ピルで月経の悩みを解決 避妊効果だけじゃないピルのメリット

ピルは、避妊薬として知られていますが、実は月経痛や月経周期についての悩みを解消するのにとても有効な薬です。今回は船津クリニック院長の船津雅幸先生にピルについてのお話を伺いました。ピルのメリットを知って上手に活用しましょう。

低用量ピルで月経痛や月経周期の悩みが改善できる

ピルは1960年代にアメリカで誕生して以来、世界中で多くの女性が服用しています。ただ日本での普及率は先進国においては極めて低く、避妊薬やホルモン剤に対する否定的なイメージが未だ残っているように感じられます。

しかし、最近は副作用が少なく安全性の高い低用量ピルが次々と開発され、月経周期を整える点からも、避妊薬(OC)としてだけでなく月経痛の治療薬(LEP)として広く認められるようになってきました。

ピルの主成分はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンで、ピルを服用することで疑似的に妊娠した状態を身体の中につくり、排卵を抑える効果をもっています。その作用によって避妊効果をあらわします。

またOCを服用することにより、月経周期は整い出血量も減少し、月経痛やPMS(月経前症候群)症状の緩和が可能となります。

※OC=低用量経口避妊薬

※LEP=低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬

望まない妊娠を避け、「産みたい時」に産める

ピルには妊娠・出産の時期をコントロールできるメリットがあり、不妊の改善も期待できます。30代での結婚・出産がスタンダードになっている昨今、仕事のキャリアなどを考慮しながら、女性が妊娠・出産の主導権を持って「産みたい時に産める」というのはとても重要なことです。

また、月経痛を長く放置しているうちに子宮内膜症が進行し、不妊の原因になることも珍しくないので、早めにピルで月経のトラブルを改善しておくことは、不妊の予防にもつながります。

さらに月経周期が不定で、日にちがずれやすいという人にとっては、日常生活にも大きなプラス効果を及ぼします。

旅行やイベントに生理が重ならないかと、毎月心配する煩わしさがなくなって嬉しいとおっしゃる方もたくさんいます。

副作用は一定期間で治まり、ピルのメリットが実感できるようになる

ただし、薬である以上、副作用はあります。代表的なものは吐き気、浮腫(むくみ)、微少出血などの症状です。吐き気は数日で治まることが多く、漢方薬や吐き気止めの併用などをすすめています。また浮腫による一時的な体重増加は、最初の1カ月で2~3キロ程度で、これが「ピルは太る」といううわさの原因です。

副作用の多くは服用から3カ月程度で治まり、その頃からピルのメリットが実感できるようになります。

例えば、新入生が新しい制服を着ると不自然ですが、しばらく着ているうちに体になじんできます。ピルの服用開始は、いわば新しいホルモンの制服を着ることだと考えてください。

また、血栓症のリスクも注意すべき事項です。10~30代の健康な方ならば発症はまれですが、喫煙者、40歳以上の方、肥満や脂質異常の方はハイリスクとなります。

健康上のリスクと聞くと恐いと感じる人もいるかもしれませんが、一方でピルを服用することにより、子宮体がん、卵巣がん、大腸がんのリスクを減少するというメリットもあります。

船津先生より まとめ

低用量ピルを正しく服用すれば、月経痛や月経周期の改善、妊娠・出産時期のコントロールなど、多くのメリットが得られます。またピルは産婦人科での処方が必要ですから、ピルの服用をきっかけに、定期的に産婦人科を受診する習慣が身につきます。
デメリットと言われている子宮頸がんや乳がんの増加に関しても、OC/LEP服用者には定期的な子宮がん検診・乳がん検診を義務づけることにより、早期発見につなげることができ、メリットに変えることができます。若い女性にとって妊娠・出産以外での産婦人科受診はハードルが高いことがほとんどなので、ピルをきっかけにかかりつけの産婦人科を見つけておくと、今後の健康管理に役立つでしょう。
船津 雅幸 先生(船津クリニック 院長)昭和大学医学部卒業後、昭和大学病院、亀田総合病院、共立蒲原総合病院など7つの地域の中核病院と2つの医院勤務を経て平成18年12月にクリニック開業。患者さんが言いづらいこと、本当に悩んでいることを理解できる存在になるべく、患者さんとの丁寧な対話を心がけ、いい意味で『おせっかいな町医者』を目指している。