PMS(月経前症候群)や月経不順など、さまざまな婦人科系の治療に有効だといわれるピル。
ピルとは簡単に言うと、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の2種類の女性ホルモンの合剤です。 その2種類を服用することによって、女性の体を妊娠している時と同じような状態にし、月経にまつわる辛い症状を緩和します。 また、ホルモンのバランスが整うことによって、生理前の肌荒れや更年期症状などを改善する効果もあります。
エストロゲンはどのピルも同じものですが、プロゲステロンには個性があって、名前や副作用も少しずつ違ういろいろな薬剤があります。古いものから新しいものまでありますが、新しいものがいいとは限りません。 それぞれに特徴がありますし、その人によって体に合う合わないということもありますから、知識のあるドクターに処方してもらうことが大切です。
ピルの副作用で太るって本当?
ピルを服用すると太るというのは絶対ではありません。
確かに、ピルは女性の体を妊娠している時と同じ状態にするわけですから、その副作用として妊婦さんと同じような状態になる傾向はあります。 つまり、むくみやすくなる、体脂肪が増える、食欲が増す、などです。それによって、体重が増加することもあり得ますが、個人差があります。 当院でも、月間200名以上のピルの処方がありますが、体重の増加は1kg程度の軽度の方が20%くらいで、ほとんどの方は増加がない、または軽微な増加になっています。それ以上の場合は指導をして増加を抑えています。
太らないピルもあるって聞くけれど・・・?
絶対に太らないピルというものは存在しません。
薬理効果的に太りにくいピルもあるにはありますが、その人の体質などとのかね合いで、使ってみないとわからないというのが正直なところです。
また、太りやすい人は、日常生活の工夫をすることでずいぶん体重増加を抑えることはできます。 例えば、むくみやすい人は塩分の摂取を控えることが大切です。これはピル服用の場合に限らず、高血圧、肥満の予防にも重要なことです。また、利尿作用のある食物を摂取することもおすすめします。カリウムの多いバナナやアボカド、海藻類などのほか、コーヒーや紅茶も有効です。
体脂肪が増えやすい人には、脂っこい食事や糖分の多い飲食を避け、できるだけ体を動かすことで体重管理をするようにすすめています。
食欲の増加については我慢することが一番ですが、どうしてもという場合は、よくかむこと、時間をかけて食事をすることで満足感を得られると思います。食べる時間は寝る3時間前までにすることも重要です。
ピルを処方できない人もいる?
ピルの成分のひとつ、エストロゲンには血液が固まりやすくなる作用があります。
そのため、血栓症にかかりやすい人にはピルを処方できません。
具体的には、35歳以上で1日に15本以上煙草を吸う方、服用スタートが40歳以上の方、肥満の方には、ピルの服用を控えてもらっています。
ピルを飲み続けることで、妊娠しづらくなる?
ピルを服用すると妊娠しづらくなることはまったくありません。むしろ、年齢と共に子宮内膜症になるリスクをピル服用によって抑える効果も期待できます。
ですから、晩婚化が著しい現代においては、将来の妊娠には好影響であるといえます。
ピル服用を中止して次の月からでも、まったく問題なく妊娠することが可能です。
更年期障害にもピルは有効?
更年期障害には、HRT(ホルモン補充療法)といって、低下した女性ホルモン(エストロゲン)を補うことで、更年期障害のさまざまな症状を改善することができます。 女性ホルモンには、経口薬だけではなく、貼り薬や塗り薬のような経皮薬もあります。経皮薬は、肝臓に負担をかけず、中性脂肪や血栓症などのリスクを増やさないメリットがあります。
また、更年期障害の場合も、エストロゲン1種類だけを摂取するのではなく、プロゲステロンも同時に服用する必要があります。
これは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類をきちんと飲めば、ピルを飲んでいない人よりも子宮体ガンのリスクを低下させられるといわれているためです。
女性ホルモンの影響による乳ガンのリスク増についても、HRTを始めて5年以内であれば、まず問題ないといわれます。
ピルとうまく付き合うには?
まずは1~2ヶ月ほど、試しに服用してみましょう。
その場合、安易に薬だけを処方する医療機関ではなく、体質や体調、体重などもしっかり管理してくれるクリニックで診察を受け、処方してもらうことが大切です。 インターネットで薬だけを購入するのは、いろいろな意味で危険ですので、やめましょう。