子宮頸(しきゅうけい)がんは、予防できる唯一のがんです。しかし、妊娠出産を考える20代から30代女性に最も多く発症しています。正しい知識を身につけて、自分の体を守りましょう。
子宮頸がんは、誰でもかかる可能性のあるありふれた病気
子宮頸がんとは、子宮の入口部分(頸部、けいぶ)に発生するがんのことです。ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染によって引き起こされます。しかも主に性交渉によって感染することもわかっています。
それゆえ、子宮頸がんになったことをご主人に話したら、「僕はそんな遊びはしていない、君が浮気でもしてきたんじゃないか」と言われてもめたという患者さんもいました。ただ、子宮頸がんの原因であるHPVは、性行為だけでなく、皮膚の接触によるものも含めて、女性の50歳までにほとんどの人(8割から9割)が一度は感染するありふれたウイルスです。普通に生活しているだけで感染するものなのです。
一般的には、感染しても1~2年で消えてしまいますが、なかには長きにわたって子宮頸部に居すわるものもあり、それががんを発生させてしまいます。
つまり、HPVは感染してもすぐにがんができるわけではありません。また、過去の性体験が他の人より多いからといって、感染率、子宮頸がんの発症率が高いわけではありません。
子宮頸がんは予防できる唯一のがん。ワクチン接種と定期検診を!
女性のがんで最も多いのは乳がんですが、その次が子宮頸がんです。特に20代から30代においてのナンバー1は子宮頸がんで、ちょうど赤ちゃんを産む年代と重なります。万が一、子宮頸がんを発症して、ある程度進行してしまうと子宮全摘となり、妊娠の機会まで奪われてしまうことになります。だからこそ、しっかり予防し、検診を定期的に受けて早期発見することが大事なのです。
家族や親戚にがんになった人がいると、がんにかかりやすいというイメージがありますが、子宮頸がんには、遺伝は一切関係ありません。原因はあくまでHPVというウイルスです。何が原因かが明確なので比較的予防しやすいわけです。
予防方法のひとつがHPVワクチン接種。WHOも推奨しています。できれば、初めての性体験前に受けておくのがベターですが、基本的にはいつのタイミングでも良いので、気になる方はぜひ受けておいてください。「年齢が上になればなるほど、ワクチンが効かなくなる」と思っている人もいますが、それは間違いです。年齢は関係ありません。
また、1~2年に1回、子宮頸がん検診をぜひ受けてください。検診方法はいたって簡単。細胞診といって、子宮頸部の粘膜をヘラで軽くこすって細胞を調べるだけです。細胞診で異常があれば、精密検査を受ける形となります。最近では、検診の仕方もいろいろ研究されており、将来的には費用対効果も考えて、1度検診を受けてHPVが見つからなければ、5年は受けなくていいなど、検診のやり方も進化していくと思われます。ただ、今のところは細胞診が主流で、これを1~2年に1回受けていただくペースがよいと思います。