おりものは体のメッセージ

女性の毎月のバイオリズムの中で、気になっているのにケアがつい後回しになってしまうのがおりものです。しかし、実は変化を見過ごしてはいけないもの。色やにおい、形状などが自覚症状が出ない体調の変化を教えてくれます。おりものがなぜ女性の体内から分泌されるのか、また、どんな変調を教えてくれるのか、白山レディースクリニックの院長・中村久基先生にお聞きしました。

おりものとは何か?

おりものとは、膣や子宮、汗腺からの分泌物が混じり合ったものです。細菌が膣内を通して入ってきたり、増殖するのを防ぎ、膣内をきれいに保つ働きを持っています。

排卵期には受精の手助けをしてくれ、精子がスムーズに到達する役割も担っています。おりものにも生理同様、周期があり、その周期に合わせて状態や量も変化しています。おりものの量は卵胞ホルモンにほぼ比例していて排卵期と生理前になると多くなります。特に、最も多くなるのは排卵期。透明でとろみのある水のような状態でにおいもきつくありません。反対に生理前のおりものはにおいが強くなり、どろっとした粘性のある白色状態になります。生理の数日前から血が混じることもあります。

量や色、においの変化は病気を知らせるメッセージ

正常なおりものは半透明で少し粘り気があります。乾くとぼそぼそしたクリーム状になることもあります。また、生理直後はにおいがきつくなることもありますが、それ以外の時期ににおいをさほど感じないようであれば、気にする必要はありません。

問題は量や色、においに異常を感じた時。さらさらで強いにおいが長く続くときは病気のおそれがあります。おりものの色、形状の異常が示す病気は以下の通りです。

■おりものの中にずっと血が混じっている。ピンクや茶色のおりものが出る
⇒不正出血のサイン、子宮ガンやクラミジア頸管炎、子宮頸管ポリープ
■泡状、もしくはクリーム状で、緑黄色、黄色。強い悪臭、外陰部のかゆみを伴う
⇒子宮・卵管の細菌感染、特に淋菌による頸管炎、トリコモナス膣炎、腫瘍性疾患が疑われる
■白く濁る、ヨーグルト状のぼそぼそしたおりものが多く、非常に強いかゆみがある。量も多い。
⇒カンジダ膣炎、
■水っぽいおりものが流れ出るくらい多い
⇒クラミジア頸管炎
■灰色がかった色で水っぽい。魚の腐ったような臭い。強い外陰部のかゆみがある
⇒細菌性膣炎
■赤褐色、茶色、ピンク色で悪臭がある。性交時に出血
⇒萎縮性膣炎、子宮体ガン

クラミジアはひどくなると熱が出たり、下腹部痛になったりしますが、抗生物質で治療できます。カンジダ膣炎や細菌性膣炎は自然に治ることもありますが、何度もくりかえしたり、かゆみがひどい時は早めに受診しましょう。トリコモナス膣炎は飲み薬と膣内に入れるタブレットで治療できます。ただし、子宮ガンやクラミジア頸管炎、子宮頸管ポリープ、子宮頸ガンなどの可能性がある症状に近い場合は、いったん症状がおさまっても必ず婦人科で検査を受けてください。

年齢や妊娠時期によっても違う、おりものの量

おりものの量は女性ホルモンに深く関わっているので、年齢とともに変わります。妊娠可能な年齢になると量は増え、妊娠時期にも多くなります。反対に、女性ホルモンが減少する30代後半から40代にかけては、おりものの量も少なくなり、閉経後2~3年経つとおりものの量はグッと減ります。ですから、40代以降でおりものが多かったり、血が混じったりしている場合は、子宮体ガンなどの大きな病気が潜んでいることも考えられます。

中村先生より まとめ

先日、20代の女性が「尿漏れかもしれない」と心配して受診に来られました。診察して、それがおりものだったとわかりました。それほどおりものの量や状態も人によって千差万別です。異常なおりものが出ている方でも実際に拝見するとそれほど心配するほどではないことが大半ですが、それでも子宮体ガンや子宮頸ガンなど大きな病気のサインである可能性があります。気になるようでしたら、必ず婦人科へ行って診察を受けましょう。

中村久基 (白山レディースクリニック)信州大学医学部卒業。東京大学産婦人科医局入局。NTT東日本関東病院、長野県立こども病院総合周産期母子医療センター、関東中央病院、帝京大学溝口病院、東京警察病院、鷺沼産婦人科、横浜医療センター、虎の門病院分院を経て2012年、白山レディースクリニック開院。日本産婦人科学会認定専門医、母体保護法指定医、マンモグラフィ読影認定医。趣味はスキー。