オリモノが臭い、かゆみもある。 これって病気? 自分でできる予防法は?

人には相談しにくい、オリモノのにおいやかゆみが生じると、不快感とともに「もしかしたら病気かも」という不安も感じます。かとうのりこレディースクリニック院長の加藤律子先生に、オリモノの異常の原因や日常での予防法などを伺いました

オリモノは、女性の体を守る大切なもの

オリモノとは、腟や子宮の入口あたりから出る分泌物のこと。腟内部の潤いを保って粘膜を守ったり、雑菌の侵入を防ぐ役割などがあります。

 

つまり、オリモノはあるのが当然で、女性の体を守る大切なものでもあります。

 

正常なオリモノというのは、女性ホルモンのエストロゲンと密接な関係があり、生理の周期によって色や粘度などの状態は変わります。例えば、排卵期には水っぽい透明なオリモノがたくさん出てきますし、排卵後は白色な状態に変化します。

 

こうしたオリモノの変化はホルモンが正常に作用している証拠であり、生理周期の目安にもなります。

 

また、オリモノの中には、腟内を強い酸性に保って大腸菌やカンジダ菌などの細菌増殖を防ぐ善玉菌・デーデルライン桿菌(かんきん)があります。デーデルライン桿菌とは、腟内に常在する乳酸菌の一種で、このデーデルライン桿菌の働きが低下したり、少なくなったりすると腟内の抵抗力が落ちて、細菌感染やカンジダ腟炎などのトラブルを起こしやすくなります。

オリモノがにおうとき、病気の可能性はある?

 

正常なオリモノにもある程度のにおいはあります。これは、デーデルライン桿菌による酸味臭で、もともとのオリモノは甘酸っぱいようなにおいがします。

オリモノのにおいが気になるという相談はよくありますが、実際、においで問題になるのは明らかに悪臭レベルのにおいです。 たとえば、ムッとするような腐敗臭がする時には、タンポンなどが出し忘れによって腟の中で腐り、雑菌が繁殖している可能性があります。

また、悪臭が外陰部のかゆみや痛みをともなう場合には、性感染症などの可能性もあります。

 

オリモノから判断できる具体的な病気とは?

 

オリモノの異常でわかる感染症といえば、代表的なのはカンジダ腟炎です。 カンジダ腟炎の時のオリモノは特徴的で、酒粕状ともヨーグルト状ともいわれる豆腐のカスのような白いポロポロした形状をしています。外陰部に強いかゆみもともないますが、においはあまり強くありません。カンジダ腟炎の原因になるカンジダ菌はもともと腟の中に存在するもので、健康な状態であれば問題ないのですが、デーデルライン桿菌の働きの低下などが起きると増殖し、炎症を引き起こします。

また、膿性黄白色や黄色、緑色といった、通常とは異なる色合いのオリモノは、トリコモナス腟炎、細菌腟炎、淋菌感染症、子宮内膜炎、卵管炎、クラミジア感染症などが疑われます。 なかでも、淋菌感染症やクラミジア感染症の場合、女性は自覚症状があまりなく、知らない間に感染して気づかないまま放置してしまうことが多々あります。ですから、オリモノの状態はひとつの目安になります。

また、茶褐色のオリモノが出る場合には、不正出血が起きている場合が多く、出血の原因として一番心配なのが子宮頸がんです。もちろん、腟炎で粘膜がただれて出血することもありますし、ホルモンバランスの乱れによって月経以外の出血が起きる場合もあるので、必ずしも深刻な病気とは限りませんが、できるだけ早めに婦人科を受診することをおすすめします。

病院に行く前にできる予防法って?

 

通常とは違うにおいや色、状態などのオリモノ異変は、婦人科トラブルのバロメーターとなり得ます。オリモノの異常に気がつきやすくなるためにも、普段の自分の正常なオリモノの状態を把握することは大切です。

また、正常なオリモノの状態を保つためには、日常的に腟周辺の細菌の繁殖や感染を防ぐことも重要です。まずは、できるだけ通気性のいい下着を付けたり、オリモノシートを使用されているのであればこまめに取り替えて、菌が繁殖しやすい“蒸れ”を防ぎましょう。

 

腟内部などデリケートゾーンの洗いすぎは、腟の自浄作用が損なわれ、余計に細菌が繁殖しやすくなります。

さらに、全身の免疫能力が下がった時や、ストレスなどでホルモンバランスが乱れた状態も、デーデルライン桿菌の働きを悪くします。規則正しい食事やストレスの軽減などを心がけて日常的な生活を整えることも、オリモノを正常に保ち、女性の体を守るためには欠かせないことなのです。

 

加藤先生より まとめ

腟内には細菌感染などを防ぐ善玉菌・デーデルライン桿菌が常在しています。腟周辺の蒸れで細菌の繁殖力が強まったり、全身の免疫力の低下やストレスなどでデーデルライン桿菌の働きが悪くなると、婦人科系のトラブルが起こりやすくなります。オリモノのにおいや色、形状などの異常は、そういったトラブルを知るバロメーター。規則正しい生活を保ち、腟内部の洗いすぎ、蒸れなどを防ぐことで、デーデルライン桿菌の働きを正常に保ちましょう。
加藤 律子 先生(かとうのりこレディースクリニック 院長)名古屋市立大学医学部卒業後、同大学の産科婦人科、一宮市立市民病院産婦人科、名古屋市立緑市民病院産婦人科部長を経て、2005年、名古屋ターミナルビルに「かとうのりこレディースクリニック」を開業。2010年に現在地であるメイフィス名駅ビル3階へ移転。日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医。