生理トラブル(医学用語:月経トラブル)を緩和するといわれるピル。一方で、副作用が気になる人もいるようです。しのざきクリニックの篠崎百合子院長にお話を伺いました。
副作用ではなく、マイナートラブルが約3割に起こります
経口避妊薬としてはもちろん、生理(月経)トラブル全般の治療、および子宮内膜症の治療に使われているのがピルです。
ピルを飲み始めてから、むくんだり、頭痛がしたり、吐き気がしたりするということは、よくあることです。
まずお伝えしたいのは、これらの症状は不快な症状であって、問題になるような副作用ではないということ、ピルの重大な副作用といえるのは血栓症です。
マイナートラブルは、飲み始めに起こることがほとんどで、全体の3割くらいの人にみられます。
このマイナートラブルが出るのは、ピルの主成分がプロゲステロン(黄体ホルモン)だからです。プロゲステロン(黄体ホルモン)は、生理周期のなかでも排卵後に出る女性ホルモンのことで、妊娠を維持する働きがあり、吐き気やむくみ、頭痛などの症状を引き起こします。
ただ、ホルモンに対する感受性は個人差が大きいため、まったくトラブルがない人もいます。また、マイナートラブルが出た人でも、2〜3カ月の間に体が慣れて、症状がなくなることがほとんどです。
ピルで太ることはありません。むくむことはあります
ピルが直接の原因で太ることはありませんが、プロゲステロン(黄体ホルモン)の作用でむくみやすくなる人はいます。
むくんでしまうと、通常より0.5キロほど体重が増加することはよくあるので、それが太ったという認識になっているのだと思います。
また、ピルを飲み始めてから体重増加があった場合、生理痛や月経前症候群(PMS)のためにその期間中は食欲が減退しがちだった人が、一気に症状から解放されて、食欲が増進し、太ることも考えられます。
摂取カロリーが消費カロリーを上回らないように、自分で体重管理を行うことが大切です。
また、どうしてもむくみが気になるようであれば、利尿作用のある漢方薬で症状が緩和することもあるので、かかりつけ医に相談してみてください。
また、ふだんの食事で塩分を控えるのもむくみ改善につながります。
トラブルが出たら、ピルの種類を替えることも
現在処方されている低用量ピルのプロゲステロン(黄体ホルモン)の種類は、4種類あります。
ちなみに、エストロゲン(卵胞ホルモン)はすべて同じものを使用しています。
マイナートラブルがなかなか改善しなかったり、症状が重いようであれば、かかりつけ医に相談してピルの種類を替えてもらうこともできます。
また、その他のマイナートラブルとして、飲み始めに不正出血が3割くらいの人に起こります。
ピルを最初に処方されるときに医師から不正出血の可能性を伝えられているとは思いますが、実際に目にするとインパクトがあるので、驚いてピルを飲むのをやめてしまう人もいます。
ただ、不正出血は続いても数日の場合がほとんどで、2~3シートを使用しているうちに、その症状は無くなります。自己判断でやめてしまわず、次の受診まできっちりと飲み続けることが大切です。
ピルの副作用である血栓症は低用量ピルではまれ
ピルの重大な副作用として知られているのは血栓症です。
血の塊(血栓)で血管が詰まってしまう病気のことで、突然、尋常ではない痛みに襲われます。
ふくらはぎに起こることが多く、重大な場合には肺や脳で血栓が発生することもあります。
この場合は、激しい胸痛、頭痛が起こります。
ただ、低用量ピルでは、血栓症の原因となるエストロゲン(卵胞ホルモン)の量を必要最小限におさえてあるので、症状が出ることはごくごくまれです。
リスクは低いといえますが、このような副作用の可能性があることを知っておくことは大切です。
万が一、ピルを服用中に突然の激痛があった場合には、すぐにピルを中断して受診すべきだということは頭に入れておきましょう。
篠崎先生よりまとめ
婦人科でピルを処方してもらえば、マイナートラブルが出たときも、薬の種類を変えるなど臨機応変に対処ができます。
インターネットなどで安易に購入せず、医師の指示通りに使用して、上手にピルと付き合ってほしいと思います。