更年期とは、閉経前後の10年間
更年期は閉経が目安になります。
月経が終わりを迎える閉経をはさんだ前後それぞれ5年間程度、合計約10年間を更年期と呼びます。
仮に52歳で閉経した場合、更年期にあたるのは47~57歳です。
つまり、いつ更年期が始まったかは、閉経を迎えてみないとわからないというのが実際のところです。
閉経の平均年齢は50.5歳ですが、実際には個人差が大きく、早い人で40歳半ば、遅い人で50歳半ばです。閉経をはさんだ更年期は、思春期や成熟期と同じく、女性が一生のうちで避けて通れない時期です。
女性は40代後半に差しかかると、卵巣の活動が徐々に低下し、エストロゲンという女性ホルモンが減って月経が不規則になります。
そして1年以上にわたって月経がこなくなり、ついに閉経となります。
エストロゲンが減ると、多くの女性はほてりや発汗など血管運動の調節障害が出ます。
また、エストロゲンの減少によってホルモンバランスが乱れ、自律神経にも影響してしまいます。
すると疲れやすい、頭痛、めまい、イライラ、不安、不眠など精神症状を含めていろんな症状が出ます(➡コラム)。
症状のあらわれ方は、閉経年齢と同じく個人差が大きく、ほてりや発汗だけですむ人から、さまざまな症状に悩まされる人までいます。
そこで、日常生活に支障をきたすほど症状がひどく、治療が必要な状態を「更年期障害」、症状はあってもさほど辛くなく日常生活を送れる状態を「更年期症状(卵巣欠落症)」と呼んで区別しています。
●コラム
症状は大きく3つに分けられます。
1)自律神経失調症状/ほてり、発汗、寒気、冷え症、動悸、疲れやすい、頭痛、肩こり、めまい
2)精神症状/情緒不安定(イライラや怒りっぽい)、抑うつ気分(不安、不眠)、倦怠感、性欲の低下
3)その他/腰痛、関節痛、食欲不振、皮膚の乾燥感やかゆみ、頻尿、外陰部の不快感など
症状に個人差があるのはなぜ?
更年期の症状が人によって異なるのは、原因がエストロゲンの減少だけでないからです。
治療が必要な症状は、身体状態や生活環境の要因が複合的に影響することで出ると考えられています。
50歳前後の身体状態といえば卵巣機能の低下だけでなく、高血圧や糖尿病、関節痛などさまざまな病気が発現する時期です。
また生活環境では、働いている人は責任ある立場に就いていることが多い年代です。
近年は高齢出産をした人も多くなっており、子どもの年齢はちょうど中学受験に重なります。すでに介護が始まっている人もいるでしょう。
「既婚・未婚、働いている・いない、子供の有無」で一概にいえませんが、アラフィ世代に共通するのは、時間的に忙しく、悩みの質が複雑なこと。
そのため身体と精神に大きな負担がかかりやすい時期です。
そのストレスが大きいと精神症状が出やすく、症状を複雑にする傾向があります。
症状をラクにする治療法は?
エストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、向精神薬(抗不安薬、抗うつ剤、睡眠薬)で症状を軽減していきます。(HRTと向精神薬の副作用はコラム参照)
HRTは飲み薬や貼り薬、スプレーでエストロゲンと黄体ホルモンを投与し、体のバイオリズムが順調だった時期のホルモンの状態に近づけます。
ほてりや発汗など血管運動の症状によく効きます。
高血圧などの血管疾患があったり、ほてりや発汗以外の症状が辛い時には、漢方薬を処方します。
めまいや冷え症、情緒不安、抑うつ気分、倦怠感、肩こり、頭痛など、自律神経失調症状から精神症状まで広く効果があります。
精神症状や不眠がとくに辛い時は、向精神薬がよく効きます。薬に抵抗を持つ人には、2~3週間だけ使って、症状が楽になったところで他の治療に切り替えます。
不眠症状は、寝入りにくさ・中途覚醒・早朝覚醒によって薬を使いわけます。
●コラム
HRTの副作用は不正出血、おなかの張り、乳房緊満感、嘔気、頭痛などです。
また子宮体癌のリスクが上昇するため、子宮がある人にはエストロゲン単独ではなく、黄体ホルモンも一緒に投与します。向精神薬の副作用は日中の眠気、吐き気などです。
治療で大切なことは?
治療を始める際に重要なポイントは、「更年期障害の治療は長びく」という誤解をなくすることです。
複雑な症状でも、適切な治療をすれば5年以内には治まります。
それには、問診が重要になってきます。
患者さんの訴える症状がエストロゲン減少なのか、他の病気かを慎重に見極めます。初診だけではすべてはわかりませんが、何度か問診を重ねていくうちに、症状を複雑にしている「本当の原因」が特定できます。
いま、体に不調を感じながらも、忙しくて我慢する日が続いていたら、一度婦人科で問診を受けてみませんか。
我慢は身体や精神に負担をかけ、より一層症状を重くする可能性があります。
症状が重く複雑になる前に適切な治療をして、更年期をアクティブに過ごしてほしいと思います。
(まとめ)
精神症状がとくに辛い時は、「1日のうちのいつ、誰に(何に)対して、どんな状態になるのか」を、日記のように1週間分を記録してみてください。症状が固定され、対処法がみつかります。受診時にその記録を持参すれば、治療にも役立ちます。