罹患者が年々増加している「子宮頸がん」
子宮頸がんとは、子宮の入り口の頸部にできるがんのことです。その原因の95%以上は高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)感染とされています。ヒトパピローマウイルスは100~150種類あり、そのうちの15種類ががん細胞を発生させると言われているものです。性交渉などにより感染し、人間の間を渡り歩いています。通常2~3年で消えていきますが、中には長期にわたって子宮頚部に居座るものもあり、それががんを発生させます。
子宮頸がんは、性成熟期女性では乳がんに次いで発症率の高いがんです。そして、20~30代の若い女性の罹患者が近年急増しています。また、死亡者数は1993年ごろまで減少傾向にあったのが、ここ数年は年間約3,500人と推定され、横ばい状態にあります。
子宮頸がん検診は「20歳を過ぎたら年1回」を習慣に
子宮頸がんがこれだけ増えているにもかかわらず、子宮頸がん検診はほかの先進国と比べて著しく遅れているのが日本の現状です。検診自体は、子宮頸部の粘膜をヘラで軽くこすって組織を調べるだけですので、痛みを伴うことはありません。検診を受ける時には着脱しやすい服装で病院に行くのがおすすめです。会社の健康診断、または各自治体でも補助が出るので、ぜひ問い合わせてみてください。
初期の子宮頸がんの場合、自覚症状が全くないことがあります。逆に自覚症状がある場合は、すでに進行していることもあります。早期に発見できれば子宮の温存が可能で100%治るがんなので、早期発見がとても大切です。年に1回、例えば誕生月に受けるなどの習慣を持つと良いですね。特に20~30代の場合、そのあとに妊娠、出産という人生の大きなイベントを考えている場合もあるでしょう。検診はご自身の妊孕性(にんようせい・妊娠のしやすさ)を失わないためでもあるのです。
「婦人科に行きづらい」と思う方もいるかもしれませんが、婦人科には20代の方も多くいらっしゃいます。できれば何でも相談できるかかりつけ医がいると良いですし、長く通っているかかりつけ医があるならば、たまには他の医師に違う視点で診てもらうのも、個人的には良いと思っています。
子宮頸がんワクチンの接種も有効
最近、副作用が取り上げられている子宮頸がんワクチンですが、婦人科医一般の見解として、ワクチンは大変有効であると考えます。実際、ヒトパピローマウイルス(HPV)16、18型に加え、性感染症のひとつである尖圭コンジローマを発生させる6、11型の予防もできる4価ワクチンを導入したオーストラリアでは、子宮頸がんの一歩手前である前がん病変や尖圭コンジローマの発生が減少していることがわかっています。
ワクチン接種により子宮頸がんの発生は70%予防できるとされています。子宮頸がんの予防は、子宮頸がん検診とワクチン接種が最も効果的だと言えるでしょう。まずは予防が大切です。ワクチンで予防ができる癌は子宮頚がんだけです。心配事がある場合は、信頼できるクリニックにぜひ相談してみてください。