晩婚化、少子化にともなう課題
この半世紀ほどで女性のライフサイクルは大きく変化しました。女性の社会進出が進んだことで、晩婚化が加速し、それにともない第一子の分娩年齢が上がり、1人の女性が産む子供の数が減少したのです。
その一方で、初経年齢は早まり、閉経年齢は遅くなりました。つまり、現代女性はひと昔前に比べて、生涯の間に排卵や月経を経験する回数が著しく増え、女性ホルモンの変化にさらされ続ける期間が非常に長くなったのです。
このため、女性ホルモンとの関係で発症する子宮内膜症、子宮筋腫、子宮体がん、乳がんなどの疾患が増加し、ホルモンバランスの乱れが原因でおきる月経不順、月経前症候群(PMS)、更年期障害などに悩む女性が増えてきています。
今後も晩婚化、少子化の流れが変わることはないでしょう。つまり、現代女性とって、生涯を通じて女性ホルモンの変動といかに付き合うかが大きな課題となってきたのです。
生涯を通じ変動する女性ホルモン
女性のライフステージは、ホルモン分泌によって明瞭な節目があり、思春期、成熟期、更年期、老年期に分けることができます。
思春期は、卵巣から女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が始まり、初経を迎える時期です。初経後、数年間はホルモン分泌が安定しないために、月経も不順になりがちで、心身ともに不安定な時期となります。
成熟期は、エストロゲンの分泌が順調となり、性機能が成熟して、妊娠、分娩が可能となる時期です。しかし、一方では、子宮内膜症、子宮筋腫といったホルモンとの関わりで発症する婦人科系疾患にかかりやすい時期なので、定期的に婦人科検診を受けるようにしましょう。
老年期は、エストロゲンの分泌もなくなり、からだのあちらこちらに加齢にともなう不具合が発生する時期です。
エストロゲンは女性の心身を左右する諸刃の剣
このように、女性の心とからだは、一生を通じて女性ホルモンの影響を強く受けています。エストロゲンは女性の健康の守り神であると同時に、その分泌が乱れれば心身に変調をきたす「諸刃の剣」なのです。