「なんとなく不調」は 女性ホルモンの乱れが原因?

生理不順や生理痛、むくみやイライラ、落ち込みなど、病気ではないけれど「なんとなく不調」を抱えている女性は多いのでは? これらの症状を引き起こしているのは女性ホルモンの仕業なのでしょうか? 原因や対処法について、対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座の大山香先生に詳しいお話を伺いました。

自律神経が不調になると女性ホルモンも乱れる

当院に来院する患者さんのお悩みで最も多いのが、生理に関するトラブルです。出血がひどい、痛みが強い、不順などのほか、イライラや気分の落ち込み、むくみなど、生理前の症状を訴える方も少なくありません。精神が不安定になって、なかには泣きながら来られる方もいらっしゃいます。

また、最近増えているのは30~40代の方の不定愁訴。いわゆる“プレ更年期”という状態で、生理不順、頭痛、不眠など、通常は40代以降で出てくる更年期の症状がその前に起こってしまうケースです。

病気ではないけど、月経にも体にも支障が出るこれらの女性の不調は、ホルモンバランスの乱れから来ていることが多くあります。
自律神経と女性ホルモンの関係は密接で、自律神経が不調になると女性ホルモンのバランスも乱れてきます。どちらも脳の視床下部という部分がコントロールしており、その司令塔はストレスにとても弱いのです。

最近は、女性も男性並みにバリバリ働く人が増えてきました。その分、食生活や睡眠の状況が悪化したり、人間関係や仕事の重責でストレスをためやすくなっていると考えられます。そのような生活が続くと女性ホルモンのバランスを崩し、毎月の生理に支障をきたしたり、メンタル的にも良くない状態におちいりやすくなります。その不調がまたストレスになって……と、悪循環を起こしてしまいます。

また、ライフスタイルの変化が女性ホルモンに影響を与えることも。昔はの女性は出産回数が多く、生涯に起こる生理の回数が少なかったのですが、今は子どもを産まない、もしくは産んでもその数は少なく、生理の回数が増える傾向にあります。生理というのは女性ホルモンの変動。その回数が昔より多くなっているんですね。
女性ホルモンの変動にずっとさらされていることにより、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気も引き起こされます。

低用量ピルや漢方薬で症状がかなり改善されることも

不調を感じて、それがしばらく続くようなら、一度婦人科で相談を。「敷居が高いし、なかなかきっかけがない」という人は、企業などで行っている子宮がん検診の際に相談されてもいいかと思います。

生理不順や生理痛、イライラなど、ホルモンの乱れで起こっている不調に対して、当院では治療として低用量ピルをおすすめしています。ピルを飲むことによって生理痛が軽減しますし、黄体ホルモンが原因といわれているPMS(月経前症候群)の改善も期待できます。ピルというとむくみや体重の増加、血栓症など、ネガティブな印象を持つ方もいるかもしれませんが、低用量ピルなら成分の含有量が少ないので副作用はほとんどありません。

また、女性の不調には漢方薬も有効です。低容量ピルには女性ホルモンを一定にさせるという作用があるのですが、漢方薬の場合は全身の状態のバランスを整えるという効果があります。

PMSなら「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、生理不順なら「温経湯(うんけいとう)」、更年期症状なら「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」など。症状が同じでも体の状態や体質によって薬の種類が変わってくるので、まずは診察して、その方に合う漢方薬をおすすめしています。

漢方薬の効き目はゆっくりというイメージがありますが、その方に合う漢方薬であればすぐに効き目を感じることも。症状が軽く、ピルに抵抗がある方はまず漢方でバランスを整える、また、ピルと漢方薬を併用するという使い方もできます。

食生活を見直し、入浴で乱れの元となるストレスを解消

お薬による治療のほかに重要なのは、ホルモンバランスや自律神経の乱れを引き起こすストレスを軽減することです。

元気の源は食事ですから、できるだけ糖質・脂質・タンパク質など必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切です。それに加え、女性の場合は女性ホルモンと同じような働きをする成分が含まれる大豆製品や、エストロゲンの代謝に必要とされるビタミンB6(ニンニクや鶏肉、魚など)、血流を促すビタミンE(ナッツ類や魚など)を意識して摂るといいですね。

さらに、体を温めて、精神的にもリラックスするには入浴がおすすめです。冷えると生理痛やむくみも悪化するので、特に寒い時期はお風呂にゆっくり浸かって温まり、張り詰めた気持ちをときほぐしてあげましょう。忙しくて入浴の時間が取れないという人は、足湯をするだけでも効果があります。

体調変化を自覚するために基礎体温をつける習慣を

「毎月、ホルモンの働きに左右されて女性って本当に大変!」と思ってしまいますが、生理がある限り、その状態は続きます。うまくつき合って、トラブルを最小限にするためには、まずは自覚することが大切。毎月の体調変化を自覚しておけばトラブルにうまく対応できるし、仕事や遊びのスケジュールも立てやすくなります。

そのためには、基礎体温をつける習慣を持ちましょう。グラフという視覚的な形でわかるので、なんとなくではなく、はっきり自分のバイオリズムがわかるはずです。グラフを付ける際には、どの時期にイライラがあったかなど、症状をメモしておくとなおいいですね。婦人科で診察を受ける時の参考になりますし、体調に異常があった場合にも気づきやすくなり、将来の不妊や婦人科疾患も防ぎやすくなると思います。

大山 香先生(対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座)2004年昭和大学医学部卒業。産婦人科医。日本産婦人科学会専門医。女性の心と体の健康に関わる専門家が、お一人おひとりの悩みにきめ細かく対応。当クリニックの婦人科は全員女性の医師なので、初めて来院する方でも安心です。