ネット上の「若年性更年期障害」の言葉に要注意
前回お話した通り、「更年期症状(障害)」とは45~55歳の間に、ほてりやのぼせ、発汗、耳鳴り、物忘れ…など、エストロゲンの減少によって引き起こされる症状のことを言います。
ところが、最近ネット上で「若年性更年期障害」という言葉が次々と出てきます。読み解いていくと、更年期前の20~30代の女性に起こる、月経不順、イライラやほてりやのぼせで、更年期症状(障害)とよく似た症状のことをそう呼んでいるようです。そして、サイトによっては、最終的にはサプリメントを勧めていたりしている場合もありますが、実際には「若年性更年期障害」という病名は存在しません。
近年増えた女性の社会的進出で体への負担も大きくなっています。人間関係によるストレスを抱え、不規則な生活が続き、食生活が乱れてくれば、確かにこのような症状は多く起こり得ます。しかしながら、私たち医師の間ではこのような不調を「若年性更年期障害」とは呼んでいません。くれぐれも、出所がわからないネット上の病名に惑わされないようにしましょう。
不調を感じたらまずは受診、適切な治療を
更年期前、20代~30代の女性に起こる更年期によく似た症状は、婦人科にかかれば「卵巣機能不全」による「自律神経失調症」ということとなり、症状により血液検査、ホルモン検査をします。そして、ホルモンが原因していることであれば、漢方薬を処方したり、ホルモン治療を行います。また、精神的な疾患が疑われる場合は、心療内科への受診をお勧めすることもあります。
更年期前の女性であれば、将来的に妊娠を望む方もいるでしょう。本当の更年期であれば放っておく、という判断もできますが、更年期前の女性で、子宮にトラブルがあったり、排卵していない…などの問題は放っておいたら不妊の原因にもなりかねません。まずは婦人科を受診し、自分の不調の原因は何かをしっかり診断してもらいましょう。そして、体調を整えて健康体を作っていきましょう。
症状によって「ピル」が役立つことも
例えば、イライラやうつの原因が「月経困難症」、「PMS(月経前症候群)」、また子宮内膜症による頭痛・腹痛などの場合、超低用量ピルによって月経の回数を減らすという手段が有効な場合もあります。つい最近まで「月経は28日周期できちんと起こす」ということが、性教育の現場でも教えられてきましたが、超低用量ピルの発売でその常識がだんだん変化しつつあります。
超低用量ピルを服用することで、イライラやうつが起こりにくくなり、内膜症による痛みも軽減され、また副作用もほとんどありませんので、ピルを使って健康体を取り戻す、ということも可能になってきました。希望のある方は、ぜひ婦人科を受診してみてください。