近ごろ健康情報誌やwebサイトでは、ホルモンに関するいろいろな説が飛び交っています。そこで今回は、女性に関係する大切なホルモンについて、いけした女性クリニック銀座の池下育子先生にお話を伺いました。
女性に大切な4つのホルモン
私たちの体の各部分ではさまざまなホルモンが分泌され、必要な場所で生命維持のために働いています。
なかでも女性に大切なホルモンはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)です。このふたつは脳で分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の刺激によって卵巣で分泌され、月経や妊娠に深く関係します。
卵胞の発育、排卵、子宮の内膜を厚くするなど、妊娠の準備をするという役割を持っているのです。
これらの4つのホルモンは互いに刺激し合い、分泌の量を調節しながら上手にバランスをとって、一定のリズムで働いています。妊娠に至れば、ホルモンはさらにそれに必要な働きをはじめます。妊娠に至らなければ厚くなった内膜をはがして月経を起こし、次の準備に向けます。
ホルモンのバランスは、体に悪い生活習慣を送っていると崩れてしまいます。無理なダイエット、栄養のかたよった食事、運動のし過ぎ、強いストレスなどが主な要因です。そしてバランスを崩すと月経不順などをひき起こし、やがて病気や不妊へとつながります。
生涯の健康のために、ホルモンのバランスを維持する正しい生活習慣は大切です。とくに20~30代の生殖適齢期には、生活に気を配ることが必要でしょう。
ホルモンバランスを崩さない生活は?
そして「何をどれだけ食べるか」よりも、「食べ方」を重視しましょう。心がけて欲しいのは「おいしく、楽しく、幸せを感じる食事」です。
健康や妊娠のために、好物をストイックに我慢して食べないのは、必ずしも健康につながりません。ケーキが好きな人は、たまには自分へのごほうびとして許してあげましょう。お酒も適度に飲む日があっていいと思います。
また、健康にいいからといって、あまり好きではない食べ物やサプリメントを消極的な気持ちでとっても健康につながりません。
やはり飲食は、おいしく楽しく、幸せを感じることが大切です。幸せを感じると脳はセロトニンというホルモン(別名・幸せホルモン)を分泌するため、心身がとても元気になり、不安定だった気持ちも安定します。
もちろん食べ物以外でもOKです。友人とおしゃべりをしたり、自然に触れるなど……。幸せホルモンを出す方法は、みなさん違っていいのです。
そして、ストレスや不調に見舞われた時には、自分なりの方法で幸せホルモンを出して、心身を元気にしましょう。幸せホルモンは熟睡にもつながるため、いつもより早めに寝てしまえば、翌朝はさらに元気をとり戻せます。
「かきくけこ」の生活を!
もうひとつ、日々の生活で積極的にとりいれて欲しいことがあります。それは「かきくけこ」の生活習慣です。
か=感動する、き=興味をもつ、く=工夫する、け=健康に生きる、こ=好奇心を持つ、です。
たとえば、ふだん料理をまったくしない方は、休日に料理をしてみるといいでしょう。献立を考え、スーパーへ食材を買いに行き、キッチンに立って料理をする。できあがった料理を、素敵なお皿に盛る。それも、おいしく見えるように工夫するのです。そして、音楽を聴きながら、作った料理をゆっくりと味わって食べるのです。
また、お花一輪を買ってきて、グラスに生けて色や香りを楽しんでみるのも、手軽にできる「かきくけこ」です。
五感を使う「かきくけこ」の生活は、とても豊かに感じられます。ホルモンのバランスや分泌量に直接作用しなくても、五感で受け取る喜びが心身のいい栄養になり、体の調子を良くしてくれます。ホルモンのバランスにもきっといい影響があるはずです。
池下先生より まとめ
生活の中の小さなことに感動したり、幸せを感じることによって、自分の体にも気を配れると思います。五感を磨いて、自分の体の卵巣や子宮で起きているホルモンの感動的な働きにも関心を寄せてください。