診断を受けても慌てずに 子宮頸部異形成とは

「子宮頸がん」は何となく知っていても、その前段階である「子宮頸部異形成」についてはよく分からないという方も多いのでは。自覚症状や治療法といった疑問点について、うえひらウィメンズクリニックの上平 謙二先生に伺いました。

年齢に関係なく、女性なら誰もが直面しうる異変

子宮頸部異形成とは、子宮頸がんへと進行する前段階にあたる病変です。子宮頸部にHPV(ヒトパピローマウィルス)が持続感染することで引き起こされます。通常は、皮膚や粘膜にHPVが感染しても、自然に排除されていくのですが、子宮頸部の一部にはウィルスが持続的に居つづけられる特殊な構造を持った箇所があります。

その部分の細胞にHPVが入り込み、持続感染が起こると、細胞の遺伝子が次第に変化していき、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成の段階を経て、やがて子宮頸がんへと進行していく場合があるのです。HPVは接触によって感染するウィルスなので、男性器や、手指との接触などで子宮に感染します。感染から、異形成やがんの発病までの期間はさまざまで、数十年性交渉がない女性でも発病することもあります。

どのような治療法があるの?

軽度異形成や中等度異形成の一部の症例では、定期的な経過観察で病変の進行を監視します。中等度から高度異形成では、レーザー手術、LEEP(高周波電気メス)手術や冷凍凝固法で局所麻酔下に患部を削りとる日帰り手術がよく行われています。腟から行う手術で、歯医者さんで虫歯を削ってもらうイメージに近いかもしれませんね。

病変の範囲が広い場合や上皮内癌以上の病変の存在も疑われる症例では、子宮頸部を円錐状により深く切り取る「円錐切除術」が行われ、その際には1週間程度の入院が必要です。さらに進行して浸潤がんになると、子宮頸部あるいは子宮全体を周囲組織を含めて切除する必要が出てきます。

ガンに進行する前の、いち早い発見が大切

子宮頸部異形成は、子宮頸がん検診(細胞診)で発見されるケースがほとんどです。異形成や初期の子宮頸がんでは、出血などの自覚症状は、ほとんどありませんから、早期発見のカギは、きちんと定期的にがん検診を受診することです。また、妊娠をきっかけに産婦人科を受診して、異形成や子宮頸がんが発見される場合も少なくありません。

異形成や初期の子宮頸がんであれば、そのまま妊娠継続、出産することは可能ですが、妊娠中に病変が進行しないか不安ですし、円錐切除術を行った症例では、流産や早産のリスクが高まるなどの弊害があります。
将来、妊娠・出産をお考えでしたらなおさら、子宮頸がん検診をきちんと受けることが大切だといえるでしょう。子宮頸がん検診は数秒で終わる簡単なものですし、年齢に応じてクーポンなどの助成を用意している自治体も多いので、ぜひ活用して1~2年に一度は受診しておくようにしましょう。
上平 謙三 先生(うえひらウィメンズクリニック)九州大学医学部卒業、九州大学婦人科学科学教室入局。九州大学医学部付属病院などで研修後、九州大学大学院医学研究科進学。九州がんセンター婦人科、国立別府病院産婦人科などに勤務後、北九州市立戸畑病院産婦人科部長、医療法人愛和会古賀中央病院の婦人科医長を歴任したのち、2006年うえひらウィメンズクリニックを開設。女性にとっての真に頼り甲斐のある「かかりつけ医」を目指す。