低用量ピル◆働く女性のピル活用とネット通販の危険性

女性の社会進出が加速するなか、自分で生理をコントロールできる「低用量ピル」への注目度が上がっています。医師の処方なしに、インターネットで並行輸入商品を安易に入手している人もいるようですが、危険はないのでしょうか? 働く女性にとってのピルの活用法とネット通販の危険性について、四ツ谷レディスクリニックの小林秀文先生にお話を伺いました。

低用量ピルには働く女性へのメリットがたくさん

低用量ピルとは、卵巣で作られる女性ホルモンの「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」が主成分の錠剤のこと。

「ピルを飲むとホルモン過多になるのでは?」と心配する人がいますが、そのようなことはありません。ピルを飲むことにより、卵巣は自らホルモンを出さなくてもいいと判断するため、卵巣は休んでいる状態になります。

このため、ピルを服用している間は体内でホルモンが作られません。

ピルに含まれているホルモンは体内で通常生成される量かそれ以下で、体にとって適正な量です。

ピルでホルモンを上手にコントロールすることによって、経血量が少なくなったり、生理痛がなくなったり、PMSがなくなったりなどの効果が表れ、生理が非常に楽になります。また、妊娠に関しては、ほぼ100%の確率で避妊ができます。

働く女性にとっても、多くのメリットがあります。たとえば出張の予定がある場合、ピルの飲み方によって、その期間の生理を避けることが可能です。また、生理痛がひどくて仕事にならない人は、その悩みから解放されます。

また、キャリアを長い目でみたときも、キャリアを積む時期はピルで避妊し、子どもが欲しくなったらピルをやめ、また、出産後にバリバリ仕事がしたい時期にはピルを再開するなど、メリハリの効いたキャリアプランを作ることができるのです。

ネット通販は危険大。ピル使用は婦人科で医師と相談を

 

低用量ピルの使い始めは、胸が張ったり、ムカムカしたりなど、つわりのような症状が出る人がいます。 このような場合、患者さんと相談して、飲み方を変えたり、薬を処方して症状を抑えたりするのですが、ネットでピルを購入した場合にはそのような対処ができません。

また、タバコを吸っている人、肥満や高血圧がある人、40代以上の人のなかには、ピルを飲むことで血栓症を発症する人もいます。

事前に血液検査をすればある程度は予見できるのですが、ネットで買った場合にはその判断ができません。

また、ピルは朝なら朝、夜なら夜と一定の時間に飲むことが大切ですが、ネット通販ではそのような説明がきちんとされていない場合があります。

もちろん、薬が本物かどうかを保証することもできません。

ピルは生理をコントロールするほかにも、子宮体がんや卵巣癌の発症率を下げると言われています。

不妊症の原因となる子宮内膜症の治療にも大きな効果を発揮することがわかっています。

ピルを味方につけるためにも、正しい使い方を知ることがとても大切です。きちんと婦人科を受診して、医師に処方してもらうことをおすすめします。

小林秀文 先生(四ツ谷レディスクリニック)金沢医大、産科婦人科学教室に在籍。公立穴水総合病院・産婦人科部長、浅野川総合病院・産婦人科部長、都立墨東病院などを歴任。平成7年4月に東京都千代田区に四ツ谷レディスクリニックを開設。趣味はギター・スポーツブーメラン。