第1回 ホルモンとは何か?

第1回 ホルモンとは何か?

「ホルモン」という言葉は日頃よく耳にしますが、みなさんはどのようなイメージをおもちでしょうか? ホルモンとは、体内の特定の器官で合成・分泌される生理活性物質のことをいいます。

ホルモンはからだを調整する化学物質

「ホルモン」という言葉は日頃よく耳にしますが、みなさんはどのようなイメージをおもちでしょうか? ホルモンとは、体内の特定の器官で合成・分泌される生理活性物質のことをいいます。生理活性物質とは、生体内のさまざまな活動を調整したり、活性化したりする化学物質の総称です。

「女性ホルモン」は卵巣から、「男性ホルモン」は精巣から分泌される生理活性物質です。これらを合わせて「性腺ホルモン」と呼ぶこともあります。

各器官で分泌されるさまざまなホルモン

ホルモンは卵巣、精巣といった生殖腺のみが分泌しているわけではありません。生体内でホルモンを分泌する器官は数多くあります。

例えば、甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモン」や、膵臓から分泌される「インシュリン」などは有名です。「甲状腺ホルモン」は甲状腺から分 泌され、全身の細胞に作用して代謝を活発にしているホルモンです。 「インシュリン」は膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌され、血糖値を下げる働きをしているホルモンです。

腎臓の上部にある副腎皮質という場所から分泌される「糖質コルチコイド」「鉱質コルチコイド」「アンドロゲン」なども、生体の維持に重要な役割を果たしているホルモンです。これらの個々の名前は耳にしたことがなくても、「ステロイドホルモン」といわれればイメージが湧く人も多いのではないでしょうか。

医療の現場で炎症性疾患の治療に用いられるステロイドは、「糖質コルチコイド」の類似薬です。「アンドロゲン」は、精巣でも分泌されている筋肉増強作用をもつステロイドホルモンです。スポーツ競技でドーピングとして投与が問題視されるのは、「アンドロゲン」と同等か、より強力な作用をもつように人工的に合成されたアナボリック(蛋白同化)ステロイドです。

●標的器官(target organ)
このように人体のさまざまな場所で合成・分泌されているホルモンは、血液を介して体内を循環するため、全身に行き渡りますが、それぞれのホルモンが作用を発揮する器官はホルモンごとに決まっており、これをホルモンの標的器官(target organ)と呼びます。

ホルモンの乱れは体調不良の原因のひとつ

人間の体は順応性に富んでいて、健康を維持するために体内環境を一定に保とうとする働きがあり、これをホメオスタシス(恒常性の維持)といいます。さまざまなホルモンがそれぞれの標的器官で発揮している作用は、生体の恒常性の維持と密接に関わっています。このため、特定の器官におけるホルモンの働きが崩れると、生体の恒常性が乱れて体調不良がおこるのです。

女性の健康維持に関わる「女性ホルモン」

次回は、多岐にわたるホルモンの働きのなかで、「女性ホルモン」が女性の健康の維持にどのように関わっているのかを解説しましょう。

宮沢あゆみ(医師・ジャーナリスト)東京都出身。早稲田大学第一文学部卒TBSに入社し、報道局政治経済部初の女性記者として首相官邸、野党、国会、各省庁を担当。外信部へ移り国際情勢担当。バルセロナオリンピック特派員。この間、報道情報番組のディレクター、プロデューサーを兼務。その後、東海大医学部に学士編入学。New York Medical College、Mount Sinai Medical Center、Beth Israel Medical Center へ留学。三井記念病院、都立墨東病院勤務などを経て、「あゆみクリニック」を開業。講道館柔道2段。