更年期障害要因の7割は自律神経の乱れだった!?
日本産科婦人科学会の定義によると、「閉経の前後5年を更年期といい、この期間に現れる多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状と呼び、これらの症状の中で日常生活に支障をきたす病態を更年期障害とする」となっています。
更年期症状や更年期障害を引き起こす要因は大きく分けて3つあり、卵巣機能の低下によりホルモン環境が変化して起こる「身体的な要因」、家族の看護や親の死・病気、子どもの親離れなど「社会的な要因」、几帳面・完璧主義、ストレス耐性が弱いなど「心理的な要因」とされます。
「更年期障害は女性ホルモンの減少によるもの」とイメージする方が多いと思いますが、実はエストロゲン欠乏による更年期障害は、更年期障害全体の30%弱程度です。
月経異常や性器の萎縮、性交障害、頻尿や動脈硬化、骨粗鬆症、ホットフラッシュなどの症状には確かにホルモンの影響があり、ホルモン補充療法を受ければある程度改善することがありますが、うつや不眠など、心の不調は良くなりません。
当院では残りの7割近く、つまりほとんどの更年期障害は自律神経の乱れから来ていると考えており、ホルモンだけでなく、脳からも更年期障害をみています。
更年期世代はストレスを小さく抑えることが大切
この自律神経系の乱れにはストレスが大きく関わっています。
これがストレスを感じた際に、体が起こす最初の警告反応です。
この状態が長く続くと疲れてしまうので、自然に脳が防衛反応を起こして、休む、眠るなど副交感神経を働かせます。
ストレスが小さい場合には、交感神経の緊張が軽度で済むので副交感神経の反応が追いつき、エネルギーが補充されて元気になります。
私はこれを「健幸期」と名付けています。
ところがストレスが大きいと、交感神経の緊張が非常に強くなり、それに追いつこうと副交感神経の反応もエスカレートします。ずっとそのような状態が持続すると、心身ともに疲れてしまいます。
更年期は環境の変化などで年代的にもストレスを受ける機会が多く、常に交感神経の緊張が強い傾向にあります。さまざまな症状を軽減し、健幸期を維持するためにストレスはなるべく小さくすることが大切です。
余計な情報を頭に入れすぎず、ストレスは小さなうちにうまく解消できる方法を持っておくことをおすすめします。
自律神経やホルモンを調整できる「プラセンタ注射」とは?
更年期障害や更年期症状の治療法は卵胞ホルモン補充や漢方療法、カウンセリングなどいろいろありますが、当院では自律神経を整えるプラセンタ注射療法に力を入れています。
更年期の症状に関連する効果としては、
●自律神経調整作用
●血圧調整作用
●疲労回復効果
●精神安定作用
●内分泌調整作用
●活性酸素除去作用
●血行促進・造血作用
などがあり、ほかにも基礎代謝向上、免疫賦活、強肝・解毒など、全身にわたる効果が望めるとされています。
プラセンタ注射は更年期障害の治療として長い歴史があり、いまのところ、副作用は100%ないとされています。
1回の注射で3日程度効果が持続するので、週に2、3回、10~15回くらいを集中して行い、それで効果を実感してきたらあとはご自分で受けるペースを決めていただくことになります。
更年期障害と診断されて健康保険適用となれば、費用も大きな負担なく済みます。
即効性には個人差がありますが、当院では受けられたほぼ全員の方が効果を実感されているので、更年期障害治療のファーストチョイスとしてプラセンタ注射、もしくは注射と漢方療法の併用を、それでも症状が軽減しないという場合には最後の手段としてホルモン補充療法をおすすめしています。
特にうつや落ち込みなど精神症状が強い方、何が原因だかわからないけれどさまざまな不定愁訴に悩んでいるという方にとってプラセンタ注射は大変有効だと思うので、ぜひ治療の選択肢として考えていただきたいですね。