子宮頸がんってどんな病気?検診を受けるタイミングは?

子宮頸(けい)がんにかかる20~30代の若い人が増えています。妊娠・出産を控えるこの世代にとって、注意が必要な病気のひとつです。がんになる一歩手前で見つけて、治療する機会ができる検診は重要です。とはいえ、検診のベストな受け方についてわからないという人も多いはず。そこで、細胞診専門医の石川てる代先生に、子宮頸がんの病気と検査方法について詳しくお聞きしました。

若い女性に増えている子宮頸がん

子宮頸(けい)がんは、子宮の入口にあたる子宮頸部にできるがんのことです。赤ちゃんが育つ子宮腔にできるがんを子宮体(たい)がんといい、この2つをあわせて「子宮がん」と呼ばれています。

子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染がほとんどで、セックスで感染するありふれたウイルスです。 HPVに感染しても大部分の人は治りますが、一部の人で感染が持続し、細胞が異常になる「異形成」を起こします。そのうち、またごく一部の人が「ごく早期のがん(上皮内がん)」に進みます。感染からがんになるまでの期間は5~10年といわれています。

近年、子宮頸がんにかかる20~30代の若い女性が20年前に比べて急激に増えています(➡表1)。性交開始の若年化や、ピルの普及によってコンドームで避妊しなくなったことが考えられます。ピルの服用ではウイルスの感染を予防できないのです。

若い女性が子宮頸がんになると、妊娠を望んだ時にそれが叶わなくなるケースも出てきます。そんな悲しい事態を防ぐために検診は有効です。がんの一歩手前で治療すれば、子宮を残す治療により将来の妊娠分娩が可能になります。厚労省は20歳からの検診をすすめていて、自治体の無料検診を受けられるのは20歳からですが、10代でもセックス経験があれば検診をするのが望ましいと思います。

【表1】 参考データ:国立がん研究センター

検査は痛くないですか?受けるタイミングは?

検査は内診台に座って行います。医師が指で子宮の大きさをみる触診を行った後、膣を広げる器具を挿入して、子宮頸部の細胞をヘラやブラシのようなものでこすり取ります。痛みも出血もほとんどなく1~2分で終了。過去に痛い思いを経験した人は、器具が大きすぎたのかもしれません。

検診が初めての人や痛い思いをした人、セックスの経験がない人は「小さい器械にして欲しい」と、医師にはっきり伝えるとよいでしょう。

検査を受ける時は、月経血が多い時は避けましょう。月経血が多いと細胞を取りにくくなるため、正確な判定ができない場合があります。月経中も検査可能かを、検査を受けるクリニックに事前に確認されるとよいでしょう。

検査結果の後はどうなるの?

検査で取った細胞は顕微鏡で調べます。結果は「異常がない・再検査が必要・精密検査が必要」の3パターンです。異常がなければ少なくとも2年後にまた受けましょう。再検査の場合は早めに検査をしてください。

そして精密検査になった場合ですが、がんを疑う部分を、コルポスコピーという拡大鏡で観察し、その部分を小さく切り取る「狙い組織診」をして、異形成や上皮内がんがないかを診断します。

異形成は「軽度、中等度、高度」の3段階に分けられ、軽度か中等度であれば自然に治ることがあるので、治療しないで3ヵ月ごとに経過観察します。

一方、高度の異形成と診断された場合、上皮内がんに進行しやすいため治療を行います。がんの部分を切除する「子宮頸部円錐切除術」です。上皮内がんもこの術式で切除するのが一般的で、最大のメリットは子宮を残せること。赤ちゃんを望んだ時に妊娠・出産の可能性が残ります。

ある自治体では、精密検査をした人の約1割に異形成や上皮内がんがわかり、早期の治療へとつながりました。しかし一方で、「精密検査が必要です」との通知を受け取っても無視する人たちもいました。こうした傾向は20代に多くて、とても残念なことです。

子宮頸がんは怖い病気ではありません。早期に発見し、適切な治療を行えば再発することもなく、子宮も命も守ることができます。ごく早期のがんは症状がほとんど出ないため、検診を受けることが何よりも大切です。参考データ:国立がん研究センター

子宮頸がんの進行は0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期の5段階に分けられ、さらに各期のなかで細かく分けられる。異形成は0期前の状態。

石川先生よりまとめ

HPVの感染からがんになるタイミングは誰にもわからないので、検査を定期的に受けることが重要です。多くの自治体では、無料か少額の自己負担金で子宮がん検診を受けられます。 また、セックス時に出血したり、月経以外で出血が続いた場合には、躊躇せずにクリニックを受診しましょう。健康保険適応で検査を受けられます。

石川 てる代 先生(石川てる代ウィメンズクリニック院長)1978年、千葉大学医学部卒業。千葉市立病院、千葉大学病院、九段坂病院での勤務を経て、1993年より国分寺市に石川てる代ウィメンズクリニックを開院。医学博士。日本産婦人科学会産婦人科専門医。日本臨床細胞学会細胞診専門医。クリニックには10~90代まで幅広い年齢層の女性が受診。その年代の病気や不調に日々向き合う。プライベートは読書でリフレッシュする。小説が大好きで芥川賞、直木賞の受賞作品はほとんど読んでいる。