効果を発揮するといいます。“薬” や “治療” のイメージがないピルがどのようなしくみで効果を発揮するのか、ほかの療法との違いなど、ピルと子宮内膜症との関係について、しのざきクリニックの篠崎百合子院長にお聞きしました。

痛みのほか、不妊症の原因にもなる子宮内膜症

日本では、子宮内膜症と診断されて治療している女性は30代前半がもっとも多く、その割合は約150人に1人。総受療者数は12万8000人ほどで、子宮内膜症を抱えている女性は実際には100万人とも200万人ともいわれています。

子宮内膜症が近年増加してきた背景には、晩婚化・未婚化など、女性のライフスタイルの著しい変化による月経回数の増加が誘因と考えられています。 
子宮内膜症は本来、子宮内腔のみに存在する子宮内膜組織が、それ以外の組織に生着してしまう疾患。発生部位としては骨盤内の腹膜と卵巣に多く、月経のたびに病変部に出血を繰り返します。

もっともつらい症状が癒着などによる生理痛や性交痛で、なかには立っていられないほどの激痛を引き起こす人も。また、子宮内膜症は不妊症の原因になったり、治療をしても再発を繰り返しやすいなど、女性にとっては非常にやっかいな病気だといえます。

そんな仕事や結婚、子育てなど、女性として輝くべき期間の生活の質をぐっと下げてしまう子宮内膜症の予防として、今、積極的に活用されるようになってきたのが低用量ピルの活用です。

低用量ピル服用者は内膜症発生率が50%も減少

女性の体では、周期的に排卵が起こることによりホルモンが変動し、卵巣や子宮はダイナミックな変化を毎月繰り返しています。ピルはこの排卵を抑えて卵巣をお休み状態にさせますので、ホルモン変動が抑えられ、月経は規則的かつ少なくなるので、強い生理痛など月経トラブルに良い効果があるんですね。

外因性のエストロゲンとプロゲステロンを長期にわたって投与すると子宮内膜が顕著に萎縮することにより、子宮内膜症の治療に有用であるということがわかっています。

低用量ピル服用者は非服用者に比べて子宮内膜症の発生率が50%も減少し、予防治療効果も。不妊症のリスクでは、ピル服用者では40%低下しています。

チョコレート嚢胞は卵巣にできる子宮内膜症ですが、この治療の選択は「まず手術」という場合が多いです。しかし、長期的にピルの服用を続けていると嚢胞が小さくなってくるので、当院では手術を回避できている患者さんがたくさんいらっしゃいます。

ピルを賢く早めに活用して生活の質をアップ!

初めてピルを飲む場合、最初の1ヵ月ほどは吐き気や胸の張り、不正出血などの症状が出る人もいますが、これはピルが体に慣れるまでの一時的なもの。医師のもとで様子を見ていれば、心配すべきトラブルではありません。それよりも効果の満足度が高いので、服用を続ける人がほとんどです。

こういった女性にとって良い副効用が広く認知されていないせいか、日本でのピル普及率は3~5%とまだまだ低いのが残念です。早い時期から使っておけば、痛みでつらい思いをすることはありません。

手遅れになって高度生殖医療しか方法がなくなると経済的にも多くの負担がかかりますが、事前に病気を抑えておけば自然妊娠も期待できます。

そう考えれば、ピルは現代女性の賢い選択の1つ。日頃、生理不順や生理痛で悩んでいる人は早めに婦人科や産婦人科を受診して、ピル使用について気軽に相談していただきたいですね。

篠崎 百合子先生(しのざきクリニック 院長)産婦人科医。1975年東京女子医科大学卒業後、同大産婦人科にて勤務。医学博士号取得。専門は不妊・女性ホルモン領域。1989年から都立大塚病院に勤務。周産期医療に携わり、医局長を経て、2000年しのざきクリニックを開院。性と健康を考える女性専門家の会委員。「仕事に忙しい現代女性は自分の体を顧みる機会が少ないのでは? 不調を我慢せず、気軽に産婦人科を受診してヘルスチェックを行って、快適な毎日を過ごしましょう」。