骨密度が低いと骨折のリスクが高いと聞きます。骨密度を上げて、骨を強くするにはどうしたらいいのでしょう。阪部循環器内科・内科 婦人科クリニックの阪部江里子先生にお話を伺いました。
骨粗しょう症は要介護・寝たきりの原因となりえる。 予防は子供時代から始まる
骨の強さ、つまり骨強度は、骨密度70%と骨質30%で規定されています。わかりやすい例として、骨強度をビルに置き換えると、骨密度はコンクリート(硬さ)に、骨質は鉄筋(しなやかさ)に相当します。
骨粗しょう症とは、この骨強度が低下し、骨折リスクが増大した状態を指します。特に、女性は骨粗しょう症の罹患率が高いのです。骨粗しょう症による骨折は要介護状態や寝たきりの原因となり、大きな社会問題になっています。
女性の骨密度と骨質は加齢と閉経で自然に低下しますが、それ以外にダイエットによる過剰な痩せ、栄養素の不足、月経不順や無月経、生活習慣病(糖尿病、関節リウマチ、腎疾患、甲状腺疾患など)、喫煙などで更に加速されます。 また、実は骨密度の増加は思春期までで、18歳ごろまでには骨密度のピークを迎え、増加は止まってしまいます。その後は、月経のある間には骨密度は維持され、更年期以降は加齢とともに減少します。つまり、18歳までにできるだけ骨密度を上げておくこと、それ以降は骨密度の低下スピードをできるだけ遅くすることが、骨折を予防し健康寿命を延ばすことにつながると考えられます。
大人になってからできる対策は、適切な体重と順調な月経サイクルの維持、栄養バランスを考えた食生活、適度な運動、そして生活習慣病の予防をしっかりすることです。
思春期までは骨密度をできるだけ上げる生活をしましょう
前段でもご紹介したとおり、女性の骨密度には食生活、運動、体重、月経が大きく影響します。特に思春期でのダイエットによる栄養素の不足や低体重、そして それによって引き起こされる月経異常(月経不順や無月経)は生涯にわたって骨密度に大きく影響します。思春期に骨密度が増えないと、結果的にベースとなる骨密度は非常に低いものになります。その結果として、骨粗しょう症になる年齢が早まってしまいます。
思春期のダイエットは大人のダイエットよりもずっと大きく深刻な影響が出るのです。ですから、思春期以前の方は、より一層 食事に気をつけ、十分な栄養の摂取と、適切な体重の獲得(標準体重を参考にしましょう)、適度な運動を行い、月経異常が起きた場合には早めに産婦人科で相談するようにしましょう。
日々の食事でカルシウムを補給し、定期的に骨密度の検査を!
骨密度を増やすにはカルシウムの摂取がすすめられます。カルシウムの過剰摂取は心血管系疾患のリスクを高めますが、食事で摂取する分にはリスクの上昇はありません。当院ではできるだけ食事で摂取することをおすすめし、カルシウム自己チェック表に基づいて指導しています。また骨折や転倒を予防するビタミンDは魚類、キノコ類に多く含まれており、適度に日光を浴びることも必要です。日本人はカルシウム、ビタミンDのいずれも不足しがちと言われています。意識的に摂取を心がけましょう。
運動では、有酸素荷重運動(ウォーキングなど)が骨密度を高めます。特に思春期では、縄跳び、バレーボール、バスケットボール、など荷重がかかる運動がすすめられます。また運動は筋力のバランス機能を高め、転倒防止による骨折予防効果もあります。
骨密度検診にはさまざまな方法があります。「骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン」(※)では、その正確性からDEXA法をゴールデンスタンダードとしています。当院ではこのDEXA法を実施しています。一度検診を受けてみてはいかがでしょうか。
※骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団)
阪部先生より まとめ
骨密度は18歳ごろにピークを迎え、その後は月経のある間は維持され、更年期以降は加齢とともに減少します。18歳までに骨密度をできるだけ上げておくこと、それ以降は生活習慣病、食生活、運動、体重、月経などに注意し骨密度の低下をできるだけ遅くすることが大切です。骨粗しょう症は骨折するまで自覚症状がありません。骨密度検診を受け、骨折する前に対応することが大切です。